学習塾のM&Aとは?売却の方法や買手が評価するポイント、生徒と講師への配慮を解説

学習塾のM&Aとは?売却の方法や買手が評価するポイント、生徒と講師への配慮を解説

地域の子どもたちの学びを支えてきた学習塾の中には、塾長の高齢化や後継者不足に悩む塾が少なくありません。また、少子化による生徒数の減少や、講師の確保、オンライン授業への対応など、学習塾を取り巻く環境も大きく変わっています。

「通ってくれている生徒たちのために、教室を閉じずに残したい」

そう考える塾長にとって、M&Aによって学習塾を第三者に引き継いでもらうことは、有力な選択肢の一つです。

学習塾は、開業や運営に特別な許可が必要ない業種です。そのため、ほかの業種と比べて、引き継ぎの手続きは比較的シンプルです。一方で、学習塾の価値は、生徒や保護者との信頼関係、講師の指導力、地域での評判など、目に見えにくいものに支えられています。こうした価値をうまく引き継ぐことが、M&Aを成功させるポイントになります。

ここでは、学習塾でM&Aが増えている背景と、売却の方法、買手が評価するポイント、生徒と講師への配慮、売却を成功させるための準備について解説します。

学習塾でM&Aが増えている背景

ノートをとる生徒
 

学習塾では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

塾長の高齢化と後継者不足に加えて、少子化による生徒の取り合いや、講師の確保が難しくなっていることが大きな理由です。一方で、教室の数を増やしたいと考える大手の塾や、教育の分野に進出したい会社も増えています。

 
 

売手と買手の両方に、M&Aを考える理由があるんですね!

 

学習塾でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:塾長が高齢になっても、教室を継ぐ人が見つからない
  • 少子化:子どもの数が減り、生徒を集めることが年々難しくなっている
  • 講師の確保:大学生の講師や、経験のある社員の講師を採用するのが難しい
  • 学び方の変化:オンライン授業や映像授業、学習用のアプリなど、新しい仕組みへの対応が必要になっている
  • 規模の拡大:大手の塾が、地域を広げるためにM&Aを活用している

買手にとっては、一から教室を開いて生徒を集めるよりも、すでに生徒がいて、地域での評判もある教室を引き継ぐほうが、早く安定した運営を始められるという利点があります。

学習塾の売却の方法

教室で学ぶ生徒
 

学習塾は、どのような方法で売るのですか?

 
 

会社で塾を営んでいる場合は、会社ごと売る株式譲渡か、教室などの事業だけを売る事業譲渡を選びます。個人で塾を営んでいる場合は、事業譲渡の形で売るのが一般的です。

 
 

塾をどのような形で営んでいるかで、方法が変わるんですね!

 
売却の方法主な特徴
株式譲渡会社ごと引き継ぐ。教室の賃貸借契約や講師の雇用が、会社のまま続く
事業譲渡教室や生徒、講師などを個別に引き継ぐ。一部の教室だけを売ることもできる

複数の教室がある場合

複数の教室を運営している場合は、すべての教室をまとめて売るほか、一部の教室だけを事業譲渡で売ることもできます。たとえば、生徒が集まりにくくなった教室だけを、その地域で教室を増やしたい塾に引き継いでもらうといった方法です。

許可が要らない分、契約の引き継ぎが大切

学習塾は、開業に特別な許可が必要ないため、許認可の引き継ぎで困ることは少ない業種です。その代わり、教室の賃貸借契約や、生徒・保護者との契約、講師との雇用契約などを、漏れなく引き継ぐことが大切になります。

買手が評価するポイント

 

学習塾のM&Aでは、買手はどこを評価するのですか?

 
 

生徒の数と学年の構成、生徒が通い続けてくれる割合、講師の体制、合格の実績、教室の立地などが主なポイントです。

 
 

生徒と講師が、塾の価値を支えているんですね!

 
評価のポイント内容
生徒生徒の数、学年の構成、退塾の割合、兄弟で通っている家庭の数
講師社員と学生の講師の人数、指導の経験、定着率
実績志望校への合格の実績、成績の伸び
教室駅や学校からの距離、教室の広さ、賃貸借契約の条件
集客紹介、チラシ、ウェブサイトなど生徒を集める方法
授業の形集団授業・個別指導・映像授業などの組み合わせ
収支授業料・季節講習・教材費などの売上の内訳、利益の安定性

塾長の指導に頼りすぎていないか

小さな塾では、塾長自身が授業の中心を担い、生徒や保護者が塾長の人柄や指導力で塾を選んでいることがよくあります。この場合、塾長が抜けると生徒が離れてしまうおそれがあるため、買手は慎重に判断します。ほかの講師にも授業を任せ、塾長がいなくても授業の質を保てる体制をつくっておくことが大切です。

季節による生徒数の変動

 

学習塾ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

学習塾は、受験の時期や季節講習によって、売上や生徒数が大きく変わる業種です。月ごとの数字を整理して、1年を通した流れを説明できるようにしておくことが大切です。

 
 

1か月の数字だけを見ても、塾の本当の姿は分からないんですね!

 

学習塾では、一般的に次のような1年の流れがあります。

  • 春:新学年の生徒が入塾し、生徒数が増える
  • 夏・冬:季節講習で売上が大きく増える
  • 受験の時期:受験生の指導に力を入れ、受験が終わると受験生が卒塾する

このため、売上や生徒数は、月によって大きく上下します。買手に正しく塾の状態を伝えるためには、少なくとも過去2〜3年分の月ごとの数字を整理しておきましょう。

引き継ぎの時期を考える

引き継ぎの時期も大切です。受験の直前や季節講習の最中に経営者が変わると、生徒や保護者が不安を感じやすくなります。受験が終わって新学年が始まる前など、生徒への影響が少ない時期を選ぶとよいでしょう。

生徒・保護者・講師への配慮

 

生徒や保護者、講師には、どのように伝えればいいですか?

 
 

話が早い段階で広まると、生徒が他の塾に移ってしまったり、講師が辞めてしまったりするおそれがあります。条件がまとまった段階で、買手と相談しながら、授業や担当の講師がこれまでどおり続くことを丁寧に伝えることが大切です。

 
 

伝えるタイミングと内容が、とても大切なんですね!

 

保護者への伝え方

保護者にとっては、授業の内容や担当の講師、授業料が変わるのかが気になるところです。お知らせの文書や保護者会などで、何が変わり、何が変わらないのかを分かりやすく伝えましょう。新しい経営者と一緒にあいさつをすることで、安心してもらいやすくなります。

講師への伝え方

講師は、生徒との関係を支える大切な存在です。売却後の待遇や働き方について買手と事前に話し合い、講師が安心して働き続けられるよう説明しましょう。人気のある講師が残ってくれるかどうかは、生徒が残ってくれるかどうかにも大きく影響します。

生徒の情報の扱い

生徒の名前や成績、連絡先などは、大切な個人情報です。事業の承継に伴って情報を引き継ぐことは認められていますが、引き継いだあとも、もとの利用目的の範囲で使う必要があります。情報の管理には十分注意しましょう。

学習塾の主な買手

買手の種類主な目的
大手・中堅の学習塾教室を増やし、地域でのシェアを広げたい
個別指導などのフランチャイズの本部加盟の教室を増やしたい
教育関連の会社教材や映像授業などの事業と組み合わせたい
異業種の会社教育の分野に新しく進出したい
独立を考えている講師一から開業するより、生徒のいる教室を引き継ぎたい

フランチャイズに加盟している場合

フランチャイズに加盟している教室を売る場合は、本部との契約の内容を確認する必要があります。加盟の契約を引き継げるかどうかや、本部の承諾が必要かどうかは、契約によって異なります。早めに本部に相談しておきましょう。

売却前に準備しておきたい書類

書類の種類主な内容
財務の書類直近3期分の決算書、月ごとの売上、教室別の収支
生徒の資料学年別の生徒数の推移、入塾と退塾の数、合格の実績
講師の書類講師の一覧、勤務の形、雇用契約書
教室の書類賃貸借契約書、教室の図面、設備の一覧
契約の書類生徒・保護者との契約書のひな形、フランチャイズの契約書
運営の資料授業のカリキュラム、教材の一覧、生徒を集める方法の資料

学習塾のM&Aでよくある質問

 

学習塾のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「教室が1つだけの小さな塾でも売れるのか」「生徒が減っている塾でも買手は見つかるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、まさに気になっていたことです!

 

教室が1つだけの小さな塾でも売れますか?

はい。教室が1つだけでも、地域での評判が良く、生徒が安定して通っている塾は、その地域に教室を増やしたい塾にとって魅力的な引き継ぎ先になることがあります。独立を考えている講師が、引き継ぎを希望することもあります。

生徒が減っている塾でも、買手は見つかりますか?

生徒が減っていても、立地が良い、講師の指導力が高い、合格の実績があるといった強みがあれば、買手が見つかることはあります。買手の持つ生徒を集めるノウハウや教材と組み合わせることで、生徒を増やせると考える塾もあるためです。ただし、生徒がさらに減る前に、早めに相談することが大切です。

売却後も、しばらく授業を続けることはできますか?

はい。生徒や保護者に安心してもらうために、塾長が一定期間、講師として授業を続けることはよくあります。期間や役割、報酬は、契約の段階で決めておきましょう。

学習塾のM&Aは、生徒と講師を守るための選択肢

学習塾のM&Aでは、生徒や講師、教室を引き継いでもらえるかが大きなポイントです。許可が要らない分、教室の賃貸借契約や生徒・講師との契約を漏れなく引き継ぐことが大切になります。

季節による数字の変動を整理し、生徒や保護者、講師への伝え方にも配慮しながら、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。

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