会社売却で後悔しやすい7つのケース|売ったあとに「こんなはずでは」とならないための対策

会社売却で後悔しやすい7つのケース|売ったあとに「こんなはずでは」とならないための対策

会社の売却は、経営者にとって人生の大きな節目です。長年育ててきた会社を次の経営者に託し、新しい生活を始めることに、期待を感じる方も多いでしょう。

一方で、売却したあとに「こんなはずではなかった」と後悔する経営者がいるのも事実です。その多くは、売却の前に確認しておけば防げたことです。

この記事では、会社を売ったあとに後悔しやすいケースを7つ取り上げ、なぜそうなったのか、どうすれば防げたのかを解説します。これから売却を考える方は、自分の会社に当てはまるものがないか、確認しながら読んでみてください。

※この記事で紹介するケースは、よくある状況をもとにした例です。特定の会社のことではありません。

ケース1:手元に残るお金が、思ったより少なかった

売却後の生活について考える経営者
 

売却価格は希望どおりだったのに、手元に残るお金が少なかったのはなぜですか?

 
 

売却価格から、税金や仲介会社への手数料、借入金の返済などが差し引かれるためです。売却価格だけを見て判断すると、こうした差を見落としてしまいます。

 
 

売却価格と手取りは、まったく違うんですね!

 

よくある状況

売却価格は希望どおりの金額で決まりました。ところが、株式の売却益にかかる税金や、仲介会社の成功報酬、経営者個人が会社に貸していたお金の扱いなどを差し引くと、手元に残ったのは想像よりずっと少ない金額でした。

なぜ起きるのか

株式を売って得た利益には、約20%の税金がかかります。また、仲介会社の手数料は、売却価格に応じて数百万円から数千万円になることもあります。これらを事前に計算していないと、手取りの金額に驚くことになります。

防ぐための対策

売却を考え始めた段階で、税理士に「手元にいくら残るか」を試算してもらいましょう。役員退職金を組み合わせるなど、受け取り方を工夫することで、手取りが増える場合もあります。仲介会社の手数料の仕組みも、契約の前に必ず確認しておきましょう。

ケース2:売却後に、従業員の待遇が大きく変わった

売却の判断を見つめ直す経営者

よくある状況

「従業員は大切にします」という買手の言葉を信じて売却しました。ところが、1年ほどたつと、給与の仕組みや勤務の時間が変わり、長年働いてくれた従業員が次々と辞めてしまいました。

なぜ起きるのか

売却後の経営の方針は、新しい株主である買手が決めます。口約束だけでは、待遇の変更を止めることはできません。

防ぐための対策

従業員の雇用や待遇を守ってほしい場合は、最終契約の中で、一定期間は雇用を続けること、待遇を大きく下げないことなどを約束してもらいましょう。あわせて、買手が過去にM&Aをした会社で、従業員をどのように扱ってきたかを確認することも大切です。

ケース3:個人保証が外れず、不安が残った

 

会社を売ったのに、個人保証が残ってしまうことがあるのですか?

 
 

はい。会社の借入金について経営者が個人保証をしている場合、金融機関の同意がなければ保証は外れません。売却の手続きの中で、保証を外すことをはっきり決めておかないと、売却後も保証が残ることがあります。

 
 

会社を離れたのに、責任だけが残るのは怖いですね!

 

よくある状況

会社を売却して経営から離れたあとも、会社の借入金の個人保証がそのまま残っていました。新しい経営者のもとで会社の業績が悪くなったとき、自分に返済を求められるのではないかと、不安な日々を過ごすことになりました。

防ぐための対策

個人保証を外すことを、売却の条件として最終契約に書いておきましょう。クロージングの前に、買手と一緒に金融機関に相談し、保証を外す手続きを進めておくことが大切です。

ケース4:表明保証の違反で、お金を返すことになった

よくある状況

売却から半年後、会社に未払いの残業代があることが分かりました。最終契約では「未払いの債務はない」と約束していたため、表明保証の違反として、受け取った売却代金の一部を買手に支払うことになりました。

なぜ起きるのか

最終契約では、売手が会社の状況について「このとおりです」と約束する表明保証を行います。売却後に約束と違うことが分かると、売手が損害を補償しなければならないことがあります。

防ぐための対策

会社の課題は、売却の前に洗い出し、分かっていることは正直に買手に伝えましょう。表明保証の内容や、補償の上限・期間についても、弁護士に確認してもらいながら交渉することが大切です。

ケース5:売却後の役割が、思っていたものと違った

 

売却後に会社に残る場合、どのようなことで後悔しやすいのですか?

 
 

「顧問として気軽に関わるつもりだった」のに、実際には毎日出社して引き継ぎに追われたり、反対に、ほとんど意見を聞いてもらえなかったりと、思っていた役割と違うことがあります。

 
 

売ったあとの関わり方も、事前に決めておく必要があるんですね!

 

よくある状況

売却後も1年間は顧問として残る約束でした。ところが、実際には毎日の出社を求められ、引退後に予定していた旅行もできませんでした。一方で、経営の方針についての意見はほとんど聞いてもらえず、もどかしい思いをしました。

防ぐための対策

売却後に会社に残る場合は、役割、期間、勤務の日数、報酬などを、最終契約や顧問契約の中で具体的に決めておきましょう。「何となく手伝う」ではなく、何をどこまでするのかを、はっきりさせておくことが大切です。

ケース6:もっと良い相手がいたかもしれない

よくある状況

最初に相談した仲介会社とすぐに専任契約を結び、紹介された買手に売却しました。あとになって、同じ業種で、もっと高い価格や良い条件を提示していたかもしれない会社があったことを知り、悔しい思いをしました。

なぜ起きるのか

仲介会社によって、得意な業種や地域、買手のネットワークは大きく異なります。1社だけに相談していると、ほかの選択肢を知る機会がありません。

防ぐための対策

専任契約を結ぶ前に、複数の仲介会社に相談して、提案の内容や費用、想定している買手の候補を比べましょう。比べたうえで選んだ相手であれば、結果にも納得しやすくなります。

ケース7:売却後の生活に、張り合いがなくなった

 

お金の面以外でも、後悔することはありますか?

 
 

はい。長年、会社のことだけを考えてきた経営者ほど、売却後に何をすればいいか分からなくなり、張り合いをなくしてしまうことがあります。

 
 

会社を手放したあとの人生も、大切に考えたいですね!

 

よくある状況

売却して自由な時間を手に入れたものの、毎日やることがなく、気持ちが落ち込んでしまいました。会社のことが気になって、売ったことを後悔する気持ちさえ湧いてきました。

防ぐための対策

売却の前から、売却後にやりたいことを考えておきましょう。趣味や地域の活動、新しい事業への挑戦、家族との時間など、目標があると、売却後の生活を前向きに過ごしやすくなります。

7つのケースのまとめ

ケース主な原因主な対策
手取りが少なかった税金や手数料を計算していなかった税理士に手取りを試算してもらう
従業員の待遇が変わった口約束だけだった雇用の条件を最終契約に書く
個人保証が残った保証を外す手続きを決めていなかった保証の解除を売却の条件にする
お金を返すことになった会社の課題を伝えていなかった課題を洗い出し、正直に伝える
役割が違った売却後の関わり方があいまいだった役割・期間・報酬を契約で決める
もっと良い相手がいた1社にしか相談しなかった複数の仲介会社を比べる
張り合いがなくなった売却後の生活を考えていなかった売却後にやりたいことを考えておく

後悔しないために、いちばん大切なこと

 

7つのケースに共通していることはありますか?

 
 

どのケースも、「売却の前に確認しておけば防げた」という点が共通しています。急いで決めるのではなく、時間をかけて準備し、大切なことは契約に書いておくことが、後悔を防ぐいちばんの方法です。

 
 

準備の時間をしっかりとることが、何よりの対策なんですね!

 

会社の売却は、一度決めてしまうとやり直すことができません。だからこそ、次の3つを意識しておくことが大切です。

  • 時間に余裕を持つ:引退したい時期の2〜3年前から準備を始める
  • 契約に書く:大切な約束は、口約束ではなく最終契約に書いておく
  • 専門家と比べながら進める:仲介会社、税理士、弁護士など、専門家の意見を聞いて判断する

後悔を防ぐためのチェックポイント

売却を決める前に、次のことを確認しておきましょう。

  • 税金や手数料を差し引いたあと、手元にいくら残るかを試算してもらったか
  • 従業員の雇用や待遇について、最終契約に書いてもらったか
  • 個人保証や担保を外す手続きを、買手や金融機関と決めたか
  • 会社の課題を洗い出し、買手に正直に伝えたか
  • 売却後の役割、期間、報酬をはっきり決めたか
  • 複数の仲介会社や買手候補を比べたか
  • 売却後にやりたいことを考えたか

よくある質問

売却を途中でやめることはできますか?

最終契約を結ぶ前であれば、売却をやめることはできます。迷いがある場合は、無理に進めずに、仲介会社に正直に相談しましょう。ただし、基本合意のあとに理由なく交渉をやめると、買手との関係が悪くなることもあるため、早めに判断することが大切です。

売却後に買手とトラブルになったら、どうすればいいですか?

まずは、最終契約の内容を確認し、契約で決めた方法に沿って買手と話し合いましょう。解決が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

売却前の準備が、売却後の満足につながる

会社を売ったあとに後悔するケースの多くは、売却の前に確認しておけば防げるものです。手元に残るお金、従業員の待遇、個人保証、表明保証、売却後の役割など、大切なことは事前に確認し、契約に書いておきましょう。

複数の専門家に相談しながら、時間をかけて納得のいく相手を選ぶことが、売却後の満足につながります。

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