M&Aのクロージングとは?最終契約から引き渡しまでの流れと、売手が準備すること
M&Aの交渉がまとまり、最終契約を結んだあとにも、まだ大切な手続きが残っています。それが「クロージング」です。
クロージングとは、最終契約で決めた内容を実際に実行し、株式や事業の引き渡しと、売却代金の支払いを行うことをいいます。クロージングを終えて、はじめてM&Aが成立したことになります。
最終契約を結んでから、すぐにクロージングを行う場合もあれば、数週間から数か月の準備期間を置く場合もあります。その間に売手がしなければならないことも多いため、流れをしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、M&Aのクロージングの意味と流れ、前提条件、当日に行うこと、売手が準備すること、クロージング後の手続きについて解説します。
M&Aのクロージングとは?

クロージングとは、何をすることなのですか?
最終契約で決めたとおりに、株式や事業を買手に引き渡し、買手から売却代金を受け取ることです。会社の印鑑や通帳、重要な書類の引き渡しなども、このときに行います。
契約を結んだあとに、実際の引き渡しがあるんですね!
M&Aの最終契約は、「いつ、何を、いくらで引き渡すか」を約束するものです。クロージングは、その約束を実際に実行する手続きです。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 最終契約の締結 | 株式譲渡契約書などに署名し、条件を確定させる |
| クロージングまでの準備 | 前提条件を満たすための手続きや、書類の準備を行う |
| クロージング | 株式や事業の引き渡しと、代金の支払いを行う |
| クロージング後 | 登記や届出、取引先への説明、引き継ぎを行う |
最終契約とクロージングを分ける理由

なぜ、最終契約とクロージングを同じ日に行わないのですか?
最終契約を結んだあとに、取引先の同意や役員の交代、許認可の手続きなど、引き渡しの前に済ませなければならないことがあるためです。
引き渡しの前に、準備の時間が必要なんですね!
最終契約からクロージングまでの間には、たとえば次のような手続きを行います。
- 株式の譲渡についての会社の承認
- 取引先や金融機関の同意を得る
- 役員の交代や、経営者の個人保証の扱いを決める
- 許認可の手続きを進める
- 金融機関からの借入金を返済する、または条件を変える
小規模なM&Aでは、こうした準備を最終契約の前に済ませておき、最終契約とクロージングを同じ日に行うこともあります。
クロージングの前提条件
最終契約に書かれている「前提条件」とは何ですか?
クロージングを行うために満たしておく必要がある条件のことです。前提条件が満たされないと、買手は代金を支払う義務を負わないのが一般的です。
条件をきちんと満たさないと、引き渡しが進まないんですね!
最終契約では、クロージングの前提条件として、次のような内容が定められることがよくあります。
| 前提条件の例 | 内容 |
|---|---|
| 表明保証が正しいこと | 売手が契約で約束した会社の状況が、クロージングの日にも正しいこと |
| 義務を果たしていること | 売手がクロージングまでに行うと約束したことを、きちんと行っていること |
| 承認・同意を得ていること | 株式の譲渡の承認や、主な取引先の同意を得ていること |
| 大きな問題が起きていないこと | 会社の経営に大きな悪い影響を与える出来事が起きていないこと |
| 書類がそろっていること | 役員の辞任届など、引き渡しに必要な書類がそろっていること |
前提条件を満たせない場合は、クロージングを延期したり、条件を見直したりすることになります。最終契約を結ぶ前に、前提条件の内容と、それを満たすための準備にかかる時間を確認しておきましょう。
クロージングまでの売手の約束
最終契約では、クロージングまでの間に、売手が会社をこれまでどおり運営することや、大きな借入れや資産の売却などを買手の同意なく行わないことを約束するのが一般的です。これらの約束を守らないと、契約違反になるおそれがあるため注意が必要です。
クロージング当日に行うこと
クロージングの当日には、どのようなことをするのですか?
前提条件が満たされていることを確認したうえで、株式や重要な書類の引き渡しと、売却代金の支払いを同時に行います。
引き渡しと支払いを、同じタイミングで行うんですね!
株式譲渡の場合、クロージングの当日には、一般的に次のようなことを行います。
- 前提条件が満たされていることを、双方で確認する
- 売手が、株式を引き渡す(株券を発行している会社は株券を渡す)
- 買手が、売却代金を売手の口座に振り込む
- 会社の印鑑、通帳、重要な契約書などを引き渡す
- 退任する役員の辞任届や、新しい役員の就任についての書類を受け渡す
代金の振り込みは、金融機関の営業時間内に確認できるよう、時間に余裕を持って行うのが一般的です。
売手が準備しておくこと
クロージングに向けて、売手は何を準備すればいいですか?
引き渡す書類や物の一覧を作り、漏れがないように準備しておくことが大切です。あわせて、借入金や個人保証の扱い、役員の退任の手続きなども進めておきましょう。
慌てないように、一覧にして準備しておきたいです!
| 準備するもの | 主な内容 |
|---|---|
| 株式に関する書類 | 株主名簿、株券(発行している場合)、譲渡承認の議事録 |
| 会社の重要物 | 会社の実印・銀行印、通帳、キャッシュカード、印鑑カード |
| 契約に関する書類 | 主な取引先との契約書、賃貸借契約書、リース契約書 |
| 役員に関する書類 | 退任する役員の辞任届、新しい役員の就任承諾書 |
| 許認可の書類 | 許認可の証明書、届出の控え |
| その他 | 会社のシステムやウェブサイトのログイン情報、鍵、重要な資料 |
借入金と個人保証
会社の借入金について、経営者が個人保証をしている場合は、クロージングに合わせて保証を外してもらう手続きが必要です。買手が保証を引き継ぐのか、借入金を返済するのかなど、金融機関と早めに相談しておきましょう。
役員の退職金
経営者が退任する場合は、役員退職金をクロージングの前に支払うのか、後に支払うのかによって、税金や売却代金の計算が変わることがあります。税理士と相談して、事前に決めておきましょう。
クロージング後の手続き
クロージングが終われば、手続きはすべて終わりですか?
いいえ。役員の変更の登記や、許認可の届出、取引先への説明など、クロージングのあとにも行う手続きがあります。
引き渡したあとも、しばらくは協力が必要なんですね!
クロージングのあとには、主に次のような手続きを行います。
- 役員の変更の登記:役員が変わったときは、2週間以内に登記を申請する
- 株主名簿の書き換え:買手を新しい株主として株主名簿に記録する
- 許認可の届出:役員の変更などについて、所管の行政庁に届け出る
- 取引先や金融機関への説明:新しい体制についてあいさつや説明を行う
- 従業員への説明:今後の体制や働き方について説明する
- 引き継ぎ:一定期間、売手が業務の引き継ぎや取引先への紹介を行う
価格の調整
最終契約によっては、クロージングの日の会社の財務の状況をもとに、売却代金を調整する定めが置かれていることがあります。調整の方法や時期は契約によって異なるため、内容をよく確認しておきましょう。
クロージングで起こりやすいトラブル
クロージングの段階で、トラブルが起きることはありますか?
はい。前提条件を満たせずに延期になったり、引き渡す書類が足りなかったり、表明保証の内容と実際の状況が違うことが分かったりすることがあります。
最後まで気を抜けないんですね!
| よくあるトラブル | 主な原因と対策 |
|---|---|
| 前提条件を満たせない | 取引先の同意や承認に時間がかかる。早めに手続きを始める |
| 書類や物が見つからない | 株券や印鑑カードなどが見当たらない。早めに一覧で確認する |
| 表明保証と状況が違う | 契約後に問題が見つかる。分かった時点で正直に伝えて相談する |
| 代金の振り込みが遅れる | 金融機関の手続きに時間がかかる。振り込みの時間に余裕を持つ |
| 従業員や取引先に話が広まる | 情報が漏れる。伝える時期と内容を事前に決めておく |
トラブルを防ぐためには、クロージングに必要な手続きや書類を一覧にして、売手と買手、仲介会社の間で、誰がいつまでに何をするかを共有しておくことが効果的です。
クロージングを円滑に進めるためのポイント
当日の段取りを事前に決めておく
クロージングの当日に、誰がどこに集まり、どの順番で何を行うのかを、事前に決めておきましょう。書類の受け渡しや振り込みの確認の手順を決めておくことで、当日の混乱を防ぐことができます。
専門家に確認してもらう
株式の譲渡の手続きや、役員の変更、登記などには、法律や税金の知識が必要になる場面があります。弁護士や司法書士、税理士などの専門家に確認してもらいながら進めると安心です。
クロージングでよくある質問
クロージングまでには、どのくらいの期間がかかりますか?
M&Aの規模や、必要な手続きによって異なります。小規模なM&Aでは、最終契約と同じ日にクロージングを行うこともあります。取引先の同意や許認可の手続きが必要な場合は、数週間から数か月かかることもあります。
売却代金は、一度に全額受け取れますか?
一度に全額を受け取ることが多いですが、代金の一部を後払いにしたり、売却後の業績に応じて追加で支払ったりする定めを置くこともあります。代金の受け取り方は、最終契約の段階でよく確認しておきましょう。
クロージングのあと、売手はすぐに会社を離れられますか?
多くの場合、クロージングのあとも一定の期間、売手が引き継ぎに協力することが求められます。取引先へのあいさつや業務の引き継ぎ、従業員への説明などを、買手と一緒に進めることで、会社の価値を守ることができます。期間や役割は、最終契約の段階で決めておきましょう。
クロージングまで気を抜かずに準備しよう
M&Aのクロージングは、最終契約で決めた内容を実行し、株式や事業の引き渡しと代金の支払いを行う、M&Aの最後の大切な手続きです。前提条件を満たすための準備や、引き渡す書類の確認、借入金や個人保証の扱いなど、売手が行うことも多くあります。
クロージングのあとも、登記や届出、引き継ぎなどの手続きが続きます。専門家と相談しながら、最後まで丁寧に進めることが大切です。
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