産業廃棄物処理業のM&Aとは?許可の引き継ぎ方や、買手が評価するポイントを解説

産業廃棄物処理業のM&Aとは?許可の引き継ぎ方や、買手が評価するポイントを解説

工場や工事現場、店舗などから出る産業廃棄物を、法律に沿って適切に運び、処理する産業廃棄物処理業は、社会の環境を守るために欠かせない仕事です。

産業廃棄物処理業は、許可がなければ営むことができず、新しく許可を取ったり処理施設をつくったりするには、多くの時間と費用がかかります。そのため、すでに許可や施設を持っている会社には大きな価値があり、M&Aで引き継ぎたいと考える買手も多くいます。

一方で、経営者の高齢化や後継者不足、設備の更新の負担などから、会社の将来に悩む経営者も少なくありません。

ただし、産業廃棄物処理業のM&Aでは、許可の扱いや役員の欠格要件、処理施設や土地の状態など、ほかの業種より慎重に確認すべきことが多くあります。

ここでは、産業廃棄物処理業でM&Aが増えている背景と、許可の引き継ぎ方、買手が評価するポイント、売却で注意したいことについて解説します。

産業廃棄物処理業でM&Aが増えている背景

資源を分ける処理の現場
 

産業廃棄物処理業では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

経営者の高齢化と後継者不足に加えて、設備への投資や法律への対応の負担が大きくなっていることが理由です。一方で、許可や施設を持つ会社を引き継ぎたい買手は多く、M&Aが活発になっています。

 
 

許可や施設そのものに、大きな価値があるんですね!

 

産業廃棄物処理業でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:経営者が高齢になっても、会社を継ぐ人が見つからない
  • 許可と施設の価値:新しく許可を取り、処理施設をつくるには、多くの時間と費用がかかる
  • 設備の更新:処理施設や車両の更新に、多額の投資が必要になっている
  • 再資源化の流れ:廃棄物を資源として再利用する技術や仕組みへの対応が求められている
  • 業界の再編:大きな会社が、地域や処理できる廃棄物の種類を増やすためにM&Aを活用している

産業廃棄物処理業の許可の種類

処理施設で廃棄物を扱う設備
 

産業廃棄物処理業には、どのような許可があるのですか?

 
 

産業廃棄物を運ぶための「収集運搬業」の許可と、処理するための「処分業」の許可があります。許可は、都道府県知事や政令市の長から受けるもので、扱う廃棄物の種類ごとに決められています。

 
 

運ぶ仕事と処理する仕事で、別の許可が必要なんですね!

 
許可の種類主な内容
産業廃棄物収集運搬業産業廃棄物を、排出する事業者から処理施設まで運ぶ
産業廃棄物処分業産業廃棄物を、破砕・焼却・埋め立てなどで処理する
特別管理産業廃棄物の許可有害性の高い廃棄物を扱うための許可
処理施設の設置許可一定の規模以上の処理施設を設置するための許可

許可には有効期間があり、5年ごとの更新が必要です(優良な事業者として認定を受けると7年になります)。[注1]

M&Aでの許可の扱い

 

M&Aをすると、産業廃棄物処理業の許可はどうなるのですか?

 
 

株式譲渡の場合は、許可を持っている会社そのものが変わらないため、許可は原則としてそのまま続きます。事業譲渡の場合は、許可を引き継ぐことはできません。合併や会社分割の場合は、事前に認可を受けることで、許可を引き継げる仕組みがあります。

 
 

M&Aの方法によって、許可の扱いが大きく変わるんですね!

 
M&Aの方法許可の扱い
株式譲渡会社が変わらないため、原則としてそのまま続く(役員の変更などの届出は必要)
事業譲渡許可は引き継げないため、引き継ぐ側が新たに許可を受ける必要がある
合併・会社分割事前に許可を出した行政庁の認可を受ければ、許可を引き継げる

株式譲渡が選ばれることが多い

事業譲渡では許可を引き継げず、新たに許可を受けるには時間がかかるため、産業廃棄物処理業のM&Aでは、許可がそのまま続く株式譲渡が選ばれることが多くあります。

合併・会社分割の場合

合併や会社分割の場合は、効力が生じる前に、許可を出した行政庁の認可を受けることで、許可を引き継ぐことができます。認可を受けずに合併などを行うと、許可を引き継げないため、スケジュールに余裕を持って準備することが大切です。

役員の欠格要件に特に注意

 

株式譲渡なら、許可のことは心配しなくていいのですか?

 
 

許可は続きますが、役員などが法律で決められた欠格要件に当たらないことが求められます。買手側から新しい役員が入る場合は、その人が欠格要件に当たらないかを、事前に必ず確認しておく必要があります。

 
 

新しい役員のことまで、確認が必要なんですね!

 

産業廃棄物処理業の許可では、会社の役員や一定の株主などが、法律で決められた欠格要件に当たらないことが求められています。もし役員の中に欠格要件に当たる人がいると、会社の許可が取り消されるおそれがあります。

株式譲渡で買手が新しい役員を送り込む場合や、買手が大株主になる場合は、それらの人や会社が欠格要件に当たらないかを、事前に確認しておくことが欠かせません。また、役員が変わった場合は、決められた期間内に届出を行う必要があります。

買手が評価するポイント

 

産業廃棄物処理業のM&Aでは、買手はどこを評価するのですか?

 
 

許可の種類と扱える廃棄物の範囲、処理施設の能力と状態、排出事業者との取引、車両や人材、法律を守った運営ができているかなどが主なポイントです。

 
 

許可と施設と取引先が、会社の価値を支えているんですね!

 
評価のポイント内容
許可収集運搬・処分などの許可の種類、扱える廃棄物の種類、許可がある地域
処理施設処理の能力、稼働の状況、施設の状態と更新の予定
取引先排出事業者の数、取引の年数、売上の偏り
車両・設備収集運搬の車両の台数と状態、重機の状態
人材運転手や施設の作業員の人数、資格、定着率
法令の順守マニフェストの管理、行政処分の履歴
土地処理施設の土地が所有か賃貸か、土壌の状態

産業廃棄物処理業のM&Aで注意したいこと

 

産業廃棄物処理業ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

法律を守った運営ができているか、処理施設の土地に土壌の汚染などの問題がないかが、特に詳しく確認されます。問題が見つかると、許可の取り消しや多額の費用につながるおそれがあるためです。

 
 

法律の順守と環境の確認が、とても大切なんですね!

 

法律を守った運営

産業廃棄物の処理では、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の管理や、決められた基準に沿った保管・処理が求められます。過去に行政処分を受けたことがあるか、不適切な処理がなかったかは、買手が必ず確認するポイントです。

処理施設と土地

処理施設の土地に、土壌の汚染や、適切に処理されていない廃棄物が残っていないかが確認されます。問題が見つかると、浄化や撤去に多額の費用がかかることがあるため、価格に大きく影響します。

施設の更新の予定

処理施設や車両の更新に、近いうちに大きな投資が必要になる場合は、買手はその費用も考えて価格を判断します。設備の状態と、更新の予定を整理しておきましょう。

産業廃棄物処理業の主な買手

買手の種類主な目的
同業の処理会社許可や施設、地域を増やしたい
大手の環境関連の会社処理できる廃棄物の種類を広げ、業界の再編を進めたい
建設会社工事で出る廃棄物の処理を、グループの中で行いたい
製造業の会社自社の工場から出る廃棄物の処理を安定させたい
投資ファンド業界の再編を進め、会社の価値を高めたい

売却前に準備しておきたい書類

書類の種類主な内容
財務の書類直近3期分の決算書、事業別の売上、借入金の一覧
許可の書類収集運搬業・処分業の許可証、処理施設の設置許可、変更の届出の控え
施設の書類処理施設の図面、設備の一覧、点検や維持管理の記録
取引の書類排出事業者との委託契約書、取引先別の売上
管理の記録マニフェストの管理の記録、処理の実績の報告
土地の書類土地・建物の登記簿、賃貸借契約書、土壌の調査の結果(あれば)
人の書類従業員の一覧、資格、雇用契約書

特に、許可の更新の時期や、扱える廃棄物の種類は、買手が最初に確認するポイントです。許可証の写しを一覧にして、すぐに説明できるようにしておきましょう。

産業廃棄物処理業のM&Aでよくある質問

収集運搬だけの会社でも売れますか?

はい。収集運搬の許可を持ち、排出事業者との取引が安定している会社は、地域や取引先を増やしたい会社にとって魅力的な引き継ぎ先になることがあります。複数の都道府県で許可を持っていることも、評価のポイントになります。

行政処分を受けたことがあっても売れますか?

処分の内容や時期によって影響は異なります。処分の内容と、その後の改善の取り組みを正直に説明することが大切です。処分の履歴を隠して売却すると、あとで大きなトラブルになるおそれがあります。

売却後、経営者はどうなりますか?

排出事業者との関係や、施設の運営のノウハウを引き継ぐため、一定期間、役員や顧問として会社に残ることを求められることが多くあります。残る期間や役割は、契約の段階で話し合っておきましょう。

産業廃棄物処理業のM&Aは、許可と法令の順守がカギ

産業廃棄物処理業のM&Aでは、収集運搬や処分の許可を引き継げるかが大きなポイントです。株式譲渡の場合は許可がそのまま続きますが、役員の欠格要件に注意が必要です。事業譲渡では許可を引き継げず、合併や会社分割では事前の認可が必要になります。

法律を守った運営ができているか、処理施設の土地に問題がないかも含めて、専門家と一緒に早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。

「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「産業廃棄物処理業のM&Aに強い仲介会社を探したい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。

[注1] 環境省:廃棄物の処理及び清掃に関する法律