警備会社のM&Aとは?警備業の認定の扱いや、買手が評価するポイントを解説

警備会社のM&Aとは?警備業の認定の扱いや、買手が評価するポイントを解説

工事現場の交通誘導や、ビルや商業施設の施設警備、イベントの雑踏警備など、警備会社は私たちの暮らしの安全を支えています。

一方で、警備業界では、警備員の高齢化と人手不足が深刻になっています。また、経営者の高齢化や後継者不足に悩む警備会社も少なくありません。

こうした中で、警備員や取引先を守りながら会社を引き継ぐ方法として、警備会社のM&Aが増えています。

ただし、警備会社のM&Aでは、警備業を営むために必要な「認定」の扱いや、指導教育責任者などの人材の確保、警備員の教育の状況など、ほかの業種にはない確認ポイントがあります。

ここでは、警備会社でM&Aが増えている背景と、認定の扱い、警備の種類ごとの評価のポイント、売却で注意したいことについて解説します。

警備会社でM&Aが増えている背景

街の安全を守る警備員
 

警備会社では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

経営者の高齢化と後継者不足に加えて、警備員の人手不足が大きな理由です。買手にとっては、M&Aによって警備員や取引先をまとめて手に入れられることが、大きな魅力になっています。

 
 

人手不足が、M&Aを後押ししているんですね!

 

警備会社でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:経営者が高齢になっても、会社を継ぐ人が見つからない
  • 警備員の不足:警備員の採用が難しく、高齢化も進んでいる
  • 人件費の上昇:最低賃金の引き上げなどで、人件費の負担が増えている
  • 仕事の需要:工事やイベント、施設の警備など、警備の需要は続いている
  • 規模の拡大:大きな警備会社が、地域や警備員を増やすためにM&Aを活用している

警備の仕事は、警備員がいなければ受けることができません。そのため、警備員を一人ずつ採用するよりも、M&Aで警備会社を引き継ぐほうが、早く仕事を広げられるという利点があります。

警備業の認定とM&Aの関係

地域の安全を支える警備の仕事
 

警備会社を営むには、どのような許可が必要なのですか?

 
 

警備業を営むには、主たる営業所がある都道府県の公安委員会から「認定」を受ける必要があります。M&Aの方法によって、この認定の扱いが変わります。

 
 

M&Aの方法によって、手続きが違うんですね!

 

警備業を営むには、警備業法にもとづいて、公安委員会から認定を受ける必要があります。認定は5年ごとに更新が必要です。[注1]

M&Aの方法認定の扱い
株式譲渡会社が変わらないため、原則としてそのまま続く(役員の変更などの届出は必要)
事業譲渡認定は引き継げないため、引き継ぐ側が認定を持っている、または新たに受ける必要がある
合併・会社分割手続きの内容によって扱いが異なるため、公安委員会への事前の確認が必要

株式譲渡が選ばれることが多い

事業譲渡では認定を引き継げないため、引き継ぐ側が認定を持っていない場合は、新たに認定を受けるまで警備の仕事を受けることができません。そのため、警備会社のM&Aでは、認定がそのまま続く株式譲渡が選ばれることが多くあります。

役員の欠格事由に注意

警備業の認定には、役員が一定の欠格事由に当たらないことが求められます。株式譲渡で役員が交代する場合は、新しい役員が欠格事由に当たらないかを確認したうえで、決められた期間内に届出を行う必要があります。

指導教育責任者と警備員の確保

 

株式譲渡なら、認定のことは心配しなくていいのですか?

 
 

認定は続きますが、営業所ごと、警備の種類ごとに、警備員指導教育責任者を置くなどの要件を満たし続ける必要があります。経営者が責任者を兼ねている場合は、売却後に後任を確保できるかが大きなポイントになります。

 
 

資格を持つ人がいなければ、仕事を続けられないんですね!

 

警備会社では、営業所ごと、また警備業務の区分ごとに、警備員指導教育責任者を選任する必要があります。機械警備を行う場合は、機械警備業務管理者も必要です。

また、交通誘導や施設の警備などの一部の業務では、検定に合格した警備員を現場に配置することが求められる場合があります。

小さな警備会社では、経営者自身が指導教育責任者を兼ねていることがよくあります。売却後に経営者がすぐに退くと、要件を満たせなくなるおそれがあるため、後任の確保について事前に検討しておきましょう。

警備の種類によって評価が変わる

 

警備会社によって、評価のされ方は違うのですか?

 
 

はい。工事現場の交通誘導が中心の会社と、施設の警備が中心の会社では、売上の安定性や、必要な人材が異なるため、評価のポイントも変わります。

 
 

どんな警備をしているかで、見られ方が変わるんですね!

 
警備の種類主な内容評価のポイント
施設警備(1号)ビルや商業施設、工場などの警備長期の契約が多く、売上が安定しやすい
交通誘導・雑踏警備(2号)工事現場の交通誘導、イベントの警備仕事の量が工事やイベントの数によって変わる
輸送警備(3号)現金や貴重品の運搬の警備専門の車両や体制が必要
身辺警備(4号)人の身辺の安全を守る警備専門性の高い人材が必要

長期の契約は評価されやすい

施設の警備のように、同じ取引先と長く契約が続く仕事は、売上が安定しやすいため、買手から評価されやすい傾向があります。取引先ごとの契約の期間や更新の状況を整理しておきましょう。

買手が評価するポイント

評価のポイント内容
認定・資格認定の状況、指導教育責任者や検定合格警備員の人数
警備員人数、年齢構成、定着率、採用の仕組み
取引先主な取引先、契約の期間、売上の偏り
警備の種類施設・交通誘導などの売上の内訳
教育の体制警備員の教育が法律どおりに行われているか
労務管理労働時間の管理、社会保険の加入、残業代の支払い
財務利益の安定性、借入金

警備会社のM&Aで注意したいこと

 

警備会社ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

警備員の教育が法律どおりに行われているかと、労務管理の状況が特に詳しく確認されます。問題が見つかると、価格が下がったり、交渉がまとまらなかったりすることがあります。

 
 

日頃の管理がきちんとしているかが、大切なんですね!

 

警備員の教育

警備業法では、警備員に対して、決められた時間の教育を行うことが求められています。教育の記録がきちんと残っていない場合は、行政の指導の対象になるおそれがあるため、買手が必ず確認するポイントです。

労務管理

警備の仕事は、夜間や長時間の勤務が多く、労働時間の管理や残業代の支払いが問題になることがあります。また、警備員の社会保険の加入状況も確認されます。売却を考え始めたら、労務管理の状況を専門家に確認してもらいましょう。

取引先との契約

主な取引先との契約の中に、会社の株主が変わったときの定めがないかを確認しておきましょう。官公庁の入札で仕事を受けている場合は、入札の資格への影響も確認が必要です。

警備会社の主な買手

買手の種類主な目的
同業の警備会社警備員や取引先を増やし、地域を広げたい
ビルの管理会社清掃や設備管理と、警備を組み合わせたい
建設に関わる会社工事現場の交通誘導を、グループの中で行いたい
投資ファンド業界の再編を進め、会社の価値を高めたい

売却を成功させるためのポイント

 

警備会社を少しでも良い条件で売るには、どうすればいいですか?

 
 

警備員の教育や勤務の記録を整えておくこと、取引先との契約の内容を整理しておくこと、警備員の定着につながる取り組みを示せるようにしておくことが大切です。

 
 

日頃の取り組みを、形にしておくことが大切なんですね!

 

記録を整えておく

警備員の教育の記録や、勤務の記録、指導教育責任者の選任の書類などは、デューデリジェンスで必ず確認されます。日頃から記録をきちんと整えておくことで、買手に安心してもらうことができます。

警備員を集める仕組みを示す

警備の仕事は、警備員の人数がそのまま受けられる仕事の量につながります。求人の方法や、採用から教育までの流れ、警備員の定着率などを説明できるようにしておくと、会社の価値を伝えやすくなります。

取引先との関係を整理する

取引先ごとの売上や契約の期間、更新の状況などを一覧にしておきましょう。長く取引が続いている取引先が多いことは、売上の安定性を示す大切な材料になります。

警備会社のM&Aでよくある質問

 

警備会社のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「警備員が少ない会社でも売れるのか」「売却後に警備員が辞めないか心配」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、まさに気になっていたことです!

 

警備員が少ない会社でも売れますか?

はい。規模が小さくても、認定を持ち、安定した取引先がある会社は、地域を広げたい警備会社にとって魅力的な引き継ぎ先になることがあります。検定に合格した警備員がいることも、評価のポイントになります。

売却後に警備員が辞めないか心配です

警備員の定着は、売手にとっても買手にとっても大切な課題です。売却後の待遇や勤務の仕組みがどう変わるのかを買手と事前に話し合い、警備員に丁寧に説明しましょう。

売却後、経営者はどうなりますか?

取引先との関係や、指導教育責任者の引き継ぎのため、一定期間、役員や顧問として会社に残ることを求められることが多くあります。残る期間や役割は、契約の段階で話し合っておきましょう。

警備会社のM&Aは、認定と人材の確保がカギ

警備会社のM&Aでは、警備業の認定を引き継げるかと、指導教育責任者や警備員を確保し続けられるかが大きなポイントです。事業譲渡では認定を引き継げないため、株式譲渡が選ばれることが多くあります。

警備員の教育や労務管理の状況も含めて、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。

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[注1] 警察庁:警備業法