会社売却で土地・建物はどうなる?会社の不動産と経営者個人の不動産の扱い方を解説
会社の売却を考えるとき、多くの経営者が気になるのが、会社が使っている土地や建物の扱いです。
本社や工場、倉庫、店舗などの不動産は、会社が持っている場合もあれば、経営者個人が持っていて会社に貸している場合もあります。中小企業では、経営者の自宅と会社の事務所が同じ建物にあることも珍しくありません。
不動産は金額が大きいため、どのように扱うかによって、売却価格や税金、経営者の手元に残るお金が大きく変わります。また、買手が不動産を必要としない場合もあるため、事前に方針を考えておくことが大切です。
ここでは、会社売却での不動産の扱い方を、会社が持っている不動産と経営者個人が持っている不動産に分けて解説し、売却の方法による違いや注意点を紹介します。
会社の不動産は2つに分けて考える

会社の不動産は、売却のときにどのように考えればいいのですか?
まず、その不動産を「会社が持っているのか」「経営者個人が持っているのか」を確認することが大切です。どちらが持っているかによって、売却のときの扱い方が大きく変わります。
まずは、誰が持っているかを確認するんですね!
| 不動産の持ち主 | 主な例 | 売却での基本的な扱い |
|---|---|---|
| 会社 | 会社名義の本社、工場、倉庫、店舗 | 株式譲渡なら会社と一緒に買手に移る |
| 経営者個人 | 経営者名義の土地に会社の工場が建っている、経営者の自宅の一部を事務所に使っている | 会社とは別の財産なので、売るのか、貸し続けるのかを決める必要がある |
登記簿を確認すると、不動産の持ち主が分かります。長年使っているうちに、誰の名義になっているか分からなくなっていることもあるため、売却を考え始めたら、まず登記簿で確認しておきましょう。
会社が持っている不動産の扱い

会社が持っている不動産は、売却のときにどうなるのですか?
株式譲渡の場合は、会社ごと買手に引き継がれるため、会社が持っている不動産も一緒に買手のものになります。事業譲渡の場合は、不動産を引き継ぐかどうかを、交渉で決めることになります。
売却の方法によって、扱いが変わるんですね!
株式譲渡の場合
株式譲渡では、会社の株式が買手に移り、会社はそのまま続きます。そのため、会社が持っている不動産も、会社の財産として一緒に引き継がれます。
この場合、不動産の価値は、会社の価値の計算に含まれます。不動産を今の価値(時価)で評価し直して、会社の純資産を計算するのが一般的です。土地の価値が帳簿の金額より大きく上がっている場合は、その分、会社の価値も高く評価されます。
事業譲渡の場合
事業譲渡では、引き継ぐ資産を一つずつ決めるため、不動産を買手に引き継ぐかどうかを、交渉で決めることができます。不動産を引き継ぐ場合は、登記の名義を変える手続きが必要になり、登録免許税や不動産取得税などの費用もかかります。
買手が不動産を必要としない場合
買手が「不動産はいらない」と言った場合は、どうすればいいのですか?
売却の前に、不動産を会社から切り離す方法を検討します。不動産を第三者に売る、経営者個人が買い取る、別の会社に移すといった方法があります。
買手の希望に合わせて、不動産を整理することもあるんですね!
買手が事業だけを必要としていて、不動産はいらないと考える場合もあります。たとえば、自社の工場に生産を集約したい場合や、不動産を持つことで資金が必要以上にかかると考える場合などです。
このような場合は、売却の前に、次のような方法で不動産を会社から切り離すことを検討します。
| 方法 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 第三者に売る | 不動産を売って、代金を会社のお金にする | 売れるまでに時間がかかることがある。売却益に法人税がかかる |
| 経営者個人が買い取る | 経営者が会社から不動産を買う | 経営者に買い取りの資金が必要。適正な価格で取引する必要がある |
| 別の会社に移す | 会社分割などで、不動産を別の会社に移す | 手続きが複雑になる。専門家との相談が必要 |
どの方法を選ぶかによって、税金の負担や手元に残るお金が変わります。必ず税理士に相談して、自社に合った方法を選びましょう。
経営者個人が持っている不動産の扱い
経営者個人の土地や建物を会社が使っている場合は、どうなるのですか?
経営者個人の不動産は、会社の財産ではないため、株式譲渡をしても自動的に買手に移ることはありません。売却後も会社に貸し続けるのか、会社や買手に売るのかを決める必要があります。
個人の不動産は、別に考える必要があるんですね!
会社に貸し続ける
売却後も、経営者が不動産を持ち続け、会社に貸すという方法があります。経営者にとっては、売却後も家賃の収入を得られるという利点があります。
この場合は、家賃の金額や契約の期間などを、改めて賃貸借契約として整えておくことが大切です。これまで家賃を受け取っていなかったり、相場とかけ離れた家賃だったりする場合は、適正な金額に見直す必要があります。
会社や買手に売る
不動産を、会社や買手に売る方法もあります。売却後に不動産の管理から離れたい場合や、まとまったお金を受け取りたい場合に向いています。
経営者個人が不動産を売って利益が出た場合は、譲渡所得として税金がかかります。不動産の売却と株式の売却を一緒に行う場合は、それぞれの税金を合わせて、手元に残るお金を計算しておきましょう。
自宅と会社が一緒の建物の場合
経営者の自宅と会社の事務所が同じ建物にある場合は、売却後の使い方について、特に慎重に考える必要があります。事務所の部分だけを会社に貸すのか、会社が別の場所に移るのかなど、買手とよく話し合っておきましょう。
不動産の担保と個人保証
不動産を、会社の借入金の担保にしている場合は、どうなるのですか?
経営者個人の不動産を、会社の借入金の担保にしていることはよくあります。売却に合わせて、担保を外してもらう手続きが必要になるため、金融機関と早めに相談しておくことが大切です。
個人保証と同じように、担保も整理する必要があるんですね!
中小企業では、経営者個人の自宅や土地を、会社の借入金の担保として金融機関に差し入れていることがよくあります。会社を売却したあとも担保が残っていると、会社が返済できなくなった場合に、経営者の不動産が処分されるおそれがあります。
そのため、売却の際には、次のような対応を検討します。
- 買手が借入金を返済して、担保を外してもらう
- 買手が代わりの担保を差し入れて、経営者の不動産の担保を外してもらう
- 売却代金で借入金を返済して、担保を外してもらう
担保を外す手続きには、金融機関の同意が必要です。最終契約の中で、担保の扱いについてもはっきり決めておきましょう。
不動産の扱いで注意したいこと
土壌の汚染や建物の状態
工場などの土地では、土壌の汚染がないかが確認されることがあります。また、建物が古い場合は、耐震の状態や修繕の必要性も確認されます。問題が見つかると、価格や交渉に影響することがあるため、心当たりがある場合は早めに調べておきましょう。
不動産の評価の方法
不動産をどのように評価するかによって、会社の価値は大きく変わります。帳簿の金額で評価するのか、今の価値で評価し直すのかによっても、価格は変わります。不動産の評価の方法について、仲介会社とよく相談しておきましょう。
不動産の扱いを決めるときの進め方
不動産の扱いは、どのような順番で決めればいいのですか?
まず不動産の持ち主と今の価値を確認し、売却後にどう使うかの希望を整理します。そのうえで、税理士に手元に残るお金を試算してもらい、買手と交渉しながら決めていくのが一般的です。
順番に整理していけば、迷わずに進められそうですね!
- 持ち主を確認する:登記簿で、会社と経営者個人のどちらが持っているかを確認する
- 今の価値を知る:不動産の今の価値(時価)を、専門家に評価してもらう
- 担保の状況を確認する:借入金の担保になっているかを確認する
- 売却後の希望を整理する:貸し続けたいのか、売りたいのかを考える
- 税金を試算してもらう:方法ごとに、手元に残るお金を税理士に試算してもらう
- 買手と話し合う:買手の希望もふまえて、不動産の扱いを決め、最終契約に書く
不動産の扱いは、売却価格の交渉と深く関わります。交渉が進んでから決めようとすると、条件の見直しが必要になることもあるため、早い段階で方針を決めておきましょう。
不動産と会社売却でよくある質問
不動産の価値が高い会社は、売れにくいですか?
不動産の価値が高いと、会社の価格も高くなるため、買手が資金を用意しにくくなることがあります。その場合は、不動産を会社から切り離して、事業だけを売る方法を検討することもあります。
不動産を残したまま、事業だけを売ることはできますか?
はい。事業譲渡を使えば、不動産を会社に残したまま、事業だけを買手に売ることができます。売却後は、会社が不動産を買手に貸すという形にすることもできます。
不動産を売って得たお金は、誰のものになりますか?
会社が持っている不動産を会社が売った場合、代金は会社のお金になります。株式譲渡の前に売った場合は、そのお金も会社の財産として、会社の価値の計算に含まれます。経営者個人が持っている不動産を売った場合は、代金は経営者個人のものになり、経営者個人に税金がかかります。
不動産は、早めに整理して売却の計画に組み込もう
会社売却での不動産の扱いは、会社が持っているのか、経営者個人が持っているのかによって大きく異なります。株式譲渡では会社の不動産は会社と一緒に移りますが、経営者個人の不動産は、貸し続けるのか売るのかを別に決める必要があります。
不動産は金額が大きく、税金の負担にも大きく関わります。売却を考え始めた段階で、登記簿で持ち主を確認し、仲介会社や税理士と相談しながら、扱い方を決めておきましょう。
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