夫婦・家族で営む会社の売却|経営者と仲介会社の相談から学ぶ、準備と注意点
「夫婦二人で始めた会社が、気がつけば30年になった」「家族で力を合わせて、地域のお客様を支えてきた」。そのような、夫婦や家族で営む小さな会社は、日本の中小企業の中でも、大きな割合を占めています。
しかし、経営者の高齢化が進み、子どもが後を継がない場合には、「このまま閉めるのか、誰かに引き継ぐのか」という判断が必要になります。夫婦や家族で営んできた会社では、会社と家庭が深く結びついているため、売却の準備でも、特有の確認点がいくつもあります。
この記事では、夫婦で会社を営んできた経営者と、M&A仲介会社の担当者との相談の流れに沿って、売却の準備と注意点を解説します。
※この記事の相談の場面は、よくある相談をもとにした例です。
相談1:夫婦二人の小さな会社でも、売れますか?

従業員は数名で、妻と二人で切り盛りしてきた小さな会社です。こんな規模でも、買手は見つかるのでしょうか?
見つかる可能性はあります。小さな会社でも、お客様や取引先、技術、立地、許認可など、買手にとって価値のあるものがあれば、引き継ぎたいと考える会社や個人がいます。最近は、小規模な会社の売却を対象にした仲介会社やサービスも増えています。
小さな会社だからと、あきらめなくていいんですね!
ただし、会社の規模が小さいほど、「経営者や家族に頼っている部分」が大きくなりがちです。買手は、経営者や配偶者がいなくなったあとも、会社が続けられるのかを、特に注意して確認します。
相談2:妻が事務や経理をしています。売却後はどうなりますか?

経理や事務は、すべて妻が担当しています。売却後は、どうなるのでしょうか?
売却後の配偶者の働き方は、買手との話し合いで決まります。引き継ぎのために、一定の期間は残ってもらう場合もあれば、売却と同時に退職する場合もあります。大切なのは、「どの業務を、誰が、どのくらいの期間で引き継ぐのか」を、早めに整理しておくことです。
奥様の担当していた仕事も、引き継ぎの大切な部分なんですね!
夫婦で営む会社では、配偶者が、経理、事務、お客様の対応、従業員の相談役など、さまざまな役割を担っていることがよくあります。その仕事が、書類や手順として残っていないと、売却後に混乱が起きやすくなります。
配偶者の役割を書き出してみる
次のような表をつくって、仕事の内容を整理しておくと、引き継ぎの準備に役立ちます。
| 業務の内容 | 担当者 | 頻度 | 引き継ぎの方法 |
|---|---|---|---|
| 請求書の発行・入金の確認 | 妻 | 月1回 | 手順書をつくり、同行して説明 |
| 給与計算・社会保険の手続き | 妻 | 月1回 | 社会保険労務士や税理士との窓口を引き継ぐ |
| 電話・来客の対応 | 妻 | 毎日 | 取引先に新しい担当者を紹介する |
| 仕入れ先への発注 | 夫 | 週2回 | 発注の基準と、仕入れ先の一覧を渡す |
相談3:自宅と事務所が同じ建物なのですが、どうなりますか?
自宅の一部を、会社の事務所や作業場として使っています。売却するとき、自宅はどうなるのですか?
自宅と会社の資産が混ざっている場合は、売却の前に、何を売却の対象にして、何を経営者の個人の資産として残すのかを、はっきり分ける必要があります。必要に応じて、事務所や作業場だけを、買手に賃貸する方法もあります。
自宅が売却の対象になるわけではないんですね!
家族経営の会社では、次のような「会社と個人の境目があいまいなもの」が、よく見つかります。
- 自宅の一部を、事務所や倉庫として使っている
- 経営者個人の名義の土地や建物を、会社が使っている
- 経営者個人の車を、会社の業務に使っている
- 会社の通帳と、家計の通帳が、混ざって使われている
- 経営者の個人の電話番号やメールアドレスを、取引先との連絡に使っている
こうした点は、買手が確認するポイントになるため、売却の前に、一つずつ整理しておくことが大切です。
相談4:個人保証や、自宅の担保はどうなりますか?
会社の借入に、私が個人保証をしています。自宅も担保に入っているのですが、売却したらどうなるのですか?
M&Aでは、買手が経営を引き継ぐ際に、個人保証や担保を外すことを、条件として話し合うのが一般的です。ただし、金融機関の同意が必要になるため、必ず外せるとは限りません。早めに、仲介会社や金融機関と相談しておきましょう。
保証や担保を外す話し合いが、大切なんですね!
夫婦で会社を営んでいる場合、経営者だけでなく、配偶者が連帯保証人になっていることもあります。その場合は、配偶者の保証についても、あわせて確認する必要があります。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 保証人は誰か | 経営者のみか、配偶者や家族も含まれるか |
| 保証の対象 | どの借入や契約に、保証が付いているか |
| 担保の有無 | 自宅や土地に、担保が付いていないか |
| 外す方法 | 売却代金での返済や、買手による保証の引き継ぎなど |
個人保証の外し方については、条件によって対応が異なります。売却の手続きを進める前に、金融機関の担当者と、早めに話し合っておきましょう。
相談5:決算書の経費は、そのままで大丈夫ですか?
家族の車や食事の費用も、会社の経費にしています。決算書は、そのまま出して大丈夫でしょうか?
買手は、決算書をもとに会社の実態を確認するため、私的な支出が混ざっていると、説明が必要になります。売却の前に、会社の経費と、家計の支出を整理しておくと、会社の本当の利益が伝わりやすくなります。
公私を分けることが、評価にもつながるんですね!
家族経営の会社では、経営者や家族の私的な支出が、会社の経費に含まれていることがあります。買手は、その内容を確認したうえで、売却後に発生しない費用を調整して、会社の実態の利益を考えます。調整の内容を、書類で説明できるように準備しておくと安心です。
また、家族への給与についても注意が必要です。実際の仕事の内容に見合った金額かどうかが、確認されます。
相談6:取引先や従業員は、「社長個人」とのつながりが強いのですが…
お客様も従業員も、「私だから」という理由で付き合ってくれている気がします。売却後に離れてしまわないか、心配です。
その不安は、多くの経営者が感じるものです。買手は、「経営者の個人への依存」を、リスクとして見ます。売却の前に、取引先との関係を、少しずつ会社全体の関係に広げておくと、評価が変わる可能性があります。
社長だけに頼らない体制づくりが大切なんですね!
次のような取り組みは、経営者への依存を減らすために、売却の前からでも始められます。
- 取引先との窓口を、複数の従業員にも担当してもらう
- 取引先との契約の内容や、やりとりの記録を、書類にまとめる
- 仕事の手順を、マニュアルや写真で残しておく
- 経営者が不在でも、現場が動く日をつくってみる
- 重要な取引先には、売却後の引き継ぎについて、条件が整った段階で、丁寧に説明する
相談7:売却後、夫婦でどんな生活ができますか?
売却したあと、私たち夫婦の生活はどう変わりますか?
売却代金で、老後の資金を確保できる場合があります。一方で、仕事が生活の中心だった経営者は、売却後に時間を持て余したり、夫婦の過ごし方が変わったりすることもあります。売却後の暮らしを、夫婦で事前に話し合っておくことが大切です。
お金だけでなく、毎日の過ごし方も考えておくんですね!
売却後には、次のような点を、夫婦で話し合っておくと安心です。
| 話し合うこと | 内容の例 |
|---|---|
| お金 | 売却代金の使い道、老後の生活費、税金の支払い |
| 仕事 | 引き継ぎの期間の働き方、売却後に続けたいことや新しい挑戦 |
| 住まい | 現在の住まいに住み続けるか、住み替えるか |
| 健康・介護 | 将来の医療や介護の備え |
| 相続 | 売却代金の、子どもや家族への引き継ぎ方 |
相談8:誰に、いつ相談すればいいですか?
売却を考え始めたのですが、まず誰に相談すればいいでしょうか?
まずは、夫婦や家族で、会社の将来について話し合うことが第一歩です。そのうえで、顧問の税理士や、M&A仲介会社などの専門家に相談しましょう。相談は無料の仲介会社も多く、売却を決めていない段階でも、話を聞いてもらえます。
決めていなくても、相談していいんですね!
売却を考え始めてから実際に成約するまでには、半年から1年以上かかることもあります。体力や判断力に余裕のあるうちに、早めに動き出すことが、納得のいく売却につながります。
相談9:子どもや親族に、あとから反対されないか心配です
子どもは継がないと言っていますが、売却を決めたあとで、親族から反対されないか心配です。
売却の話は、決めてから伝えるのではなく、早めに家族で共有しておくほうが安心です。会社の状況や、売却を考える理由、売却後の暮らしの見通しを丁寧に説明すると、理解を得られやすくなります。株式を親族が持っている場合は、売却に同意してもらう手続きも必要になります。
株を持っている家族にも、きちんと話しておくことが大切なんですね!
家族経営の会社では、株式が経営者だけでなく、配偶者や子ども、兄弟などの名義になっていることがあります。株式譲渡で売却する場合は、株主全員の同意や手続きが必要になることがあるため、誰がどのくらい株を持っているかを、事前に確認しておきましょう。
相談10:売却がうまくいかなかったら、どうなりますか?
買手が見つからなかった場合は、どうすればいいのでしょうか?
条件を見直して、もう一度探す方法や、時間をかけて会社の状態を整えてから再挑戦する方法があります。それでも難しい場合は、従業員への承継や、廃業の準備を、計画的に進めることになります。早めに動き出しておけば、選べる道が増えます。
早く始めるほど、選択肢が広がるんですね!
夫婦・家族で営む会社の売却の進め方
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 夫婦・家族で話し合う | 会社の将来と、売却後の暮らしの希望を共有する |
| 2. 会社と個人を分ける | 自宅・車・通帳・経費などの境目を整理する |
| 3. 役割を書き出す | 夫婦それぞれの仕事を、手順書や一覧にまとめる |
| 4. 専門家に相談する | 税理士や仲介会社に、状況を伝えて助言を受ける |
| 5. 買手を探し、条件を話し合う | 保証の扱い、引き継ぎの期間、従業員の待遇を確認する |
| 6. 引き継ぎを行う | 取引先へのあいさつや、業務の引き継ぎを進める |
夫婦・家族経営の売却は、「会社と家庭の線引き」がカギ
夫婦や家族で営む会社の売却では、配偶者の役割の整理、自宅や経費などの公私の線引き、個人保証の扱い、経営者個人への依存を減らすことが、大きなポイントです。小さな会社でも、お客様や技術、地域との関係に価値があれば、引き継ぎたいと考える買手が見つかる可能性があります。
夫婦や家族で十分に話し合い、早めに専門家に相談することが、売却を成功させるポイントです。
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