印刷会社のM&Aとは?業界の変化と買手が評価するポイント、売却の注意点を解説
チラシやカタログ、パンフレット、商品のパッケージなど、印刷会社は私たちの暮らしやビジネスに欠かせないものを作り続けてきました。
一方で、印刷業界は、デジタル化の進展によって大きな変化の中にあります。紙の印刷物の需要が減る中で、設備の更新や新しい事業への転換が求められ、経営者の高齢化や後継者不足も重なって、事業の将来に悩む印刷会社は少なくありません。
こうした中で、技術や従業員、取引先を守りながら会社を次の世代に引き継ぐ方法として、印刷会社のM&Aが増えています。
ここでは、印刷業界でM&Aが増えている背景と、買手が評価するポイント、売却で注意したいこと、売却を成功させるための準備について解説します。
印刷業界でM&Aが増えている背景

印刷業界では、なぜM&Aが増えているのですか?
紙の印刷物の需要が減っていることに加えて、設備の更新にかかる負担や、経営者の高齢化・後継者不足が大きな理由です。単独で生き残るよりも、ほかの会社と一緒になって事業を続ける道を選ぶ会社が増えています。
業界の変化が、M&Aを後押ししているんですね!
印刷業界でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。
- 需要の変化:デジタル化によって、チラシや冊子などの紙の印刷物の需要が減っている
- 設備の負担:印刷機は高額で、更新や維持に多くの費用がかかる
- 後継者不足:経営者が高齢になっても、会社を継ぐ人が見つからない
- 技術者の高齢化:熟練の技術者が引退を迎え、技術の継承が難しくなっている
- 業界の再編:規模を大きくして、設備や仕事を効率よく回そうとする会社が増えている
買手にとっては、M&Aによって設備や技術者、取引先をまとめて手に入れることで、仕事を受けられる量を増やしたり、得意な分野を広げたりすることができます。
印刷会社の事業の種類

同じ印刷会社でも、評価のされ方は違うのですか?
はい。チラシやカタログなどの商業印刷、商品の箱や袋などのパッケージ印刷、本や雑誌の出版印刷など、得意な分野によって、需要の見通しや評価のポイントが変わります。
どんなものを印刷しているかで、見られ方が変わるんですね!
| 事業の種類 | 主な内容 | 評価のポイント |
|---|---|---|
| 商業印刷 | チラシ、カタログ、パンフレット、名刺など | 取引先の数、デジタルとの組み合わせの提案力 |
| パッケージ印刷 | 商品の箱、ラベル、袋など | 需要が比較的安定しやすい。品質の管理の体制 |
| 出版印刷 | 本、雑誌、教材など | 出版社との関係、製本までの体制 |
| 特殊印刷 | シール、看板、布や金属への印刷など | ほかの会社にはまねしにくい技術 |
| 印刷以外の関連事業 | デザイン、ウェブ制作、発送の代行など | 印刷と組み合わせた提案ができるか |
デジタルとの組み合わせ
紙の印刷だけでなく、デザインやウェブサイトの制作、データの管理、発送の代行など、印刷に関わる仕事をまとめて引き受けている会社は、取引先にとって欠かせない存在になりやすく、買手からも評価されやすい傾向があります。
買手が評価するポイント
印刷会社のM&Aでは、買手はどこを評価するのですか?
設備の種類と状態、技術者の人数と技術、取引先との関係、得意な分野、工場の立地などが主なポイントです。
設備と人と取引先が、会社の価値を支えているんですね!
| 評価のポイント | 内容 |
|---|---|
| 設備 | 印刷機の種類と年式、整備の状況、稼働率 |
| 技術者 | 人数、年齢構成、色の管理などの技術、定着率 |
| 取引先 | 主な取引先、取引の年数、売上の偏り |
| 得意な分野 | 商業・パッケージ・特殊印刷などの強み |
| 品質 | 品質の管理の体制、取得している認証 |
| 工場・土地 | 立地、広さ、所有か賃貸か、建物の状態 |
| 財務 | 利益の安定性、借入金、設備のリースの残り |
設備の状態と稼働率
印刷機は高額な設備のため、その状態は会社の価値に大きく影響します。新しい設備があることは評価されますが、稼働率が低い場合は、買手が持て余してしまうこともあります。設備ごとの年式や稼働の状況、整備の記録を整理しておきましょう。
技術が人に頼っていないか
印刷の色の再現や、紙の扱いなどには、熟練の技術が必要な場面が多くあります。その技術が特定の技術者だけにあると、技術者が辞めたときに品質を保てなくなるおそれがあります。作業の手順を記録に残し、若い社員に技術を伝えておくことが、会社の価値を高めることにつながります。
印刷会社のM&Aで注意したいこと
印刷会社ならではの、注意したいポイントはありますか?
設備のリースの扱い、工場の土地や建物の扱い、インクや溶剤などの環境への対応、取引先との契約の内容などが大切な確認ポイントです。
設備が多い分、確認することも多いんですね!
設備のリース
印刷機をリースで使っている場合は、リースの残りの期間と金額が、会社の負債として確認されます。事業譲渡の場合は、リース会社の承諾を得て契約を引き継ぐか、精算する必要があります。
工場の土地と建物
工場の土地や建物を、経営者個人が持っていることもよくあります。この場合は、土地や建物を会社に売るのか、買手に売るのか、引き続き貸すのかを決めておく必要があります。
環境への対応
印刷では、インクや溶剤、洗浄剤などの化学物質を使います。これらの管理や廃棄が適切に行われているか、工場の周りの環境に問題がないかが確認されることがあります。
取引先との契約と情報の管理
取引先との契約の中に、会社の株主が変わったときの定めがないかを確認しておきましょう。また、印刷会社は取引先の大切なデータを預かっていることが多いため、情報の管理の体制も確認されるポイントです。
売却前に準備しておきたい書類
印刷会社の売却に向けて、どんな書類をそろえておけばいいですか?
決算書などの財務の書類に加えて、設備の一覧やリース契約書、主な取引先との契約書、工場の土地や建物に関する書類などをそろえておくと、話がスムーズに進みます。
設備に関する書類が多くなりそうですね!
| 書類の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 財務の書類 | 直近3期分の決算書、事業の種類別の売上、借入金の一覧 |
| 設備の書類 | 印刷機などの設備の一覧、年式、整備の記録、リース契約書 |
| 取引の書類 | 主な取引先との契約書、取引先別の売上の推移 |
| 工場の書類 | 土地・建物の登記簿、賃貸借契約書、図面 |
| 品質の資料 | 品質の管理の手順、取得している認証の書類 |
| 人の書類 | 従業員の一覧、技術の内容、雇用契約書、就業規則 |
| 環境の資料 | 化学物質の使用と廃棄の記録 |
印刷会社の主な買手
| 買手の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 同業の印刷会社 | 設備や技術者を増やし、受けられる仕事を広げたい |
| 大手の印刷グループ | 地域の拠点を増やし、仕事を効率よく回したい |
| 広告・デザインの会社 | 印刷の工程を自社のグループに取り込みたい |
| パッケージを使うメーカー | 商品のパッケージを安定して作れるようにしたい |
| 投資ファンド | 業界の再編を進め、会社の価値を高めたい |
売却を成功させるためのポイント
強みをはっきりさせる
「この分野の印刷なら任せられる」という強みがある会社は、買手にとって魅力的です。得意な分野や技術、長く付き合いのある取引先などを整理し、会社の強みを具体的に説明できるようにしておきましょう。
早めに準備を始める
紙の印刷物の需要が減る中で、売上が大きく落ちてから売却を考えると、条件が厳しくなることがあります。業績が安定しているうちに相談を始めることで、時間をかけて良い相手を探すことができます。
工場を整えておく
工場の見学では、整理や清掃の状況、安全への配慮なども見られています。日頃から整った工場を保つことが、買手の信頼につながります。
印刷会社のM&Aでよくある質問
印刷会社のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。
「売上が減っている会社でも売れるのか」「古い印刷機しかないが評価されるのか」といったご質問をよくいただきます。
どちらも、まさに気になっていたことです!
売上が減っている会社でも売れますか?
売上が減っていても、取引先との関係や技術、立地などに価値があれば、買手が見つかることはあります。買手の持つ営業力や設備と組み合わせることで、仕事を増やせると考える会社もあるためです。ただし、売上がさらに減る前に、早めに相談することが大切です。
古い印刷機しかありませんが、評価されますか?
設備が古くても、きちんと整備されて動いている場合や、その設備でしかできない仕事がある場合は、評価されることがあります。ただし、買手が売却後に設備を更新する必要があると考える場合は、その費用を考えて価格が決められることもあります。
従業員の雇用は守られますか?
株式譲渡の場合は、会社がそのまま続くため、従業員の雇用契約も原則として続きます。売却後の雇用や待遇について、買手と事前に話し合い、契約の中で約束してもらうことも大切です。
売却後、経営者はどうなりますか?
取引先との関係や、技術の引き継ぎのため、一定期間、役員や顧問として会社に残ることを求められることが多くあります。特に、経営者自身が主な取引先との窓口になっている場合は、引き継ぎの期間を長めにとり、買手と一緒に取引先を回ることが大切です。
印刷会社のM&Aは、強みと設備の整理がカギ
印刷会社のM&Aでは、設備や技術者、取引先との関係が、会社の価値を大きく左右します。業界が大きく変化する中で、自社の強みをはっきりさせ、設備や工場、取引先との契約などを整理しておくことが大切です。
業績が安定しているうちに、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。
「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。
「印刷会社のM&Aに強い仲介会社を探したい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。