M&Aを従業員に伝えるタイミングはいつ?伝える順番と伝え方、注意点を解説
会社の売却を考え始めた経営者様の多くが悩むのが、「従業員にいつ、どのように伝えればいいのか」という点です。
長年一緒に働いてきた従業員には、できるだけ早く正直に話したいと考える方も多いでしょう。しかし、伝える時期や方法を誤ると、従業員の不安が広がり、退職者が出たり、取引先に話が漏れたりして、M&Aそのものがうまくいかなくなることがあります。
一方で、適切なタイミングで丁寧に説明すれば、従業員の理解を得て、新しい体制へスムーズに移ることができます。
ここでは、M&Aを従業員に伝えるタイミングと順番、説明会で話す内容、従業員の不安への答え方、注意点について解説します。
M&Aを従業員に伝えるタイミング

M&Aのことは、いつ従業員に伝えればいいのですか?
一般的には、最終契約を結んだあとが目安です。条件が固まる前に伝えると、話がまとまらなかったときに不要な不安を与えてしまうため、それまでは経営者とごく一部の関係者だけで進めます。
早く伝えればいいというわけではないんですね!
M&Aの検討を始めてから最終契約を結ぶまでには、半年〜1年ほどかかることが一般的です。その間には、買手との交渉がまとまらず、話が白紙に戻ることもあります。
そのため、従業員への説明は、M&Aの実行がほぼ確実になった「最終契約の締結後」に行うのが一般的です。クロージング(代金の支払いと株式の引き渡し)の前後に、全従業員へ説明する流れが多く見られます。
早く伝えすぎるリスク
- 「会社が売られる」という不安から、優秀な従業員が退職してしまう
- 従業員から取引先に話が伝わり、取引の見直しにつながる
- 交渉がまとまらなかった場合に、従業員との信頼関係が損なわれる
- 噂が広がり、正確でない情報が独り歩きする
遅く伝えすぎるリスク
一方で、従業員が報道や取引先から先にM&Aのことを知ってしまうと、「自分たちには何も知らされていなかった」と不信感を持たれます。
最終契約を結んだら、できるだけ早く、経営者自身の口から伝えることが大切です。
伝える順番

従業員全員に、一度に伝えるのがいいのですか?
一般的には、役員や幹部、会社を支える中心的な社員(キーマン)に先に伝え、そのあとで全従業員に説明します。取引先には、従業員への説明のあとに伝えるのが基本です。
伝える順番にも気をつける必要があるんですね!
M&Aを伝える一般的な順番は、次のとおりです。
| 順番 | 伝える相手 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 役員・幹部 | 全従業員への説明に協力してもらえるよう、先に理解を得る |
| 2 | キーマン(中心的な社員) | 退職を防ぐため、個別に丁寧に説明する |
| 3 | 全従業員 | 説明会などで、経営者が直接説明する |
| 4 | 取引先 | 従業員への説明のあと、取引が続くことを伝える |
キーマンには早めに伝えることも
買手にとって、会社の技術や取引先との関係を支えるキーマンが残ってくれるかどうかは、M&Aの大切な条件の一つです。
そのため、デューデリジェンス(買収監査)の段階で、買手からキーマンとの面談を求められることもあります。その場合は、仲介会社や買手と相談したうえで、秘密を守ってもらうことを約束してもらい、最終契約の前にキーマンへ伝えることもあります。
説明会で伝える内容
全従業員への説明会では、何を話せばいいのですか?
M&Aを決めた理由、新しい会社のこと、従業員の雇用や待遇がどうなるか、これからの流れの4つは、必ず伝えましょう。経営者自身の言葉で、誠実に話すことが何より大切です。
従業員が一番知りたいのは、自分たちがどうなるかですよね!
説明会では、次の内容を伝えるのが一般的です。
- M&Aを決めた理由:後継者がいないこと、会社をさらに成長させたいことなど、経営者の想い
- 買手の会社について:どのような会社で、なぜこの相手を選んだのか
- 雇用と待遇:雇用が続くこと、給与や勤務条件がどうなるか
- これからの流れ:経営者の交代の時期や、引き継ぎの進め方
買手の経営者にも同席してもらう
説明会には、買手の経営者にも同席してもらい、従業員に向けて直接あいさつや今後の方針を話してもらうと効果的です。
新しい経営者の人柄や考え方を直接知ることで、従業員の不安が和らぎやすくなります。説明会の前に、誰が何を話すのか、質問にどう答えるのかを、買手と打ち合わせておきましょう。
個別面談の場を設ける
説明会では質問しにくい従業員もいるため、説明会のあとに、個別に話を聞く場を設けることも大切です。一人ひとりの不安や疑問に丁寧に答えることで、退職を防ぐことにもつながります。
従業員からよくある不安と答え方
従業員からは、どのような質問が出ることが多いですか?
「クビにならないか」「給料は下がらないか」「仕事のやり方は変わるのか」といった質問が多く出ます。あらかじめ買手と確認したうえで、正確に答えられるよう準備しておきましょう。
事前に答えを用意しておくと、安心して説明できますね!
| よくある不安 | 答え方のポイント |
|---|---|
| 解雇されないか | 株式譲渡であれば、雇用契約はそのまま続くことを伝える |
| 給与や待遇は変わるか | 買手との合意内容をもとに、当面の条件を具体的に伝える |
| 仕事の内容は変わるか | 変わること・変わらないことを、分かる範囲で正直に伝える |
| 社長はどうなるのか | 引き継ぎの期間や、会社への関わり方を伝える |
| 会社の名前は残るのか | 買手の方針をもとに説明する |
分からないことについては、無理に答えず、「確認して改めて伝える」と約束することが大切です。その場しのぎの回答は、あとで事実と違ったときに、かえって不信感を招きます。
雇用や待遇は、最終契約で約束してもらう
従業員の雇用の維持や待遇については、口約束ではなく、最終契約書の中で買手に約束してもらうのが安心です。契約で決まっていれば、説明会でも自信を持って従業員に伝えることができます。
従業員に伝えるときの注意点
伝える前の段階で、気をつけておくことはありますか?
最終契約までは情報が漏れないように管理すること、もし漏れてしまったときの対応を決めておくことが大切です。
情報の管理には、特に気を配りたいです!
情報が漏れないように管理する
M&Aの検討中は、資料の扱いやメール、来客などから、従業員に気づかれることがあります。
- 資料は社外や自宅で準備し、社内のパソコンや共有フォルダに置かない
- 仲介会社や買手との打ち合わせは、社外の会議室を使う
- 買手の会社見学は、営業時間外や休日に行う
情報が漏れてしまったときの対応
万が一、M&Aの話が従業員に伝わってしまった場合は、うやむやにせず、経営者から状況を説明しましょう。
まだ決まっていないことは「検討している段階」と正直に伝え、決まり次第、改めて説明することを約束します。どのように対応するかは、事前に仲介会社と相談しておくと安心です。
M&A後の従業員へのフォロー
M&Aが終わったあとも、従業員のために何かできることはありますか?
引き継ぎ期間中は、前の経営者が会社に残り、新しい経営者と従業員の橋渡しをすることが大切です。急な変化を避け、少しずつ新しい体制に移ることで、従業員も安心して働き続けられます。
売って終わりではなく、引き継ぎまでが大切なんですね!
M&Aのあとは、新しい経営者のもとで、会社の仕組みやルールを少しずつ統合していきます。この期間に、前の経営者が顧問などとして残り、従業員の相談に乗ったり、新しい経営者に会社の文化を伝えたりすることで、従業員の離職を防ぐことができます。
従業員への伝え方でよくある質問
従業員への伝え方について、ほかにも気になることがあります。
「事業譲渡の場合も同じ伝え方でいいのか」「パートやアルバイトにも説明が必要か」「退職を申し出る人が出たらどうするか」といったご質問をよくいただきます。
どれも、実際に起こりそうなことばかりです!
事業譲渡の場合も、同じように伝えればいいですか?
事業譲渡の場合は、従業員が買手の会社に移る(転籍する)ために、一人ひとりの同意が必要になります。そのため、株式譲渡よりも丁寧な説明と、個別の話し合いが欠かせません。
転籍後の給与や勤務地、勤務条件などを具体的に示し、従業員が納得したうえで同意できるよう、十分な時間をとって説明しましょう。
パートやアルバイトにも説明は必要ですか?
はい。雇用の形にかかわらず、会社で働くすべての人に説明することが大切です。パートやアルバイトの方が、店舗や現場の運営を支えている会社も少なくありません。
説明会に参加できない人には、個別に時間をとって伝えるなど、説明が届かない人が出ないように配慮しましょう。
退職を申し出る従業員が出たら、どうすればいいですか?
まずは、退職を考えた理由をしっかり聞きましょう。待遇への不安や、新しい経営者への不安が理由であれば、買手と相談して、具体的な条件や方針を改めて伝えることで、考え直してもらえることもあります。
キーマンの退職は、買手にとっても大きな影響があるため、退職の申し出があった場合は、早めに買手や仲介会社と共有することが大切です。
取引先には、誰が伝えればいいですか?
取引先には、従業員への説明が終わったあとに、経営者自身が直接あいさつに行くのが一般的です。主要な取引先には、新しい経営者と一緒に訪問すると、取引が今後も続くことを安心してもらいやすくなります。
従業員への伝え方を工夫して、M&Aを成功させよう
M&Aを従業員に伝えるのは、一般的に最終契約を結んだあとが目安です。早く伝えすぎると退職や情報漏れのリスクがあり、遅すぎると不信感を招くため、タイミングが大切です。
伝えるときは、役員やキーマンから全従業員、取引先の順に、経営者自身の言葉で、M&Aの理由や雇用・待遇のことを誠実に説明しましょう。
従業員の不安に丁寧に答え、引き継ぎ期間もしっかりフォローすることで、新しい体制へスムーズに移ることができます。
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