クリーニング店のM&A|売却を考える経営者が知っておきたい7つの疑問と進め方

クリーニング店のM&A|売却を考える経営者が知っておきたい7つの疑問と進め方

地域の暮らしに欠かせない存在であるクリーニング店。長年、同じお客様の衣類を預かり、仕上げてきた店ほど、地域からの信頼も厚いものです。

しかし、家庭用洗濯機の性能の向上や、洗える衣類の増加、ライフスタイルの変化によって、クリーニングの利用は以前より減っているといわれます。設備の老朽化や、働き手の高齢化、後継者不足といった悩みを抱える経営者も多く、「店を閉めるしかないのか」と迷う声も聞かれます。

そのような中で、地域のお客様や従業員を守りながら店を引き継ぐ方法として、M&Aが選ばれることがあります。この記事では、クリーニング店の売却を考える経営者が抱きやすい7つの疑問に答えながら、買手が見るポイントや進め方の注意点を解説します。

疑問1:クリーニング店は、本当に売れるのですか?

洗い上がった衣類
 

洗濯の需要が減っている中で、私のような小さなクリーニング店でも買手は見つかるのでしょうか?

 
 

見つかる可能性は十分にあります。クリーニング業は、すでにお客様がついている店を引き継げば、すぐに売上を見込めるという魅力があります。特に、同じ地域で店舗を増やしたい同業者や、取次店の数を広げたい工場を持つ会社が、買手の候補になります。

 
 

お客様がついていることが、そんなに大きな価値になるんですね!

 

クリーニング店のM&Aが検討される主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:家族で営んできた店で、子どもが継がないケースが増えている
  • 需要の変化:洗える衣類の増加などで、利用の回数や単価が下がっている
  • 設備の老朽化:洗濯機や乾燥機、プレス機などの更新に、まとまった費用がかかる
  • 人手の確保:仕上げの技術を持つ従業員の高齢化や、人材の不足
  • 規模の拡大を狙う会社の存在:複数の店舗や取次店をまとめて、効率よく運営したい会社がある

疑問2:買手は、どこを見て評価するのですか?

きれいに仕上がったタオル
 

売却を考えるとき、買手はクリーニング店のどこを評価するのでしょうか?

 
 

主に、安定した売上、お客様の数や層、立地、設備の状態、従業員の技術と定着の状況を見ます。特に、法人のお客様(制服や作業着、ホテルのリネンなど)が多い店は、安定した売上が見込めるため、評価されやすい傾向があります。

 
 

個人のお客様だけでなく、法人の取引も強みになるんですね。

 

評価されやすいポイントを、表に整理します。

見られるポイント評価されやすい状態注意が必要な状態
売上の安定性常連のお客様が多く、売上の変動が小さい特定のお客様や季節に偏っている
お客様の層個人と法人のバランスが良い売上の大半が1社に集中している
立地駅や住宅地が近く、車で寄りやすい周辺の人口が減っている
設備定期的に整備・更新されている老朽化していて、更新の見通しがない
従業員仕上げの技術者が複数いて、定着している経営者本人にしか技術がない
取次店取次の契約や、受け渡しの流れが整っている契約の内容が曖昧で、記録が残っていない

疑問3:クリーニング師などの資格は、売却に影響しますか?

 

クリーニング業には、資格や届出が必要だと聞きます。売却のときには、どんな点に気をつければよいのでしょうか?

 
 

クリーニング業は、法律で営業施設の開設の届出や、洗濯物の処理に関わるクリーニング師の配置などが求められる業種です。M&Aの方法によって、届出が必要になるかどうかが変わる場合があります。具体的な手続きは自治体の窓口によって異なることもあるため、早めに保健所などに確認しておきましょう。

 
 

売却の方法によって、手続きも変わるかもしれないんですね。

 

確認しておきたい主な項目は、次の通りです。

  • 営業施設の届出:店舗や工場の開設について、行政への届出の内容が現在の状況と合っているか
  • クリーニング師の配置:必要な資格を持つ従業員が、売却後も在籍するか
  • 使用している溶剤や薬品の管理:保管の状況や、記録が整っているか
  • 排水や廃棄物の処理:決まりを守った処理が行われているか
  • 衛生に関する基準:施設の衛生管理が基準を満たしているか

経営者本人がクリーニング師の資格を持ち、ほかに有資格者がいない場合は、売却後の体制を買手と相談しておく必要があります。

疑問4:株式譲渡と事業譲渡、どちらで売るのがよいですか?

 

売却の方法には、いくつか種類があると聞きました。クリーニング店では、どちらが向いていますか?

 
 

会社の形で営んでいる場合は、株式譲渡が選ばれることが多いです。会社そのものが引き継がれるため、営業の届出や、従業員との契約、取引先との契約が、そのまま続きやすいからです。一方、個人事業の場合や、店舗の一部だけを売る場合は、事業譲渡になります。ただし、どちらが良いかは、会社の状況や税金によって変わります。

 
 

会社か個人かで、選べる方法も変わるのですね。

 
方法特徴注意点
株式譲渡会社ごと引き継ぐため、契約や届出が続きやすい簿外の債務なども引き継ぐことになる
事業譲渡譲渡する資産や従業員を選べる届出や契約の切り替えなどの手間が増える

疑問5:店舗や設備は、どう扱われますか?

 

店舗は借りていて、洗濯機などの設備もかなり古くなっています。それでも売却はできますか?

 
 

できる可能性はあります。ただし、店舗を借りている場合は、貸主の承諾が必要になることがあります。設備については、古くても動いていれば価値がありますが、近い将来に更新が必要なら、その費用を買手が価格に反映させることもあります。設備の購入時期や、点検・修理の記録を整理しておくと、話がスムーズに進みます。

 
 

設備の記録を残しておくことも、大事な準備なんですね。

 

設備まわりで準備しておきたいことは、次の通りです。

  • 洗濯機、乾燥機、プレス機などの、購入時期と型式の一覧
  • 点検や修理の記録
  • リース契約の有無と、残りの期間・金額
  • 店舗の賃貸借契約書と、更新の時期
  • 工場や店舗の土地・建物の名義(自社か、社長個人か)

疑問6:取次店やお客様との関係は、引き継げますか?

 

うちの工場には、コンビニや他の店からの取次の依頼もあります。こうした関係は、売却したあとも続くのでしょうか?

 
 

取次店との契約の内容によって変わります。契約に「経営者が変わった場合の取り決め」が書かれていることもあるため、売却の前に契約書を確認しておくことが大切です。お客様についても、売却後に急にサービスが変わると、不安を感じて離れてしまうことがあります。引き継ぎの期間を設けて、経営者が一緒に挨拶に回る方法が、よく使われます。

 
 

お客様への伝え方も、売却の大切なポイントなんですね。

 

売却後も信頼を保つための工夫

  • 料金や受け取りの時間、仕上がりの水準をできるだけ変えない
  • 引き継ぎの期間に、経営者が一緒に店に立つ
  • 常連のお客様には、あらかじめお知らせをする
  • 法人のお客様には、経営者が直接あいさつに伺う
  • 従業員にも、売却後の待遇について丁寧に説明する

疑問7:売却までの流れと期間は、どのくらいですか?

 

売却を決めたら、どのくらいの期間がかかりますか?

 
 

一般に、相談から売却の完了まで、半年から1年程度かかることが多いです。クリーニング店の場合は、設備の確認や届出の確認があるため、準備に時間をかけるほど、スムーズに進みやすくなります。

 
 

半年から1年ですね。早めに準備を始めておけば安心です。

 

流れの例は、次の通りです。

  1. 相談・仲介会社の選定:複数の仲介会社に相談し、費用や得意分野を比べる
  2. 資料の準備:決算書、設備の一覧、取引先の一覧、契約書などを整理する
  3. 買手の候補探し:会社名を伏せた資料で、候補の会社に打診する
  4. 面談・条件の交渉:売却価格や従業員の処遇、引き継ぎの期間を話し合う
  5. 基本合意・調査:基本的な条件で合意し、買手が内容を確認する
  6. 最終契約・クロージング:契約を結び、代金の受け取りと引き継ぎを行う

売却前に準備しておきたいこと

クリーニング店の売却では、次の準備をしておくと、買手からの評価につながりやすくなります。

  • 決算書と売上の内訳の整理:個人のお客様、法人のお客様、取次の売上に分けておく
  • 設備の台帳づくり:購入時期や修理の履歴をまとめる
  • 従業員の役割の見える化:誰がどの工程を担当しているかを整理する
  • 経営者本人の仕事の洗い出し:売却後に引き継ぐべき仕事を書き出す
  • 簿外のお金や個人との貸し借りの整理:会社と社長個人のお金の出入りを明確にする

よくある質問

Q1. 従業員が数人だけの小さな店でも、相談できますか?

相談できます。小規模な店でも、立地やお客様の数、技術を持つ従業員の存在が評価されることがあります。まずは複数の仲介会社に相談し、売却の可能性や費用を確認しましょう。

Q2. 工場を持たず、取次だけの店舗でも売れますか?

売れる可能性はあります。ただし、取次の店舗は、工場側との契約に大きく左右されます。売却する際は、工場との取引条件が引き継げるかを、事前に確認しておくことが大切です。

Q3. 赤字でも売却できますか?

赤字でも、立地やお客様、設備、従業員に価値があれば、売却できる場合があります。ただし、価格は下がりやすいため、売却の前に、無駄な費用の見直しなどで、できる範囲の改善をしておくことがおすすめです。

Q4. 売却したあとも、店で働き続けられますか?

買手との話し合いによっては、一定の期間、顧問や相談役として店に関わることも可能です。引き継ぎ期間や役割は、契約の前に具体的に決めておきましょう。

Q5. 店舗の賃貸契約は、そのまま引き継げますか?

貸主の承諾が必要な場合があります。契約書の内容を確認し、売却を進める早い段階で、貸主に相談しておくと安心です。

Q6. 従業員には、いつ伝えればよいですか?

一般に、買手の候補が決まり、基本的な条件で合意したあとが目安です。早すぎると不安が広がり、遅すぎると不信感につながります。伝え方やタイミングは、仲介会社とも相談して決めましょう。

まとめ

クリーニング店のM&Aは、地域のお客様や従業員を守りながら、店を次の経営者に引き継ぐ有力な選択肢です。

  • すでに常連のお客様がいることが、大きな強みになる
  • 営業施設の届出やクリーニング師の配置は、売却の方法によって手続きが変わることがあるため、保健所などへ早めに確認する
  • 設備の記録や、取次店との契約書を整理しておくと、話が進めやすい
  • 売却は半年から1年程度かかることが多く、早めの準備が大切

「後継者がいないから、閉めるしかない」と決めてしまう前に、まずは複数のM&A仲介会社に相談して、売却の可能性を確かめてみてはいかがでしょうか。

「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「長年通ってくださったお客様のために、店を次の世代へ引き継ぎたい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。