製造業のM&Aとは?町工場や中小メーカーを売却するときのポイントと注意点を解説

製造業のM&Aとは?町工場や中小メーカーを売却するときのポイントと注意点を解説

日本のものづくりを支えてきた町工場や中小メーカーの多くが、経営者の高齢化と後継者不足という課題に直面しています。

長年かけて磨いてきた技術や、大手メーカーとの取引があるにもかかわらず、後を継ぐ人がいないために廃業を選ぶ会社も少なくありません。

こうした中で、技術や従業員、取引先を守りながら会社を次の世代に引き継ぐ方法として、M&Aを選ぶ製造業の会社が増えています。

ただし、製造業のM&Aには、工場の土地や設備、環境への対応、取引先との契約など、ほかの業種より確認すべきことが多いという特徴があります。

ここでは、製造業でM&Aが増えている背景と、買手が評価するポイント、売却で注意したいこと、成功させるための準備について解説します。

製造業でM&Aが増えている背景

工場が立ち並ぶ街並み
 

製造業では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

経営者の高齢化と後継者不足が大きな理由です。さらに、技術者の確保や設備への投資が難しくなっていることから、ほかの会社と一緒になって事業を続ける道を選ぶ会社が増えています。

 
 

技術があっても、続けることが難しくなっている会社が多いんですね!

 

製造業でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:親族や社員に、会社を継ぐ人が見つからない
  • 技術者の高齢化:熟練の技術者が引退を迎え、技術の継承が難しくなっている
  • 設備投資の負担:設備の更新や自動化に、多額の資金が必要になる
  • 取引先の変化:取引先の海外移転や調達方針の見直しで、売上が不安定になる

買手にとっては、一から技術者を育てたり工場を建てたりするよりも、M&Aで技術や設備、取引先をまとめて引き継ぐほうが、早く事業を広げることができます。

買手が評価するポイント

製造業の現場で引き継がれる設備
 

製造業の会社を買う側は、どこを見ているのですか?

 
 

ほかの会社にはまねできない技術や、腕の良い技術者、大手メーカーとの取引、工場や設備の状態などを重視します。

 
 

技術と人と取引先が、会社の価値になるんですね!

 
評価のポイント内容
技術力特殊な加工技術、品質の高さ、特許やノウハウ
技術者人数、年齢構成、資格、技術の継承の状況
取引先大手メーカーとの取引、取引先の数、売上の偏り
設備機械の種類と年式、整備の状況、生産能力
工場・土地所有か賃貸か、立地、建物の状態
品質管理品質の認証、不良率、検査の体制
財務利益の安定性、借入金、設備投資の予定

技術が人に頼っていないか

製造業の技術は、特定の熟練技術者の腕に頼っていることがよくあります。その技術者が退職すると、品質を保てなくなるおそれがあるため、買手は技術の継承の状況を重視します。作業の手順や条件を記録に残し、若い社員に技術を伝えておくことが、会社の価値を高めることにつながります。

工場の土地・設備・環境の確認

 

製造業ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

工場の土地や建物、設備の状態に加えて、土壌汚染などの環境への対応が大切な確認ポイントになります。

 
 

目に見えない部分まで、確認されるんですね!

 

工場の土地と建物

工場の土地や建物が会社の所有なのか、経営者個人の所有なのか、賃貸なのかによって、M&Aの進め方は変わります。経営者個人が土地を持っている場合は、会社に売るのか、引き続き貸すのかを決めておく必要があります。

設備の状態

機械や設備が古くなっている場合、買手は売却後に必要になる更新の費用も考えて価格を判断します。設備の一覧や整備の記録をまとめ、状態を説明できるようにしておきましょう。

環境への対応

化学物質や油などを扱ってきた工場では、土壌汚染や排水の問題が、デューデリジェンス(買収監査)で確認されることがあります。問題が見つかると、浄化の費用が価格に影響したり、契約の条件に反映されたりすることがあります。心当たりがある場合は、早めに専門家に相談しておくと安心です。

取引先との契約に注意

 

取引先との関係で、気をつけることはありますか?

 
 

取引先との契約の中に、会社の株主や経営者が変わったときに取引先へ知らせたり、承諾を得たりする決まりがないかを確認しておくことが大切です。

 
 

契約書の中身まで、事前に見ておく必要があるんですね!

 

大手メーカーとの取引基本契約などには、会社の支配権が変わったときに、取引先が契約を解除できるといった定め(チェンジ・オブ・コントロール条項)が入っていることがあります。

この定めがある場合、株式譲渡で株主が変わることで、取引が続けられなくなるおそれがあります。主な取引先との契約書を事前に確認し、必要に応じて、適切なタイミングで取引先に説明できるよう準備しておきましょう。

売上の偏り

売上の大部分を特定の1社に頼っている場合、その取引先との関係が続くかどうかが、会社の価値を大きく左右します。取引先が売却後も取引を続けてくれる見込みがあるかは、買手が特に気にするポイントです。

製造業のM&Aの主な買手

 

製造業の会社を買うのは、どのような会社なのですか?

 
 

同じ業界で事業を広げたい会社のほか、取引先のメーカーや、新しい分野に進出したい異業種の会社、投資ファンドなど、さまざまな買手がいます。

 
 

思っていたより、いろいろな相手がいるんですね!

 
買手の種類主な目的
同業の会社生産能力や技術者を増やし、受注を広げたい
取引先のメーカー部品の調達先を確保し、供給を安定させたい
前後の工程の会社材料から加工、組み立てまでを一つのグループで担いたい
異業種の会社ものづくりの技術を取り込み、新しい事業に進出したい
投資ファンド経営を支援して会社の価値を高め、将来に売却したい

どの買手と組むかによって、売却後の会社の方向性や従業員の働き方は変わります。価格だけでなく、会社の将来をどう考えてくれる相手かを見極めることが大切です。

製造業のM&Aを進める流れ

製造業のM&Aは、一般的に次のような流れで進みます。

  1. 仲介会社などに相談し、会社の価値や売却の見込みを確認する
  2. 技術、設備、取引先、工場の土地などの情報を整理する
  3. 買手候補を探し、工場の見学やトップ面談を行う
  4. 条件を交渉し、基本合意を結ぶ
  5. デューデリジェンスで、財務・法務・設備・環境などを確認してもらう
  6. 最終契約を結び、クロージングと引き継ぎを行う

製造業では、買手が工場を実際に見学することが多いため、見学の日程や従業員への伝え方にも配慮が必要です。

売却前に準備しておきたい書類

 

売却を考え始めたら、どんな書類をそろえておけばいいですか?

 
 

決算書などの財務の書類に加えて、設備の一覧や取引先との契約書、工場の土地や建物に関する書類などをそろえておくと、話がスムーズに進みます。

 
 

早めにそろえておけば、慌てずに済みそうです!

 
書類の種類主な内容
財務の書類直近3期分の決算書、税務申告書、借入金の一覧
設備の書類機械・設備の一覧、年式、整備の記録、リース契約書
取引の書類主な取引先との取引基本契約書、取引先別の売上
工場の書類土地・建物の登記簿、賃貸借契約書、図面
技術の書類特許の一覧、作業の手順書、品質の認証の書類
人の書類従業員の一覧、資格、就業規則、賃金台帳
環境の書類化学物質の使用状況、排水や廃棄物の処理の記録

売却を成功させるためのポイント

早めに準備を始める

製造業のM&Aは、確認することが多いため、相談から成約まで1年ほどかかることも珍しくありません。経営者が元気なうちに、時間に余裕を持って準備を始めましょう。

技術を見える形にする

熟練の技術者の勘やコツは、そのままでは買手に伝わりません。作業の手順や加工の条件、品質を保つための工夫などを記録に残しておくと、技術の価値を具体的に説明しやすくなります。

工場を整えておく

工場の見学では、整理や清掃の状況、安全への配慮なども見られています。日頃から整った工場を保つことが、買手の信頼につながります。

製造業のM&Aでよくある質問

 

製造業のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「小さな町工場でも売れるのか」「赤字でも買手は見つかるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、まさに気になっていたことです!

 

従業員が数人の町工場でも売れますか?

はい。規模が小さくても、特殊な加工技術や、大手メーカーとの取引、腕の良い技術者などに価値を感じる買手はいます。特に、同じ地域や同じ業界で事業を広げたい会社にとっては、魅力的な買収先になることがあります。

赤字でも買手は見つかりますか?

赤字であっても、技術や設備、取引先に価値があれば、買手が見つかることはあります。買手の持つ販売先や資金と組み合わせることで、利益を出せると考える会社もあるためです。ただし、価格は厳しく評価されやすいため、早めに相談することが大切です。

売却後、経営者はどうなりますか?

技術や取引先との関係を引き継ぐため、売却後もしばらくの間、顧問や役員として会社に残ってほしいと求められることが多くあります。残る期間や役割、報酬は、契約の段階で買手と話し合っておきましょう。

従業員にはいつ伝えればいいですか?

早い段階で話が広まると、従業員が不安を感じて辞めてしまったり、取引先に話が伝わったりするおそれがあります。一般的には、最終契約を結ぶ前後に、買手と相談したうえで説明します。売却後も雇用や待遇が守られることを、丁寧に伝えることが大切です。

製造業のM&Aは、技術と人を残すための選択肢

製造業のM&Aでは、技術力や技術者、取引先との関係、工場や設備の状態が、会社の価値を大きく左右します。取引先との契約や環境への対応など、製造業ならではの確認ポイントも多いため、早めに準備を進めることが大切です。

M&Aは、長年培ってきた技術と従業員の雇用を守りながら、会社を次の世代に引き継ぐための有力な選択肢です。

株式会社つなぐコンサルティングが運営する「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「製造業のM&Aに強い仲介会社を探したい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。