従業員5人・30人・100人で何が違う?会社の規模別に見る、会社売却の進め方と相談先
「うちのような小さな会社でも、売れるのだろうか」
会社の売却を考え始めた経営者から、よく聞かれる言葉です。M&Aというと、大きな会社同士の取引を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし実際には、従業員が数人の会社や、個人で営んできた事業でも、M&Aで引き継がれる例は増えています。
ただし、会社の規模によって、買手の探し方や相談先、売却価格の考え方、準備で気をつけることは変わってきます。小さな会社が大きな会社と同じ進め方をしようとすると、費用が見合わなかったり、相談先が見つからなかったりすることもあります。
この記事では、会社の規模を「従業員5人前後」「従業員30人前後」「従業員100人前後」の3つに分けて、それぞれの進め方の違いを比べながら解説します。ご自身の会社に近い規模のところから読んでみてください。
※この記事の区分は、分かりやすくするための目安です。同じ従業員数でも、業種や売上、利益によって進め方は変わります。
規模によって、何が変わるのか

会社の規模によって、売却の進め方はそんなに変わるのですか?
はい。主に、買手の候補になる会社の種類、相談に向いている窓口、売却価格の幅、そして買手が重視するポイントが変わります。仲介会社の手数料には最低報酬額があることが多いため、規模に合った相談先を選ぶことも大切です。
自分の会社の規模に合った進め方を知っておく必要があるんですね!
規模によって変わる主なポイントを、先に一覧で見ておきましょう。
| ポイント | 従業員5人前後 | 従業員30人前後 | 従業員100人前後 |
|---|---|---|---|
| 主な買手 | 同業の小さな会社、個人、近くの会社 | 同業の中堅企業、地域の会社 | 中堅・大手企業、投資ファンド |
| 向いている相談先 | 公的な相談窓口、マッチングサイト、小規模向けの仲介会社 | 中小企業向けの仲介会社 | 中堅企業に強い仲介会社、FA |
| 買手が重視すること | 経営者の技術や取引先が残るか | 組織と取引先の安定性 | 管理の体制、成長の見込み |
| 準備で特に大切なこと | 経営者に頼る部分を減らす | 幹部の育成と書類の整理 | 管理の体制と規程の整備 |
従業員5人前後の会社:経営者の「人」に価値が集まる

従業員が5人ほどの小さな会社でも、本当に買手は見つかりますか?
見つかる可能性はあります。小さな会社では、同じ業種の会社が人手や取引先を増やすために引き継いだり、独立したい個人が買手になったりすることもあります。ただし、経営者に頼っている部分が大きいほど、引き継ぎの難しさを心配されやすくなります。
小さな会社ならではの買手もいるんですね!
小さな会社の特徴
従業員5人前後の会社では、経営者自身が営業も現場も経理もこなしている、ということがよくあります。取引先との関係も、経営者個人の信頼で成り立っていることが多いため、買手は「経営者がいなくなっても、事業が続くのか」を最も気にします。
相談先の選び方
小さな会社の売却では、大手の仲介会社の最低報酬額が、売却価格に見合わないことがあります。そのため、次のような相談先も検討しましょう。
- 事業承継・引継ぎ支援センター:国が各都道府県に設けている公的な相談窓口
- M&Aのマッチングサイト:売手と買手がインターネット上で相手を探せるサービス
- 小規模な案件に対応する仲介会社:最低報酬額が低めの会社
- 地域の金融機関や商工会議所:地域の買手の候補を紹介してもらえることがある
準備のポイント
- 経営者しか知らない仕事の手順や、取引先との約束を書き出しておく
- 取引先に、少しずつ社員を担当として紹介しておく
- 売却後も一定期間、手伝う期間を設ける心づもりをしておく
- 会社のお金と経営者個人のお金を、はっきり分けておく
従業員30人前後の会社:組織としての安定性が問われる
従業員が30人ほどの会社では、どのような点が評価されますか?
この規模になると、経営者だけでなく、現場を任せられる幹部がいるかどうかが大きなポイントになります。取引先が分散しているか、利益が安定しているかも、詳しく確認されます。
経営者の右腕になる人がいることが、評価につながるんですね!
中くらいの規模の会社の特徴
従業員30人前後の会社は、中小企業のM&Aでよく見られる規模です。同じ業種の中堅企業が、地域や取引先を広げるために買手になることが多く、買手の候補も比較的見つけやすい規模といえます。
一方で、経営者が営業の中心を担っていたり、幹部が育っていなかったりすると、売却後の経営に不安があると見られることがあります。
相談先の選び方
この規模では、中小企業のM&Aを数多く手がける仲介会社が、主な相談先になります。仲介会社によって得意な業種や地域、手数料の仕組みが異なるため、複数の会社に相談して比べることが大切です。
準備のポイント
- 現場や営業を任せられる幹部を育て、役割を決めておく
- 取引先ごとの売上の割合を整理し、偏りがあれば分散を図る
- 就業規則や雇用契約書、残業代の支払いなど、労務の管理を整える
- 直近3期分の決算書と、主な契約書をそろえておく
従業員100人前後の会社:管理の体制と成長の見込みが見られる
従業員が100人ほどの会社では、売却の進め方はどう変わりますか?
買手の候補に、大手企業や投資ファンドが加わることが多くなります。買手の調査も詳しくなり、管理の体制や規程が整っているか、今後の成長の見込みがあるかなどが、詳しく確認されます。
会社が大きくなるほど、調べられることも増えるんですね!
規模の大きい会社の特徴
従業員100人前後の会社では、売却価格が大きくなることが多く、買手の候補も広がります。同じ業種の大手企業が、新しい地域や事業に進出するために買手になるほか、投資ファンドが、経営を支援して会社を成長させる目的で買手になることもあります。
投資ファンドが買手の場合は、数年後にさらに別の会社に売ることを前提にしていることが多いため、売却後の経営の方針や、経営者が残るかどうかなどを、よく確認しておきましょう。
相談先の選び方
この規模では、中堅企業の案件に強い仲介会社のほか、売手だけの立場で助言するFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に依頼することもあります。複数の買手の候補を比べて条件を競わせる「入札」の形で進めることもあります。
準備のポイント
- 経理や人事などの管理の体制を整え、月ごとの数字をすぐに出せるようにする
- 社内の規程や、子会社・関連会社との取引の関係を整理する
- 事業計画を作り、今後の成長の見込みを説明できるようにする
- 法律や税金、労務の専門家による事前の確認も検討する
売却価格は、規模によってどう変わる?
会社が大きいほど、売却価格も高くなるのですか?
一般的には、利益が大きいほど売却価格も大きくなります。ただし、従業員の数そのものではなく、利益をどのくらい安定して出せるか、会社にどのくらい財産があるかが価格を決める中心です。小さな会社でも、利益率が高く、強みがはっきりしていれば、評価されることがあります。
人数よりも、利益の力が大切なんですね!
中小企業の売却価格は、会社の純資産に、事業が生み出す利益の数年分を加えて考える方法がよく使われます。そのため、規模よりも次のような点が価格に影響します。
- 毎年の利益が安定しているか
- 経営者がいなくても利益を出せる仕組みがあるか
- 取引先や従業員が、売却後も残る見込みがあるか
- 借入金と比べて、会社の財産がどのくらいあるか
手数料と費用は、規模に合わせて考える
仲介会社の手数料は、売却価格などに料率をかけて計算することが多い一方で、最低報酬額が決められていることがよくあります。売却価格が小さい会社ほど、最低報酬額の影響が大きくなり、手数料の割合が高くなることがあります。
| 規模の目安 | 手数料で気をつけたいこと |
|---|---|
| 従業員5人前後 | 最低報酬額が売却価格に見合うか。公的な窓口やマッチングサイトも検討する |
| 従業員30人前後 | 着手金や中間金の有無、成功報酬の計算の基準を比べる |
| 従業員100人前後 | 仲介とFAのどちらにするか、専門家の調査の費用も含めた総額で考える |
規模に関係なく大切なこと
規模に関係なく、共通して大切なことはありますか?
「早めに準備を始めること」と「複数の相談先を比べること」です。どの規模の会社でも、経営者に頼りすぎない体制をつくり、書類を整えておくことで、売却を有利に進めやすくなります。
規模は違っても、基本は同じなんですね!
- 経営者に頼りすぎない体制をつくる:仕事や取引先との関係を、社員に引き継いでおく
- お金と書類を整える:会社と経営者個人のお金を分け、決算書や契約書をそろえておく
- 複数の相談先を比べる:規模に合った相談先を選び、提案や費用を比べる
- 時間に余裕を持つ:引退したい時期の2〜3年前から準備を始める
よくある質問
従業員がいない、一人だけの会社でも売れますか?
一人だけの会社でも、取引先や技術、許認可、店舗の立地などに価値があれば、引き継がれることはあります。ただし、経営者がいなくなると事業が続かない場合は、売却後も一定期間、手伝うことを求められることが多くあります。
売上は大きいのですが、利益が少ない場合はどうなりますか?
売上が大きくても、利益が少ない場合は、売却価格が思ったほど高くならないことがあります。利益が少ない原因が、経営者の役員報酬や一時的な費用によるものなら、その点を整理して説明することで、会社の本当の力を伝えやすくなります。
規模が小さいと、仲介会社に相談を断られることはありますか?
仲介会社によっては、一定以上の規模の会社を対象にしていることがあります。その場合でも、小さな案件を得意とする仲介会社や、公的な相談窓口、マッチングサイトなど、ほかの相談先があります。一つの窓口で断られても、あきらめずに別の相談先を探しましょう。
会社を大きくしてから売ったほうがいいですか?
会社を大きくすれば売却価格が上がる可能性はありますが、そのための時間や投資が必要です。経営者の年齢や体力、後継者の有無なども含めて考えることが大切です。今の規模で売却した場合の価格の目安を知ったうえで、判断するのがおすすめです。
会社の規模に合った進め方で、納得のいく売却を
会社売却の進め方は、会社の規模によって変わります。従業員5人前後の会社では経営者に頼る部分を減らすこと、30人前後の会社では幹部の育成と書類の整理、100人前後の会社では管理の体制と成長の見込みを示すことが、特に大切です。
どの規模の会社でも、規模に合った相談先を選び、複数の提案を比べることが、納得のいく売却への近道です。
「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。
「うちの会社の規模に合った相談先を知りたい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。