中小M&Aガイドラインとは?売手の経営者が知っておきたいポイントと仲介会社選びへの生かし方

中小M&Aガイドラインとは?売手の経営者が知っておきたいポイントと仲介会社選びへの生かし方

会社の売却や事業承継を考え始めると、「仲介会社に任せて大丈夫だろうか」「手数料は適正なのだろうか」と不安に感じる経営者様も多いのではないでしょうか。

中小企業のM&Aは、多くの経営者にとって一生に一度の経験です。そのため、仲介会社などの専門家との間に、知識や経験の差が生まれやすいという特徴があります。

こうした中で、中小企業の経営者が安心してM&Aを進められるよう、国(中小企業庁)が定めているのが「中小M&Aガイドライン」です。

ここでは、中小M&Aガイドラインの概要と、売手の経営者向けに示されている内容、仲介会社などの支援機関に求められていること、M&A支援機関登録制度との関係、仲介会社選びへの生かし方について解説します。

中小M&Aガイドラインとは?

ガイドラインの内容を確認する担当者
 

中小M&Aガイドラインとは、どのようなものなのですか?

 
 

中小企業のM&Aを適切に進めるための指針として、中小企業庁が定めたものです。M&Aを考える経営者向けの手引きと、仲介会社などの支援機関が守るべき基本的な事項がまとめられています。

 
 

経営者と仲介会社の両方に向けた、国のルールブックのようなものなんですね!

 

中小M&Aガイドラインは、2020年に中小企業庁が策定したもので、それまでの「事業引継ぎガイドライン」を全面的に改訂したものです。その後も、M&Aをめぐる課題に合わせて改訂が重ねられています。[注1]

ガイドラインは法律ではないため、守らなかったからといって直ちに罰則があるわけではありません。しかし、国が示した中小M&Aの基本的な考え方として、仲介会社などの支援機関の行動の基準になっています。

策定された背景

中小企業の経営者の高齢化が進む中で、後継者がいないために、業績が黒字であっても廃業を選ぶ会社が増えています。こうした会社の事業や雇用を残す手段として、M&Aへの期待が高まっています。

一方で、中小企業のM&Aでは、経営者がM&Aに慣れていないことが多く、手数料や契約の内容について十分な説明を受けないまま進めてしまうといった問題も指摘されてきました。

こうした課題に対応し、経営者が安心してM&Aを選択できる環境を整えることが、ガイドラインの目的です。

売手の経営者向けに示されている内容

仲介会社との打ち合わせに臨む様子
 

ガイドラインには、売手の経営者向けにどのようなことが書かれているのですか?

 
 

M&Aの基本的な流れや、各段階で気をつけること、支援機関の選び方、手数料の考え方などが分かりやすく説明されています。初めてM&Aを考える経営者が、最初に読む手引きとして役立ちます。

 
 

M&Aの全体像をつかむのに、ちょうどよさそうですね!

 

ガイドラインでは、売手の経営者向けに、主に次のような内容が示されています。

主な内容概要
M&Aの基本的な流れ相談から買手探し、交渉、契約、引き継ぎまでの進め方
早めの準備の大切さ経営の改善(磨き上げ)や、早い段階からの検討
支援機関の選び方仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の違い、選ぶときの観点
手数料の考え方手数料の種類や計算方法、事前に確認したいこと
契約で注意したい点専任条項やテール条項など、契約の条件
不適切な買手への注意買手の選び方や、確認しておきたいこと

仲介会社とFAの違い

ガイドラインでは、M&Aを支援する専門家として、売手と買手の双方の間に立つ「仲介者」と、どちらか一方の側に立つ「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」の違いが説明されています。

仲介者は、売手と買手の双方から手数料を受け取ることが多いため、利益相反のおそれがあることを、依頼者に説明することが求められています。

支援機関に求められていること

 

仲介会社などの支援機関には、どのようなことが求められているのですか?

 
 

手数料や業務の内容を事前に分かりやすく説明すること、利益相反に配慮すること、依頼者に不利な契約条件を押しつけないことなどが求められています。

 
 

経営者が知らないうちに不利な条件になることを、防ぐためのルールなんですね!

 

ガイドラインでは、仲介会社などの支援機関に対して、主に次のような行動が求められています。

手数料や業務内容の説明

仲介契約を結ぶ前に、手数料の金額や計算方法、どのような業務を提供するのかを、依頼者に分かりやすく説明することが求められています。

専任条項・テール条項への配慮

他の仲介会社に重ねて依頼できない「専任条項」や、契約終了後も一定期間手数料が発生する「テール条項」については、期間や対象を必要な範囲に限ることが求められています。

セカンド・オピニオンへの配慮

専任契約を結んでいる場合でも、依頼者が他の専門家に意見を求める(セカンド・オピニオン)ことを、不当に制限しないことが求められています。

不適切な買手を排除するための対応

M&Aの成約後に、買手が約束を守らない、会社の資産を不当に持ち出すといったトラブルを防ぐため、支援機関には、買手について必要な確認を行うことなども求められています。

M&A支援機関登録制度との関係

 

「M&A支援機関登録制度」という言葉も聞きますが、ガイドラインとどう関係するのですか?

 
 

中小企業庁が、中小M&Aガイドラインを守ることを宣言した仲介会社やFAを登録する制度です。登録している支援機関は、中小企業庁のデータベースで確認することができます。

 
 

ガイドラインを守る会社かどうかを、確かめる手がかりになるんですね!

 

M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が運営している制度で、ガイドラインを守ることを宣言した支援機関が登録されています。[注2]

登録した支援機関は、ガイドラインを守ることが求められるほか、情報提供の窓口などを通じて、不適切な行為について情報が寄せられる仕組みもあります。

また、事業承継に関する国の補助金では、登録された支援機関に支払う費用が対象になる場合があります。制度の内容は変わることがあるため、利用を考える場合は最新の情報を確認しましょう。

ガイドラインを仲介会社選びに生かす方法

 

実際に仲介会社を選ぶとき、ガイドラインをどう生かせばいいですか?

 
 

登録制度への登録の有無を確認すること、手数料や契約条件について十分な説明があるかを確かめること、複数の仲介会社を比べることが大切です。

 
 

ガイドラインを知っておくだけで、確認すべきことが分かりますね!

 

ガイドラインの内容をふまえて、仲介会社と話すときには、次のような点を確認しましょう。

確認すること見るポイント
登録制度への登録中小企業庁のデータベースに登録されているか
手数料の説明着手金・中間金・成功報酬の金額や計算方法を、事前に具体的に説明してくれるか
業務の内容どのような支援を、どこまで行ってくれるのか
契約の条件専任条項やテール条項の期間・範囲が、必要以上に長く・広くなっていないか
利益相反への配慮仲介の場合、双方から手数料を受け取ることについて説明があるか
買手の確認買手について、どのような確認を行ってくれるのか

登録制度への登録があるかどうかだけで、仲介会社の良し悪しが決まるわけではありません。実際に話を聞き、説明の分かりやすさや対応の誠実さもあわせて判断することが大切です。

売手が自分の身を守るために

 

ガイドラインがあっても、売手として気をつけることはありますか?

 
 

ガイドラインは指針であり、すべてのトラブルを防げるわけではありません。分からないことはその場で質問し、契約の前には内容をよく確認するなど、売手自身が主体的に関わることが大切です。

 
 

任せきりにせず、自分でも確認することが大切なんですね!

 

契約の前に内容を確認する

仲介契約や最終契約の内容は、署名する前に必ず確認しましょう。分からない言葉や条件があれば、納得できるまで説明を求めることが大切です。

複数の専門家の意見を聞く

一つの仲介会社の意見だけで判断せず、複数の仲介会社に相談したり、税理士や弁護士などの専門家の意見を聞いたりすることで、偏りのない判断ができます。

買手について確認する

買手がどのような会社なのか、過去にどのようなM&Aを行ってきたのか、買収後の方針はどうなのかを、仲介会社を通じて確認しましょう。成約後に会社や従業員が不当な扱いを受けないよう、買手選びは慎重に行うことが大切です。

中小M&Aガイドラインでよくある質問

 

ガイドラインについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「ガイドラインはどこで読めるのか」「登録していない仲介会社は使ってはいけないのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、ぜひ知っておきたいです!

 

ガイドラインは、どこで読めますか?

中小M&Aガイドラインは、中小企業庁のホームページで公開されており、誰でも無料で読むことができます。本編のほかに、要点をまとめた資料が用意されていることもあるので、まずはそちらから読んでみるのもよいでしょう。

登録していない仲介会社は、使ってはいけないのですか?

いいえ。登録制度への登録は義務ではないため、登録していない仲介会社に依頼することもできます。ただし、登録の有無は、ガイドラインを守る姿勢を確かめる一つの目安になります。登録していない場合は、手数料や契約条件について、特に丁寧に確認するようにしましょう。

中小M&Aガイドラインを知って、安心してM&Aを進めよう

中小M&Aガイドラインは、中小企業のM&Aを適切に進めるために中小企業庁が定めた指針で、経営者向けの手引きと、仲介会社などの支援機関が守るべき基本的な事項がまとめられています。

ガイドラインの内容を知っておくことで、仲介会社に確認すべきことが分かり、手数料や契約条件で不利な立場に立たされることを防ぎやすくなります。

株式会社つなぐコンサルティングが運営する「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「手数料や契約条件を、複数の仲介会社で比べて選びたい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。

[注1] 中小企業庁:中小M&Aガイドライン

[注2] 中小企業庁:M&A支援機関登録制度