M&A用語集|会社を売る経営者が最初に知っておきたい25の言葉
「アドバイザー」「ノンネーム」「DD」「クロージング」。M&Aの相談に行くと、初めて聞く言葉がたくさん出てきます。
仲介会社の担当者は慣れた言葉で話しますが、経営者にとっては初めて聞く言葉ばかりで、分かったふりをしてうなずいてしまった、という声はよく聞かれます。ただ、言葉の意味があいまいなまま話を進めると、手数料や契約の内容を取り違えるなど、あとで困ることにもなりかねません。
そこでこの記事では、会社を売る経営者が最初に知っておきたい25の用語を、4つのグループに分けて整理しました。最初から順番に読んでもよいですし、打ち合わせで分からない言葉が出たときに、辞書のように引いていただいても構いません。
すべてを暗記する必要はありません。「こういう意味なのか」と一度目を通しておくだけで、仲介会社との話がぐっと分かりやすくなります。
この記事で取り上げる用語の一覧

| グループ | 用語 |
|---|---|
| 基本の言葉 | M&A、売手・買手、仲介、アドバイザー、スキーム、シナジー |
| 書類の言葉 | ノンネームシート、企業概要書、秘密保持契約、意向表明書、基本合意書、最終契約書 |
| お金の言葉 | 企業価値、株式価値、EBITDA、年買法、のれん、着手金・成功報酬、レーマン方式 |
| 手続きの言葉 | デューデリジェンス、トップ面談、独占交渉権、表明保証、クロージング、PMI |
基本の言葉

M&Aというと、大きな会社が会社を買収するニュースを思い浮かべます。中小企業でも使う言葉なのですか?
はい。M&Aは、会社の売り買いや引き継ぎ全般を指す言葉です。大企業だけのものではなく、後継者のいない中小企業が会社を引き継ぐ方法としても、広く使われています。
特別な会社だけの話ではないんですね!
1. M&A
「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」と訳されます。会社を丸ごと引き継ぐ場合も、事業の一部だけを引き継ぐ場合も、広くM&Aと呼ばれます。中小企業の場合は、後継者がいない会社を、別の会社や個人に引き継ぐケースが中心です。
2. 売手(うりて)・買手(かいて)
会社や事業を売る側を「売手」、買う側を「買手」と呼びます。この記事を読んでいる経営者の方は、「売手」にあたります。仲介会社の資料にも、「売手企業」「買手企業」という言葉がよく出てきます。
3. 仲介(ちゅうかい)
売手と買手の間に入って、相手探しから条件の調整、契約までを手伝うことです。仲介会社は、売手と買手の両方から手数料を受け取る形が一般的です。そのため、どちらか一方の味方というより、双方の間をとりもつ立場にあります。
4. アドバイザー
売手または買手の片方だけについて、助言や交渉の支援をする専門家のことです。仲介会社が両方の間に立つのに対し、アドバイザーは依頼した側に立って動きます。ただし、実際の契約では、仲介会社もアドバイザーという名前を使うことがあります。契約書に「仲介」「アドバイザー」のどちらで書かれているかを確認しておくと、立場の違いが分かります。
5. スキーム
M&Aの「進め方の形」を指す言葉です。具体的には、株式を譲渡する方法、事業を譲渡する方法、会社を分割する方法など、どの手段で会社を引き継ぐのかを表します。同じ相手に売るときでも、スキームが違えば、税金や必要な手続きが大きく変わります。
6. シナジー
2つの会社が一緒になることで生まれる相乗効果のことです。たとえば、買手の販売力と売手の技術力が合わされば、それぞれが単独でいたときよりも大きな成果が期待できます。買手が売手に高い価格をつけるときは、このシナジーを期待していることが多くあります。
書類の言葉
M&Aでは、たくさんの書類が出てくると聞きました。どれも似た名前で、区別がつきません。
書類は、進み具合に応じて順番に登場します。最初は名前を伏せた簡単な資料から始まり、最後は正式な契約書で終わります。順番と目的を押さえておけば、混乱しにくくなります。
流れの中で覚えれば、整理しやすそうですね!
7. ノンネームシート
会社の名前を伏せたまま、業種や地域、売上の規模などの概要だけをまとめた1〜2枚の資料です。買手の候補に、まず興味を持ってもらうために使われます。社名が分からないようにしてあるため、従業員や取引先に情報が漏れる心配を抑えながら、買手を探せます。
8. 企業概要書
ノンネームシートに興味を持った買手に、秘密保持契約を結んだうえで渡す、より詳しい資料です。事業の内容、従業員の人数、財務の状況、強みなどがまとめられています。仲介会社が作ることが多いですが、内容は必ず経営者本人が確認しましょう。
9. 秘密保持契約(NDA)
買手に会社の詳しい情報を見せる前に、「知った内容を外部に漏らさない」「M&Aの検討以外に使わない」と約束する契約です。NDAと略して呼ばれることもあります。会社名を明かす前に必ず結ぶのが基本です。
10. 意向表明書
買手が「この条件で買いたい」という意思を、売手に伝える書面です。希望する価格、買収の方法、今後のスケジュールなどが書かれています。買手の本気度や考え方を知る材料になりますが、この段階では法的な拘束力は弱く、あとで条件が変わることもあります。
11. 基本合意書
売手と買手が、ここまでの話し合いで合意した内容をまとめる書面です。価格の目安、独占して交渉する期間、今後のスケジュールなどが書かれます。多くの項目は拘束力を持たせないのが一般的ですが、秘密保持や独占交渉の部分には拘束力を持たせることがあります。
12. 最終契約書
M&Aの最後に結ぶ、正式な契約書です。株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などの名前で呼ばれます。価格、引き渡しの時期、表明保証、解除の条件などが細かく書かれます。内容は専門家に確認してもらったうえで、納得してから署名しましょう。
お金の言葉
会社の「値段」を表す言葉が、いくつかあるようです。何が違うのですか?
会社の価値を、借入金を含めた事業全体で見るか、株主のものだけで見るかで、言葉が分かれます。どの値段の話をしているのかを、毎回確かめることが大切です。
同じ「会社の値段」でも、見ているものが違うんですね!
13. 企業価値
会社の事業そのものの価値を表します。借入金などの負債を含めた、事業全体の値段と考えると分かりやすいでしょう。計算には、純資産をもとにした方法や、将来の利益をもとにした方法など、いくつかの種類があります。
14. 株式価値
企業価値から、借入金などの負債を引いて、株主のものになる部分の価値を表したものです。株式を譲渡する場合に、実際に売手が受け取る金額の基準になります。企業価値と株式価値は、まったく別の数字になることが多いので注意が必要です。
15. EBITDA(イービットディーエー)
利息、税金、減価償却費を引く前の利益のことです。会社の本業でどれくらい稼ぐ力があるかを、比べやすく示す指標として、買手が価格を考えるときによく使います。設備投資の多い会社と少ない会社を比べるときに便利な数字です。
16. 年買法(ねんばいほう)
会社の価格を、「営業利益や純資産などの何年分」という形で見積もる方法です。たとえば、営業利益の3年分と、時価に直した純資産を合わせて価格を考えます。計算が簡単なため、中小企業のM&Aでよく使われますが、「何年分」とするかは、業種や会社の状況によって変わります。
17. のれん
会社の時価の純資産を上回って支払われる、ブランド力、顧客基盤、技術力などの「目に見えない価値」のことです。買手が支払った金額が、会社の純資産より高いときの差額として表れます。売手にとっては、会社が積み上げてきた信用が評価された部分ともいえます。
18. 着手金・成功報酬
仲介会社に支払う手数料の種類です。着手金は、契約を結んだときや、仲介を始めるときに支払うお金です。成功報酬は、M&Aが成立したときに支払うお金です。最近は、着手金を無料にしている仲介会社も増えています。何が無料で、何にお金がかかるのかは、契約前に必ず確認しましょう。
19. レーマン方式
成功報酬の計算方法の一つです。取引の金額を区切って、金額が大きくなるほど料率が下がっていく仕組みです。中小企業のM&Aでは、この方式をもとにした手数料の体系が使われることが多くあります。ただし、何を「取引の金額」の基準にするかは、仲介会社によって異なります。
手続きの言葉
契約の前に、買手が会社をくわしく調べると聞きました。これは普通のことですか?
はい、ごく普通のことです。買手は、大きな金額を払って会社を買うため、内容を細かく確認します。この調査には売手の協力が欠かせず、準備しておくと、スムーズに進められます。
あらかじめ書類をそろえておくと安心ですね!
20. デューデリジェンス(DD)
買手が、会社の財務、法律、事業、人事などの状況を、専門家を使って詳しく調べることです。「買収監査」と呼ばれることもあります。ここで問題が見つかると、価格が下がったり、条件が変わったりすることがあります。決算書、契約書、従業員の名簿などを日頃から整理しておくと、調査がスムーズに進みます。
21. トップ面談
売手の経営者と買手の経営者が、直接会って話をする場のことです。条件の話だけでなく、経営の考え方や、従業員への思いなどを伝える機会になります。数字では見えない、相性を確かめる大切な場面です。
22. 独占交渉権
基本合意書の中などで定められる、一定の期間、売手がその買手とだけ交渉するという取り決めです。この期間は、ほかの買手と話を進められなくなります。買手が時間とお金をかけて調査をするための仕組みですが、期間が長すぎると、売手に不利になることもあります。
23. 表明保証
売手が買手に対して、「会社の内容は、説明したとおりです」と約束することです。たとえば、「簿外の借金はない」「従業員との間にトラブルはない」といった内容です。あとで説明と違うことが見つかると、売手が損害を賠償しなければならなくなることもあります。
24. クロージング
最終契約書に署名し、株式や事業の引き渡しと代金の支払いを行って、M&Aを完了させることです。「成約」「決済」と呼ぶこともあります。クロージングをもって、会社の経営は買手に引き継がれます。
25. PMI(ピーエムアイ)
「Post Merger Integration」の略で、M&Aが終わったあとに、会社を一つにまとめていく作業のことです。経営の方針、人事制度、システム、企業文化などをそろえていきます。売手の経営者も、引き継ぎの期間中は、PMIに関わることがあります。
用語を覚えるときのポイント
25個も覚えるのは大変そうです。何から覚えればいいですか?
全部を覚える必要はありません。まずは「書類の言葉」と「お金の言葉」の意味を押さえておくと、打ち合わせでの理解が大きく変わります。残りは、出てきたときに確かめれば大丈夫です。
必要なところから覚えればいいんですね!
M&Aの用語は、意味を知るだけでなく、「今、どの段階の話なのか」を意識すると理解しやすくなります。たとえば、ノンネームシートや企業概要書が出てくるのは買手を探す段階、デューデリジェンスや最終契約書が出てくるのは条件を詰める終盤の段階、というように、順番とセットで覚えましょう。
また、言葉の意味は、仲介会社によって少しずつ使われ方が違うことがあります。たとえば、「手数料」に何が含まれるのか、「企業価値」と「株式価値」のどちらの話をしているのかは、会社ごとに異なる場合があります。分かったつもりで進めず、「それは、どういう意味ですか」と確かめる習慣をつけると、あとのトラブルを防げます。
よくある質問
専門用語が分からないまま、相談に行ってもいいですか?
問題ありません。M&Aの専門用語は、経営者の方が最初から知っているものではありません。分からない言葉は、その場で質問して構いません。質問に丁寧に答えてくれるかどうかは、仲介会社を選ぶときの、一つの判断材料にもなります。
仲介会社の資料に、この記事にない言葉が出てきたらどうしますか?
そのときは、担当者に意味を確認しましょう。会社によって、独自の言い方をしていることもあります。意味を確認してメモしておくと、複数の仲介会社を比べるときにも役立ちます。
用語の意味を理解していないと、不利になることはありますか?
意味があいまいなままだと、手数料や契約の条件を取り違えるおそれがあります。特に、「手数料に含まれるもの」「独占交渉の期間」「表明保証の範囲」の3つは、契約の前に、自分の言葉で説明できる状態にしておくことをおすすめします。
言葉が分かれば、相談が楽になる
M&Aの用語は、一見むずかしく感じますが、一つひとつの意味はそれほど複雑ではありません。基本の言葉、書類の言葉、お金の言葉、手続きの言葉の4つに分けて見ていけば、全体の流れも自然とつかめるようになります。
分からない言葉が出てきたら、その場で確かめましょう。言葉の意味を知ることは、仲介会社と対等に話をするための、最初の準備になります。この記事を、打ち合わせのたびに見返せる、手元の用語集として使っていただければ幸いです。
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