M&Aのノンネームシートと企業概要書とは?違いと記載内容、売手が気をつけたいポイント

M&Aのノンネームシートと企業概要書とは?違いと記載内容、売手が気をつけたいポイント

M&Aで会社の売却を進めるとき、仲介会社はまず、買手候補を探すための資料を作ります。その代表的なものが「ノンネームシート」と「企業概要書」です。

この2つの資料は、どちらも買手候補に会社を紹介するためのものですが、載せる情報の詳しさや、見せる相手、見せるタイミングが大きく異なります。

資料の内容は、買手候補が興味を持つかどうかを左右するだけでなく、情報が漏れないように守るためにも大切です。

ここでは、ノンネームシートと企業概要書の違いと、それぞれの記載内容、見せる順番、売手が準備のときに気をつけたいポイントについて解説します。

ノンネームシートとは?

仲介会社と資料の内容を確認する経営者
 

ノンネームシートとは、どのような資料なのですか?

 
 

会社名を伏せたまま、業種や地域、売上の規模などの概要だけをまとめた、1〜2枚程度の資料です。買手候補に「こういう会社が売却を検討しています」と紹介し、興味があるかを確かめるために使います。

 
 

名前を出さずに、まずは興味を持ってもらうための資料なんですね!

 

ノンネームシートは、「ティーザー」と呼ばれることもあります。会社が特定されない範囲の情報だけを載せるため、秘密保持契約を結ぶ前の買手候補にも見せることができます。

ノンネームシートの主な記載内容

項目記載の例
業種製造業(金属加工)、サービス業など
所在地関東地方、近畿地方など、広めの地域
売上・利益の規模売上高 5億〜10億円、営業利益 数千万円など
従業員数20〜50名など
会社の特徴・強み長年の取引先、独自の技術など、特定されない書き方で
売却の理由後継者不在、事業の成長のためなど
希望する方法株式譲渡、事業譲渡など

数字はそのまま書かず、「〇億〜〇億円」のように幅を持たせて書くのが一般的です。

企業概要書とは?

買手候補が見つかり喜ぶ社員たち
 

企業概要書は、ノンネームシートとどう違うのですか?

 
 

会社名を明かしたうえで、事業内容や財務状況、組織、取引先などを詳しくまとめた資料です。ノンネームシートを見て興味を持った買手候補と、秘密保持契約を結んだあとに見せます。

 
 

ここで初めて、会社の詳しい中身を伝えるんですね!

 

企業概要書は、「IM(インフォメーション・メモランダム)」とも呼ばれます。買手候補は、この資料をもとに、買収を本格的に検討するかどうか、どのくらいの価格を考えるかを判断します。

数十ページになることもあり、仲介会社が売手からの聞き取りや資料をもとに作成するのが一般的です。

企業概要書の主な記載内容

項目主な内容
会社の概要会社名、所在地、設立年、沿革、経営理念
事業の内容製品・サービス、ビジネスの仕組み、強み
市場と競合業界の動向、競合との違い
取引先主要な取引先、売上の構成
組織と人材組織図、従業員数、年齢構成、キーマン
財務の状況過去数期分の業績、資産・負債の状況
設備・資産工場や店舗、主要な設備、不動産
今後の計画事業計画、成長の見込み
売却の条件売却の理由、希望する方法や条件

ノンネームシートと企業概要書の違い

 

2つの資料の違いを、まとめて比べることはできますか?

 
 

会社名を出すかどうか、情報の詳しさ、見せる相手、秘密保持契約の前か後か、が主な違いです。表にまとめました。

 
 

並べて見ると、役割の違いがよく分かりますね!

 
比較項目ノンネームシート企業概要書
会社名伏せる明かす
情報の詳しさ概要のみ(1〜2枚程度)詳しい(数十ページになることも)
見せる相手幅広い買手候補関心を示した一部の買手候補
秘密保持契約結ぶ前に見せる結んだあとに見せる
目的興味があるかを確かめる買収を本格的に検討してもらう

資料を見せる順番

M&Aでは、次のような順番で、段階的に情報を開示していきます。

  1. 仲介会社が、ノンネームシートを複数の買手候補に紹介する
  2. 興味を持った買手候補と、秘密保持契約を結ぶ
  3. 秘密保持契約を結んだ買手候補に、企業概要書を見せる
  4. 企業概要書を見て検討を進めたい買手候補と、トップ面談を行う

このように段階を踏むことで、会社の情報が必要以上に広がるのを防ぎながら、買手候補を絞り込んでいくことができます。

ノンネームシートで気をつけたいこと

 

ノンネームシートを作るとき、売手が気をつけることはありますか?

 
 

いちばん大切なのは、会社が特定されないようにすることです。業種や地域、特徴を細かく書きすぎると、同じ業界の人には分かってしまうことがあります。

 
 

名前を伏せていても、安心はできないんですね!

 

会社が特定されない書き方にする

「〇〇市で創業70年の和菓子店、従業員15名、駅前に本店」のように具体的に書くと、地域の同業者には会社が分かってしまいます。地域は「関東地方」「中部地方」など広めにし、数字は幅を持たせて書くのが基本です。

特徴は「魅力」が伝わる程度に

一方で、情報をぼかしすぎると、買手候補が興味を持ってくれません。会社の強みや魅力が伝わりつつ、会社が特定されないバランスを、仲介会社と相談しながら決めましょう。

紹介する相手を確認する

ノンネームシートを、どの買手候補に紹介するのかも確認しておきましょう。取引先や競合など、紹介してほしくない相手がいる場合は、事前に仲介会社に伝えておくことが大切です。

企業概要書の準備で気をつけたいこと

 

企業概要書の準備では、どんなことに気をつければいいですか?

 
 

正確な情報を伝えること、会社の強みを分かりやすく伝えること、課題も隠さずに整理しておくことが大切です。

 
 

良く見せることと、正直に伝えることのバランスが大事なんですね!

 

正確な情報を伝える

企業概要書の内容は、その後のデューデリジェンスで詳しく確認されます。実態より良く見せようとして数字を誇張すると、あとで信頼を失い、交渉が打ち切られる原因になります。

強みを分かりやすく伝える

経営者にとって当たり前のことでも、買手から見ると大きな価値になることがあります。長く続いている取引先や、社員の技術、地域での評判などを、仲介会社に具体的に伝えましょう。

課題も整理しておく

会社の課題やリスクがある場合は、企業概要書の段階で伝えるか、どの段階で伝えるかを仲介会社と相談しておきましょう。早めに伝えておくことで、あとから条件が大きく変わるのを防ぎやすくなります。

必要な資料をそろえておく

企業概要書を作るためには、決算書や会社案内、組織図、主要な取引先の一覧などの資料が必要です。売却を考え始めた段階で、少しずつ整理しておくと、資料作りがスムーズに進みます。

買手候補は資料のどこを見ているのか

 

買手候補は、資料のどこを特に見ているのですか?

 
 

自社の事業と組み合わせたときに効果がありそうか、会社を引き継いだあとも事業が続くか、隠れたリスクがないか、の3点をよく見ています。

 
 

買手の視点を知っておけば、伝えるべきことが分かりますね!

 

自社の事業と組み合わせた効果

買手は、売手企業の取引先や技術、人材、地域などが、自社の事業とどう組み合わさるかを考えています。たとえば、新しい地域に進出したい会社にとっては、その地域に取引先を持つ会社は魅力的に映ります。

引き継いだあとも事業が続くか

経営者が引退したあとも、取引先や社員が残り、事業が続くかどうかは、買手が最も気にする点の一つです。取引先との関係が会社として続いているか、キーマンが残ってくれそうかなどが見られます。

隠れたリスクがないか

財務の数字の動きや、取引先の偏り、従業員の年齢構成などから、買手はリスクの有無を読み取ろうとします。気になる点があれば、トップ面談やデューデリジェンスで詳しく確認されます。

資料作りの前に売手が整理しておきたいこと

資料作りをスムーズに進めるために、売手は次のことを事前に整理しておくと安心です。

  • 会社の沿革:創業のきっかけや、これまでの大きな出来事
  • 事業の流れ:仕入れから販売までの仕組み、主な製品・サービス
  • 主要な取引先:取引の内容、取引の年数、売上に占める割合
  • 組織と人材:組織図、主な社員の役割、資格や経験
  • 財務の資料:過去3〜5期分の決算書、借入金の状況
  • 売却の希望:売却の理由、希望する時期や条件、従業員の処遇の希望

これらの情報は、資料作りだけでなく、トップ面談やデューデリジェンスでも必要になります。早めに整理しておくことで、M&A全体の流れをスムーズに進めることができます。

ノンネームシート・企業概要書でよくある質問

 

資料について、ほかにも気になることがあります。

 
 

「資料は誰が作るのか」「作るのにどのくらいかかるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも知っておきたいです!

 

資料は誰が作るのですか?

一般的には、仲介会社が、売手への聞き取りや提出された資料をもとに作成します。売手は、内容に誤りがないか、載せたくない情報が含まれていないかを確認します。

資料を作るのに、どのくらいかかりますか?

ノンネームシートは比較的短い期間で作成できますが、企業概要書は内容が多いため、数週間ほどかかることもあります。必要な資料が早くそろうほど、作成も早く進みます。

企業概要書は、渡したあとに返してもらえますか?

交渉がまとまらなかった場合は、秘密保持契約に基づいて、企業概要書などの資料を返してもらうか、破棄してもらうのが一般的です。紙の資料だけでなく、データで渡した資料も対象になるため、契約の内容を確認しておきましょう。

資料には「社外秘」の表示を入れたり、配布した相手ごとに番号を振ったりしておくと、管理がしやすくなります。

2つの資料の役割を知って、安心して買手探しを進めよう

ノンネームシートは、会社名を伏せて概要だけをまとめた資料で、買手候補の興味を確かめるために使います。企業概要書は、秘密保持契約を結んだ買手候補に見せる、会社の詳しい情報をまとめた資料です。

ノンネームシートでは会社が特定されない書き方を心がけ、企業概要書では正確な情報と会社の強みを分かりやすく伝えることが大切です。

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