50代・60代・70代で何が違う?年代別に考える事業承継と会社売却の進め方
「事業承継は、まだ先の話」
そう考えている経営者は少なくありません。しかし、事業承継には、後継者を探したり育てたり、会社を売る準備をしたりと、思っている以上に時間がかかります。
また、経営者の年代によって、選べる方法や、急いで取り組むべきことは変わってきます。50代であれば時間をかけて準備できることも、70代になってからでは、限られた時間の中で進めなければなりません。
この記事では、経営者の年代を「50代」「60代」「70代以上」の3つに分けて、それぞれの年代で考えておきたいことと、具体的な進め方を解説します。ご自身の年代のところから読んでみてください。
事業承継には、どのくらいの時間がかかる?

事業承継には、どのくらいの時間がかかるのですか?
方法によって大きく異なります。親族や社員に引き継ぐ場合は、後継者を育てるのに5年から10年かかることもあります。M&Aで第三者に引き継ぐ場合でも、準備から成約、引き継ぎまで、1〜2年ほどかかるのが一般的です。
思っていたより、ずっと長い時間が必要なんですね!
| 承継の方法 | 準備から完了までの目安 | 主な時間がかかること |
|---|---|---|
| 親族への承継 | 5〜10年 | 後継者の育成、株式の移転、相続の対策 |
| 社員への承継 | 3〜10年 | 後継者の育成、株式を買う資金の準備 |
| M&A(第三者への承継) | 1〜2年 | 買手探し、交渉、引き継ぎ |
この時間を逆算すると、「引退したい年齢」から何年前に動き始めればよいかが見えてきます。
50代:選択肢がいちばん多い時期

50代の経営者は、何を考えておけばいいですか?
50代は、親族への承継、社員への承継、M&Aのどれを選ぶにも、時間の余裕がある時期です。まずは、どの方法で会社を引き継ぐかの方向性を考え、会社の磨き上げを始めるのに最適なタイミングです。
時間に余裕があるうちに、方向性を決めておくのが大切なんですね!
50代でやっておきたいこと
- 承継の方向性を考える:子どもや社員に継ぐ意思があるかを確認し、継ぐ人がいなければM&Aも選択肢に入れる
- 後継者の育成を始める:親族や社員に継がせる場合は、少しずつ仕事を任せていく
- 会社の磨き上げを始める:利益を出せる体質をつくり、経営者に頼りすぎない組織にする
- 会社の価値の目安を知る:仲介会社などに相談して、今の会社の価値を知っておく
50代ならではの強み
50代で売却や承継を考え始める最大の強みは、「急がなくてよい」ことです。業績が良いときを選んで売ることもできますし、条件の合う買手が見つかるまで、じっくり待つこともできます。また、売却後に別の事業を始めたり、新しいことに挑戦したりする時間も十分にあります。
60代:承継を実行に移す時期
60代の経営者は、どのように進めればいいですか?
60代は、考えてきた承継を、実際に動かし始める時期です。後継者が決まっているなら引き継ぎを本格的に進め、決まっていないなら、M&Aを含めて具体的な相談を始めることをおすすめします。
考える時期から、動く時期に変わるんですね!
60代でやっておきたいこと
- 後継者を決める:親族や社員に継ぐ人がいるかを、はっきりさせる
- 具体的な相談を始める:後継者がいない場合は、仲介会社などに相談し、M&Aの準備を進める
- 株式の整理をする:株式が分散している場合は、経営者のもとに集める
- 個人保証の扱いを考える:会社の借入金の個人保証を、どのように外すかを考える
- 引退後の生活を考える:引退後の生活資金や、やりたいことを考える
60代で気をつけたいこと
60代になると、「まだ元気だから」と承継を先延ばしにしがちです。しかし、後継者の育成やM&Aの準備には時間がかかるため、60代のうちに動き始めないと、70代になってから慌てることになります。体力や気力が十分にあるうちに、交渉や引き継ぎに取り組むことが大切です。
70代以上:残された時間を意識して進める時期
70代になってからでも、事業承継は間に合いますか?
はい、間に合います。ただし、時間に限りがあるため、できるだけ早く専門家に相談し、具体的に動き始めることが大切です。健康や相続への備えも、あわせて考えておく必要があります。
今からでも遅くないけれど、急ぐ必要があるんですね!
70代以上でやっておきたいこと
- すぐに専門家に相談する:M&Aの仲介会社や、事業承継の公的な相談窓口に相談する
- 会社の情報をまとめる:決算書、契約書、株主名簿、取引先の一覧などを整理しておく
- 会社のことを知る人をつくる:経営者にもしものことがあっても、会社が回るよう、社員や家族に情報を共有しておく
- 相続への備えをする:会社の株式をどうするか、家族と話し合っておく
健康と判断能力への備え
70代以上の経営者にとって大切なのは、健康に万が一のことがあった場合への備えです。経営者が急に倒れたり、判断能力が衰えたりすると、株主として会社の大切なことを決められなくなり、会社の売却や承継を進められなくなるおそれがあります。
こうした事態に備えて、家族信託や遺言などの方法を、専門家と相談しておくことも検討しましょう。
40代以下の経営者は?
40代以下の経営者でも、会社の売却を考えることはありますか?
はい。若い経営者が、新しい事業に挑戦するためや、大きな会社のグループに入って事業を伸ばすために、会社を売却することも増えています。引退のための売却とは目的が違うため、売却後の働き方も含めて考えることが大切です。
年齢に関係なく、売却は一つの選択肢なんですね!
40代以下の経営者が会社を売る場合は、売却後も一定期間、経営者として会社に残り、事業の成長に関わることを求められることが多くあります。売却後にどのように働きたいのか、新しい事業を始めるのかなど、自分のこれからのキャリアもあわせて考えておきましょう。
年代ごとに変わる「相談相手」
年代によって、相談しておきたい相手も変わってきます。
| 年代 | 相談しておきたい相手 |
|---|---|
| 50代 | 家族(後継者の意思)、顧問税理士、M&A仲介会社(会社の価値を知る) |
| 60代 | 後継者候補、金融機関(個人保証)、M&A仲介会社(具体的な準備) |
| 70代以上 | M&A仲介会社や公的な相談窓口(すぐに動く)、弁護士・司法書士(相続や家族信託) |
一人で抱え込まずに、それぞれの段階で専門家の力を借りることで、限られた時間を有効に使うことができます。
年代別のまとめ
| 年代 | この時期の位置づけ | 主にやること |
|---|---|---|
| 50代 | 選択肢が多い準備の時期 | 方向性を考える、後継者の育成、会社の磨き上げ |
| 60代 | 承継を実行に移す時期 | 後継者を決める、M&Aの相談、株式・保証の整理 |
| 70代以上 | 時間を意識して進める時期 | すぐに相談、情報の整理、健康と相続への備え |
どの年代でも共通して大切なこと
年代に関係なく、大切なことはありますか?
「早めに相談すること」です。相談したからといって、すぐに会社を売らなければならないわけではありません。今の会社の価値や、選べる方法を知っておくだけでも、そのあとの判断がしやすくなります。
まずは相談して、知ることから始めればいいんですね!
どの年代でも、次の3つは共通して大切です。
- 会社の価値を知っておく:今売ったらどのくらいになるのかを知ることで、計画が立てやすくなる
- 家族と話しておく:子どもに継ぐ意思があるか、家族がどう考えているかを確認する
- 会社を「売れる状態」にしておく:利益を出し、書類を整え、経営者に頼りすぎない組織にしておく
よくある質問
子どもが継ぐかどうか、まだ決まっていません。どうすればいいですか?
まずは、子ども本人の意思を確認することが大切です。継ぐ意思がはっきりしない場合は、親族への承継とM&Aの両方を視野に入れて、並行して準備を進めることもできます。M&Aの相談をしたからといって、必ず売らなければならないわけではありません。
業績が悪いときに承継を考えるのは、遅いですか?
業績が悪いときは、売却の条件が厳しくなりやすいのは事実です。ただし、何もしないまま業績がさらに悪くなると、選べる方法がもっと少なくなります。業績が悪いときこそ、早めに専門家に相談して、選べる方法を確認しておきましょう。
70代で後継者がいない場合、M&Aと廃業のどちらがいいですか?
一概には言えませんが、廃業すると、従業員の雇用や取引先との関係が失われるうえ、設備の処分などに費用がかかることがあります。M&Aであれば、会社を残しながら、売却代金を受け取れる可能性があります。廃業を決める前に、一度M&Aの可能性を確認してみることをおすすめします。
何歳までに承継を終えるのが理想ですか?
決まった年齢はありませんが、経営者が元気なうちに、引き継ぎまで終えておくことが理想です。売却や承継のあとも、一定期間は後継者や買手のサポートをすることが多いため、その期間も含めて、体力と気力に余裕のあるうちに完了できるよう計画を立てましょう。
年代に合わせた準備で、納得のいく承継を
事業承継や会社売却は、経営者の年代によって、選べる方法や急ぐべきことが変わります。50代は方向性を考えて準備を始める時期、60代は承継を実行に移す時期、70代以上は時間を意識して早めに動く時期です。
どの年代でも、早めに相談して、会社の価値や選べる方法を知っておくことが、納得のいく承継への第一歩です。
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