M&Aのあとも社名は残せる?会社の名前や屋号を守るための方法と注意点を解説

M&Aのあとも社名は残せる?会社の名前や屋号を守るための方法と注意点を解説

「長年守ってきた会社の名前を、売却したあとも残してほしい」

会社の売却を考える経営者の中には、こうした思いを持つ方が少なくありません。創業者の名前や地域の名前が入った社名、何十年も地域で親しまれてきた屋号には、お金には代えられない思いが込められています。

また、社名には、取引先や地域のお客様からの信用が積み重なっています。社名が変わることで、取引先やお客様、従業員が不安を感じることもあります。

M&Aのあとに社名が残るかどうかは、売却の方法と、買手との交渉によって決まります。社名を残したい場合は、交渉の早い段階から希望を伝え、契約の中で約束してもらうことが大切です。

ここでは、M&Aのあとの社名の扱いと、売却の方法による違い、社名を残してもらうための交渉のポイント、屋号を引き継ぐときの注意点について解説します。

M&Aのあと、社名はどうなる?

地域に根ざした会社の建物
 

会社を売ったら、社名は変わってしまうのですか?

 
 

必ず変わるわけではありません。株式譲渡の場合は、会社がそのまま続くため、社名もそのまま残るのが基本です。ただし、売却後に社名を変えるかどうかは、新しい株主である買手が決められるため、残してほしい場合は交渉で約束してもらう必要があります。

 
 

残すかどうかは、買手との話し合い次第なんですね!

 
売却の方法社名の扱い
株式譲渡会社がそのまま続くため、社名もそのまま残るのが基本。売却後に変えるかどうかは買手が決められる
事業譲渡会社は売手に残る。買手が社名や屋号を使うかどうかは、交渉で決める
合併消滅する会社の社名はなくなる。存続する会社の社名や、新しい社名になる

株式譲渡の場合

株式譲渡では、会社の株主が変わるだけで、会社そのものはそのまま続きます。そのため、社名も、売却した時点ではそのまま残ります。

ただし、売却後は買手が会社の株主になるため、株主総会で定款を変更すれば、社名を変えることができます。買手がグループの名前に統一したい場合などには、売却後しばらくしてから社名が変わることもあります。

事業譲渡の場合

事業譲渡では、売手の会社は残り、事業だけが買手に移ります。買手が、引き継いだ事業でもとの社名や屋号を使うかどうかは、交渉によって決めることになります。

合併の場合

合併では、消滅する会社の社名はなくなり、存続する会社の社名を使うのが一般的です。ただし、合併を機に、両方の社名を組み合わせた新しい社名にすることもあります。

買手が社名を変えたいと考える理由

歴史を受け継ぐ建物
 

買手は、なぜ社名を変えたいと考えるのですか?

 
 

グループの一体感を出したい、ブランドを統一したい、営業の効率を上げたいといった理由があります。一方で、売手の社名に信用や知名度がある場合は、そのまま残したほうが得だと考える買手も多くいます。

 
 

買手にとっても、社名の扱いは大切な判断なんですね!

 

買手が社名を変えたいと考える主な理由には、次のようなものがあります。

  • グループの一体感:グループの会社の名前をそろえて、一体感を出したい
  • ブランドの統一:お客様に、同じグループのサービスだと分かってもらいたい
  • 営業の効率:グループの名前で営業することで、信用を高めたい
  • 過去のイメージの刷新:経営の方針が変わったことを示したい

一方で、次のような場合は、買手も社名を残したいと考えることが多くあります。

  • 地域で長く親しまれ、社名そのものに信用や知名度がある
  • 社名を変えると、取引先やお客様が離れてしまうおそれがある
  • 従業員が社名に愛着を持っていて、変えると士気が下がるおそれがある

社名を残してもらうための交渉のポイント

 

社名を残してほしい場合は、どうすればいいですか?

 
 

交渉の早い段階で希望を伝えること、社名を残すことが買手にとっても利点になることを説明すること、決まったことを最終契約に書いておくことが大切です。

 
 

思いを伝えるだけでなく、理由を説明することが大切なんですね!

 

早い段階で希望を伝える

社名を残してほしいという希望は、仲介会社に相談する段階から伝えておきましょう。買手を探す段階で、社名を残すことに理解がある買手を優先して探してもらうことができます。

買手にとっての利点を説明する

社名を残すことが、売手の思いだけでなく、買手にとっても利点になることを説明すると、受け入れてもらいやすくなります。たとえば、長く取引が続いている取引先が多いこと、地域での知名度が高いこと、従業員が社名に誇りを持っていることなどです。

最終契約に書いておく

社名を残すことが決まったら、最終契約に、売却後一定期間は社名を変更しないことなどを書いておきましょう。口約束だけでは、売却後に社名が変わってしまっても、約束を守ってもらうことが難しくなります。

ただし、契約に書いても、長い期間にわたって社名を変えないことを約束してもらうのは難しいことが一般的です。期間や条件について、現実的な落としどころを探ることも大切です。

ほかの条件とのバランスを考える

社名を残すことを強く求めると、売却価格などのほかの条件に影響することもあります。社名、従業員の雇用、売却価格など、自分にとって何が最も大切なのかを考えて、優先順位をつけておきましょう。

屋号を引き継ぐときの注意点

 

事業譲渡で、買手がもとの社名や屋号を使う場合に、気をつけることはありますか?

 
 

会社法では、事業を引き継いだ会社がもとの会社の商号(社名)を使い続けると、もとの会社の借金などについても責任を負うことがあると定められています。この責任を避けるための手続きがあるため、事前に確認が必要です。

 
 

名前を使うことで、思わぬ責任が生じることもあるんですね!

 

事業譲渡で買手が売手の商号を使い続ける場合、会社法の定めにより、買手も売手の事業から生じた債務を支払う責任を負うことがあります。[注1]

この責任は、買手が売手の債務について責任を負わないことを登記したり、取引先に通知したりすることで、避けることができます。買手にとっては大切な点なので、事業譲渡でもとの社名や屋号を使う場合は、弁護士などの専門家に確認しながら手続きを進めましょう。

商標の扱い

社名や商品の名前を商標として登録している場合は、商標権をどのように扱うかも決めておく必要があります。事業譲渡で商標を使ってもらう場合は、商標権を買手に移すのか、使用を許すだけにするのかを、契約で決めておきましょう。

ウェブサイトやドメイン

社名を使ったウェブサイトのドメインや、SNSのアカウントなども、引き継ぎの対象になります。名義の変更の手続きなどを、漏れなく行いましょう。

社名が変わる場合の伝え方

 

売却後に社名が変わる場合は、どのように準備すればいいですか?

 
 

取引先やお客様、従業員に、社名が変わっても会社の仕事やサービスが続くことを丁寧に伝えることが大切です。変更の時期や方法について、買手と相談して計画を立てましょう。

 
 

名前が変わっても、信頼が続くように伝えたいですね!

 

社名が変わる場合は、次のような準備が必要になります。

  • 取引先やお客様への案内(変更の時期、変わらないこと、変わること)
  • 従業員への説明(会社の方針、働き方への影響)
  • 登記の変更、銀行口座や契約書の名義の変更
  • 看板、名刺、ウェブサイト、パンフレットなどの変更

すぐに社名を変えるのではなく、「旧社名」を一定期間併記するなど、取引先やお客様が戸惑わないような工夫をすることもあります。

社名と一緒に考えたい大切なこと

社名を残すことは大切ですが、社名だけが残っても、会社の中身が大きく変わってしまっては意味がありません。社名と一緒に、次のようなことも買手と話し合っておきましょう。

  • 従業員の雇用と待遇:売却後も、従業員が安心して働き続けられるか
  • 取引先との関係:長く付き合ってきた取引先との取引が続くか
  • 会社の理念や文化:大切にしてきた考え方や、仕事の進め方が守られるか
  • 地域とのつながり:地域の行事や活動への参加などが続くか

社名は、会社の歴史と信用の象徴です。社名に込められた思いを買手に伝え、会社の中身も含めて大切にしてくれる相手を選ぶことが、売却後も社名が生き続けることにつながります。

社名とM&Aでよくある質問

社名を残すことを条件にすると、売却は難しくなりますか?

買手によっては、社名を変えることを前提にしている場合もあるため、買手の候補が少なくなることはあります。ただし、社名に信用や知名度がある場合は、残すことを前向きに受け入れる買手も多くいます。仲介会社に希望を伝えて、相手探しの段階から考慮してもらいましょう。

社名に経営者の名字が入っていますが、残してもらえますか?

経営者の名字が入った社名でも、地域で長く親しまれている場合などは、そのまま残すことがあります。一方で、経営者が会社を離れたあとに名字が残ることについて、売手と買手の双方が納得しておくことが大切です。

社名だけを売ることはできますか?

社名や屋号を商標として登録している場合は、商標権を売ることはできます。ただし、社名の価値は、その名前で積み重ねてきた会社の仕事や信用と結びついているため、名前だけを売るよりも、事業と一緒に引き継いでもらうほうが、価値を評価されやすいのが一般的です。

社名を残したいなら、早めの相談と契約での約束を

M&Aのあとに社名が残るかどうかは、売却の方法と買手との交渉によって決まります。株式譲渡の場合は、社名はそのまま残るのが基本ですが、売却後に変えるかどうかは買手が決められるため、残してほしい場合は交渉で約束してもらうことが大切です。

社名を残したい理由を買手にとっての利点とあわせて伝え、決まったことを最終契約に書いておくことで、大切な社名を次の世代につなぎやすくなります。

「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「長年守ってきた社名を残しながら、会社を引き継ぎたい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。

[注1] e-Gov法令検索:会社法