ビルメンテナンス会社のM&Aとは?業界の背景や買手が評価するポイント、売却の注意点を解説

ビルメンテナンス会社のM&Aとは?業界の背景や買手が評価するポイント、売却の注意点を解説

オフィスビルや商業施設、病院、マンションなどの建物は、清掃や設備の点検、警備などのビルメンテナンスによって、毎日安全に使えるように保たれています。

ビルメンテナンス業界は、建物がある限り仕事がなくならない、安定した業界といわれます。一方で、働く人の高齢化と人手不足、最低賃金の引き上げによる人件費の上昇など、経営の課題も少なくありません。また、経営者の高齢化や後継者不足に悩む会社も増えています。

こうした中で、管理の契約や従業員を守りながら会社を引き継ぐ方法として、ビルメンテナンス会社のM&Aが増えています。

ここでは、ビルメンテナンス業界でM&Aが増えている背景と、業務ごとに必要な許可や登録、買手が評価するポイント、売却で注意したいことについて解説します。

ビルメンテナンス業界でM&Aが増えている背景

ビルメンテナンス会社が管理する建物
 

ビルメンテナンス業界では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

経営者の高齢化と後継者不足に加えて、働く人の確保が難しくなっていることが大きな理由です。一方で、管理する建物を増やしたい会社にとっては、M&Aで契約と人材をまとめて手に入れられることが大きな魅力になっています。

 
 

安定した仕事がある業界だからこそ、買手も多いんですね!

 

ビルメンテナンス業界でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:経営者が高齢になっても、会社を継ぐ人が見つからない
  • 人手不足:清掃や設備管理のスタッフの採用が難しく、高齢化も進んでいる
  • 人件費の上昇:最低賃金の引き上げなどで、人件費の負担が増えている
  • 仕事の安定性:管理の契約は長く続くことが多く、売上が安定しやすい
  • 規模の拡大:大きな会社が、管理する建物や地域を増やすためにM&Aを活用している

ビルメンテナンスの仕事は、新しい取引先を開拓するのに時間がかかります。そのため、買手にとっては、M&Aで管理の契約をまとめて引き継ぐことが、事業を広げる近道になります。

ビルメンテナンスの主な業務

建物の周りを整える作業
 

ビルメンテナンスには、どのような仕事があるのですか?

 
 

建物の清掃のほか、電気や空調、給排水などの設備の管理、警備、衛生の管理など、さまざまな仕事があります。どの仕事を中心に行っているかによって、会社の強みや評価のポイントが変わります。

 
 

建物を支えるために、たくさんの仕事があるんですね!

 
業務の種類主な内容
清掃日常の清掃、床のワックスがけ、窓ガラスの清掃など
設備管理電気・空調・給排水・消防の設備などの点検と運転
警備施設の警備、受付、巡回など
衛生管理空気の環境の測定、貯水槽の清掃、害虫の防除など
建物の管理全般修繕の計画、テナントへの対応、工事の手配など

複数の業務をまとめて引き受けている会社は、取引先にとって欠かせない存在になりやすく、契約が長く続く傾向があります。

業務ごとに必要な許可や登録

 

ビルメンテナンスの仕事には、許可が必要なのですか?

 
 

清掃などの基本的な仕事には、特別な許可は必要ありません。ただし、警備や浄化槽の清掃など、業務によっては許可や登録、資格を持つ人の配置が必要になります。

 
 

どの仕事をしているかで、確認することが変わるんですね!

 
業務主な許可・登録・資格
警備警備業の認定(公安委員会)
浄化槽の清掃浄化槽清掃業の許可(市町村)
貯水槽の清掃など建築物衛生法にもとづく事業の登録(任意の登録)
電気設備の管理電気主任技術者などの資格を持つ人
消防設備の点検消防設備士などの資格を持つ人

M&Aでの許可の扱い

株式譲渡の場合は、会社がそのまま続くため、許可や登録も原則としてそのまま続きます。事業譲渡の場合は、許可や登録を引き継げないことが多く、引き継ぐ側が新たに取得する必要があります。そのため、許可が必要な業務を多く行っている会社では、株式譲渡が選ばれることが多くあります。

資格を持つ人の確保

設備の管理では、電気主任技術者などの資格を持つ人が欠かせません。資格を持つ社員が売却をきっかけに辞めてしまうと、契約を続けられなくなるおそれがあります。資格を持つ社員の人数と、売却後も働き続けてもらえるかを確認しておきましょう。

買手が評価するポイント

 

ビルメンテナンス会社のM&Aでは、買手はどこを評価するのですか?

 
 

管理している建物の数と契約の期間、取引先の顔ぶれ、スタッフの人数と定着率、資格を持つ社員の人数、利益率などが主なポイントです。

 
 

契約と人の両方が、会社の価値を支えているんですね!

 
評価のポイント内容
契約管理している建物の数、契約の期間、更新の状況
取引先ビルのオーナー、管理会社、官公庁など。売上の偏り
スタッフ人数、年齢構成、定着率、採用の仕組み
資格者電気主任技術者などの資格を持つ社員の人数
業務の幅清掃・設備管理・警備などをまとめて受けられるか
利益率契約ごとの利益、人件費の割合
労務管理労働時間の管理、社会保険の加入、残業代の支払い

長期の契約は評価されやすい

ビルメンテナンスの契約は、一度結ぶと長く続くことが多く、売上が安定しやすいのが特徴です。契約ごとの期間や更新の状況、契約が続いている年数を整理しておくと、会社の価値を伝えやすくなります。

官公庁の仕事

官公庁の建物の管理を、入札で受けている会社もあります。入札の資格や、これまでの実績は評価のポイントになります。ただし、入札の仕事は、契約の期間が終わると再び入札が行われるため、次も受けられるとは限らない点に注意が必要です。

ビルメンテナンス会社のM&Aで注意したいこと

 

ビルメンテナンス会社ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

取引先との契約の内容と、スタッフの労務管理の状況が特に大切です。また、スタッフの多くがパートで働いている場合は、社会保険の加入の状況も確認されます。

 
 

働く人が多い業界だからこそ、労務の管理が大切なんですね!

 

取引先との契約

主な取引先との契約の中に、会社の株主が変わったときに契約を解除できるといった定めがないかを確認しておきましょう。また、事業譲渡の場合は、取引先一人ひとりの同意を得て、契約を引き継ぐ必要があります。

労務管理

清掃や設備管理の仕事は、早朝や夜間の勤務が多く、労働時間の管理や残業代の支払いが問題になることがあります。また、パートのスタッフの社会保険の加入が適切に行われているかも、デューデリジェンス(買収監査)で確認されます。

人件費の上昇への対応

最低賃金が上がると、人件費が増えて利益が圧迫されます。取引先との契約の金額を見直す交渉ができているかどうかも、買手が気にするポイントです。

ビルメンテナンス会社の主な買手

買手の種類主な目的
同業のビルメンテナンス会社管理する建物や地域を増やしたい
不動産・建物管理の会社自社で管理する建物の清掃や設備管理を、グループで行いたい
警備会社警備と清掃・設備管理を組み合わせて受けたい
建設会社建てた建物の管理や修繕まで、グループで行いたい
投資ファンド業界の再編を進め、会社の価値を高めたい

売却前に準備しておきたい書類

書類の種類主な内容
財務の書類直近3期分の決算書、契約別の売上と利益、借入金の一覧
契約の書類主な取引先との管理の契約書、契約の期間と更新の記録
許可の書類警備業の認定、浄化槽清掃業の許可、登録の書類など
人の書類スタッフの一覧、資格を持つ社員の一覧、雇用契約書、就業規則
労務の資料勤務の記録、賃金台帳、社会保険の加入の状況
設備の資料清掃の機械や車両の一覧、リース契約書

売却を成功させるためのポイント

契約の内容を一覧にする

取引先ごとの契約の期間や金額、業務の内容、更新の状況を一覧にしておきましょう。どの契約がどのくらいの利益を生んでいるかが分かると、買手は会社の価値を判断しやすくなります。

現場の責任者を育てておく

それぞれの建物の現場をまとめる責任者がいると、経営者が抜けたあとも、仕事の質を保ちやすくなります。現場の責任者が育っていることは、買手にとって大きな安心材料です。

ビルメンテナンス会社のM&Aでよくある質問

 

ビルメンテナンス会社のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「規模の小さな会社でも売れるのか」「スタッフの多くが高齢だが評価されるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、まさに気になっていたことです!

 

規模の小さな会社でも売れますか?

はい。規模が小さくても、長く続いている管理の契約や、地域での信頼がある会社は、管理する建物を増やしたい会社にとって魅力的な引き継ぎ先になることがあります。

スタッフの多くが高齢ですが、評価されますか?

ビルメンテナンス業界では、高齢のスタッフが活躍していることは珍しくありません。スタッフが長く働き続けてくれていることは、評価のポイントにもなります。ただし、今後の採用の見通しについては、買手から質問されることが多いため、採用の仕組みを説明できるようにしておきましょう。

売却後、経営者はどうなりますか?

取引先との関係を引き継ぐため、一定期間、役員や顧問として会社に残ることを求められることが多くあります。特に、経営者自身が主な取引先との窓口になっている場合は、引き継ぎの期間を長めにとることが大切です。

ビルメンテナンス会社のM&Aは、契約と人材の引き継ぎがカギ

ビルメンテナンス会社のM&Aでは、長く続く管理の契約と、清掃や設備管理を担う人材が、会社の価値を大きく左右します。業務によっては許可や資格が必要なため、どの業務を行っているかを整理し、M&Aでの扱いを確認しておくことが大切です。

取引先との契約や労務管理の状況も含めて、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。

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