整骨院・整体院・鍼灸院のM&A|売却前に確認したい15項目のチェックリスト

整骨院・整体院・鍼灸院のM&A|売却前に確認したい15項目のチェックリスト

地域の方の健康を支えてきた整骨院・整体院・鍼灸院。院長が高齢になったり、体力の面で施術を続けるのが難しくなったりして、「自分がいなくなったら、通ってくれている患者さんはどうなるのだろう」と悩む方が増えています。

一方で、整骨院や鍼灸院は、院長本人の資格や技術、患者さんとの信頼関係に支えられている面が大きく、事業を引き継ぐときには、一般の会社にはない確認点があります。国家資格にかかわる届出や、保険の取り扱いの手続き、施術者の確保などです。

この記事では、整骨院・整体院・鍼灸院の売却や承継を考え始めた院長の方が、準備として確認しておきたい15項目を、チェックリスト形式でわかりやすく解説します。

※制度や手続きの内容は、地域や状況によって異なります。実際に手続きを進めるときは、管轄の保健所や、関係する窓口、専門家にご確認ください。

整骨院・整体院・鍼灸院は、何が違うのか

手の施術を行う様子
 

整骨院、整体院、鍼灸院は、売却の面でも違いがあるのでしょうか?

 
 

違いはあります。整骨院は柔道整復師、鍼灸院ははり師・きゅう師といった国家資格を持つ人が施術を行い、届出や保険の取り扱いなどの手続きがあります。整体院は、国家資格が必須ではない場合も多く、資格や届出の面での確認事項が少なくなる一方で、施術者個人の技術への依存が大きくなる傾向があります。

 
 

種類によって、確認する点が違うんですね!

 

おおまかな違いを整理すると、次のようになります。

種類主な資格売却で特に確認する点
整骨院(接骨院)柔道整復師(国家資格)施術所の届出、保険の取り扱い、施術管理者
鍼灸院はり師・きゅう師(国家資格)施術所の届出、資格者の確保、保険の取り扱いの有無
整体院・リラクゼーション国家資格は必須でないことが多い施術者の技術・ブランドへの依存、契約の内容

実際の手続きの内容は、事業の内容や地域によって違います。まずは、自分の院がどの制度のもとで運営されているかを、あらためて確認しましょう。

チェックリスト①:資格・届出・保険に関する確認(項目1〜3)

肩の施術を行う様子
 

整骨院を売却するとき、最初に確認すべきことは何でしょうか?

 
 

まずは、施術所の開設の届出と、保険を取り扱っている場合はその手続きがどうなっているかを確認することです。院長が変わったり、経営する会社が変わったりする場合に、新たな届出や申請が必要になることがあるため、早めに、管轄の窓口に確認しておきましょう。

 
 

売ったあとに「手続きが間に合わない」とならないように、先に調べておくんですね。

 

□ 項目1:施術所の開設の届出の内容を確認する

整骨院などの施術所は、開設したときに、保健所への届出が求められます。誰が開設者になっているのか、届出の内容が現在の状況と合っているかを、確認しておきましょう。個人で開設している場合と、会社として運営している場合とで、売却の方法も変わります。

□ 項目2:売却によって、新たな届出が必要になるかを確認する

院長が変わる場合は、新しい開設者として、新たに届出を行う必要があることがあります。株式譲渡で会社ごと売却する場合でも、施術を行う責任者や、管理者が変わるときには、変更の届出が必要になる場合があります。どの手続きが、いつまでに必要になるのかを、事前に確認しておきましょう。

□ 項目3:保険の取り扱いの手続きと、その要件を確認する

整骨院では、健康保険などを使って施術を行うために、地方の厚生局への申出や、承認の手続きがあります。開設者や施術管理者が変わると、その手続きが必要になることがあり、手続きの間は、保険を使った施術ができない期間が生じるおそれもあります。売却の前から、窓口に確認し、買手とも話し合っておく必要があります。

チェックリスト②:施術者・スタッフに関する確認(項目4〜6)

 

私が引退したあと、施術はどうなるのでしょうか? 院を続けてもらうには、何が必要ですか?

 
 

施術を続けるには、資格のある施術者が必要です。買手の側に、資格を持つ人がいるか、現在のスタッフが残ってくれるかを確認しましょう。院長が一人で施術してきた場合は、買手が資格者を確保できるかどうかが、売却が成立するかどうかを左右します。

 
 

資格を持つ人をどう確保するかが、大事なんですね!

 

□ 項目4:施術者の資格と人数を整理する

自分以外に、資格を持つ施術者が何人いるのか、いつまで働いてもらえるのかを整理します。資格者が院長だけの場合、買手は、院長が抜けたあとの体制を、自分で用意する必要があります。買手側に資格者がいない場合は、売却が難しくなることもあります。

□ 項目5:スタッフの雇用や業務委託の契約を確認する

スタッフが、雇用なのか、業務委託なのかによって、契約の扱いが違います。給与や報酬、勤務時間、休日、社会保険の加入状況を、一覧にして整理しましょう。株式譲渡であれば雇用契約は原則そのまま続きますが、事業譲渡の場合は、スタッフの同意が必要です。

□ 項目6:院長が引き継ぎにどのくらい関わるかを決める

売却後の一定期間、院長が顧問や施術者として残るのか、すぐに退くのかを、買手と相談します。患者さんの多くが、院長との関係で通っている場合は、引き継ぎの期間を長めにとる例が多くなります。

チェックリスト③:患者さん・売上に関する確認(項目7〜9)

 

患者さんが、私がいなくなったら来なくなってしまわないか不安です。

 
 

その不安は、多くの院長が感じるものです。買手も、患者さんが残ってくれるかを、特に気にします。売却の前から、ほかのスタッフが施術する機会を増やしたり、患者さんへの説明の方法を決めておいたりして、院全体で患者さんを支える体制をつくることが、評価につながります。

 
 

院長だけに頼らない形を、少しずつつくっておくんですね。

 

□ 項目7:患者数と通院の頻度の推移を、数字で整理する

月ごとの患者数、初めて来院した人の数、通院の回数、通院が途切れた人の数などを、できるだけ長い期間、まとめておきます。買手は、数字をもとに、売上の安定性や将来の見通しを判断します。

□ 項目8:売上の内訳を整理する(保険・自費・物販)

売上を、保険を使った施術、自費の施術、物販(サポーター、サプリメントなど)に分けて整理します。保険の施術の売上は、請求から入金までに時間がかかることがあるため、月ごとの入金の状況も、あわせて把握しておくことが大切です。

□ 項目9:患者さんの個人情報と、カルテの保管を確認する

患者さんの氏名、連絡先、症状、施術の記録は、重要な個人情報です。買手の候補にどの段階で、どの範囲を見せるのかを、慎重に決める必要があります。また、施術の記録は、一定の期間保管することが求められる場合があります。売却後の保管の方法や、記録の引き継ぎの方法についても、あらかじめ確認しておきましょう。

チェックリスト④:物件・設備に関する確認(項目10〜12)

 

テナントで営業しています。売却すると、賃貸借の契約はどうなりますか?

 
 

株式譲渡なら、賃借人は会社のままなので、契約はそのまま続くことが多いのですが、契約書に「経営者の変更があるときは、貸主に連絡する」「貸主の承諾が必要」といった条件がある場合があります。事業譲渡なら、賃借人を買手に変える手続きが必要で、貸主の承諾が欠かせません。

 
 

契約書の内容を、先に確認しておかないといけませんね。

 

□ 項目10:賃貸借契約の内容を確認する

契約の期間、賃料、保証金、更新の条件、原状回復の範囲、経営者や経営する会社が変わる場合の扱いを、契約書で確認します。貸主への連絡のタイミングは、仲介会社と相談しましょう。

□ 項目11:施術の機器・設備の状態を確認する

電気治療器、ベッド、温熱器具などの種類、台数、購入の時期、リースか自社所有かを、一覧にします。リースの場合は、契約を引き継げるか、リース会社の承諾が必要かを確認します。古くなった機器の更新の予定がある場合は、買手に説明できるようにしておきましょう。

□ 項目12:看板・広告・ホームページ・予約システムの権利を確認する

院の名前、ロゴ、ホームページ、予約システム、SNSのアカウント、口コミサイトの掲載などが、誰の名義になっているかを確認します。個人の名義になっているものや、外部の制作会社に管理を任せているものは、売却の対象に含めるために、名義の変更や契約の見直しが必要になる場合があります。

チェックリスト⑤:売却の進め方に関する確認(項目13〜15)

 

売却を進めるうえで、院長としてやっておくことは何でしょうか?

 
 

売却の目的と希望の条件を整理し、必要な書類をそろえ、信頼できる専門家に相談することです。希望がはっきりしていないと、買手との話し合いで迷いやすくなります。売却後の生活や、患者さんへの思いも含めて、何を優先するかを決めておきましょう。

 
 

自分の気持ちを整理するのも、準備の一つなんですね。

 

□ 項目13:売却の目的と、優先する条件を決める

「患者さんが困らないようにしたい」「スタッフの雇用を守りたい」「できるだけ高く売りたい」「早く引退したい」など、希望はさまざまです。すべてを満たすことは難しいため、優先順位を決めておくと、買手との話し合いが進めやすくなります。

□ 項目14:決算書・申告書など、数字の資料をそろえる

過去3年程度の決算書、確定申告書、月ごとの売上の推移、借入金の一覧、賃貸借契約書などを、手元にまとめておきます。個人で営んでいる場合は、事業の収支と、生活の費用が混ざっていないかも確認しましょう。

□ 項目15:複数の仲介会社に相談して、比べる

整骨院や鍼灸院などの医療に近い分野の売却は、仲介会社によって、得意かどうかや、買手の探し方に差があります。報酬の仕組みや、これまでの実績、担当者の説明のわかりやすさを、複数の会社で比べて、納得できる相手を選びましょう。

15項目のチェックリスト(まとめ)

最後に、15項目を一覧にまとめます。

分類確認する項目
資格・届出・保険□1 開設の届出の内容 □2 新たな届出の要否 □3 保険の取り扱いの手続き
施術者・スタッフ□4 資格者の人数 □5 雇用・業務委託の契約 □6 院長の引き継ぎの関わり方
患者・売上□7 患者数・通院の推移 □8 売上の内訳 □9 個人情報・カルテの保管
物件・設備□10 賃貸借契約 □11 機器・設備の状態 □12 看板・ホームページ・予約システムの権利
売却の進め方□13 売却の目的と優先条件 □14 数字の資料 □15 仲介会社の比較

よくある質問

Q. 院長一人の小さな院でも、売却できますか?

売却できる可能性はあります。患者さんの数、立地、設備、資格者の確保の見通しなどが、評価の対象になります。院長一人で運営している場合は、買手の側に資格者がいるか、引き継ぎの期間をどう設けるかが重要です。

Q. 保険を取り扱っていない整体院でも、売却は可能ですか?

可能な場合があります。国家資格の届出や保険の手続きが少ない分、手続きは比較的単純になる一方で、施術者の技術やブランドへの依存が大きいため、院長が引き継ぎにどう関わるかが、評価に大きく影響します。

Q. 売却の準備は、いつ頃から始めればいいですか?

体力や気力に余裕のあるうちに、できれば引退を考える数年前から、準備を始めるのがおすすめです。患者さんを少しずつ他の施術者に引き継ぐ取り組みは、短期間では難しいためです。

患者さんと院を守るために、早めの準備を

整骨院・整体院・鍼灸院の売却は、資格や届出、保険の手続き、施術者の確保、患者さんとの関係など、確認することが多く、準備に時間がかかります。しかし、早めに動き出せば、患者さんが通い続けられる環境を残すことも、スタッフの雇用を守ることも、可能性が広がります。

まずは、今回の15項目を使って、自分の院の状況を確認してみてください。そのうえで、必要に応じて、専門家や仲介会社に相談しましょう。

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