自動車整備工場のM&Aとは?認証・指定の扱いや、買手が評価するポイントを解説

自動車整備工場のM&Aとは?認証・指定の扱いや、買手が評価するポイントを解説

地域の車の点検や修理、車検を支えてきた自動車整備工場では、経営者の高齢化と後継者不足が大きな課題になっています。また、整備士の確保が年々難しくなっていることや、車の電子化への対応にかかる投資も、小さな整備工場にとっては大きな負担です。

「長年来てくれているお客様のために、工場を閉めずに残したい」

そう考える経営者にとって、M&Aによって整備工場を第三者に引き継いでもらうことは、有力な選択肢の一つです。

ただし、自動車整備工場のM&Aでは、国から受けている認証や指定の扱いや、整備士の確保、工場の土地や設備など、ほかの業種にはない確認ポイントがあります。

ここでは、自動車整備工場でM&Aが増えている背景と、認証・指定の扱い、買手が評価するポイント、売却で注意したいことについて解説します。

自動車整備工場でM&Aが増えている背景

地域の暮らしを支える車
 

自動車整備工場では、なぜM&Aが増えているのですか?

 
 

経営者の高齢化と後継者不足に加えて、整備士の不足や、車の電子化に対応するための投資が負担になっていることが大きな理由です。一方で、整備の拠点や整備士を増やしたいと考える買手も多くいます。

 
 

売手と買手の両方に、M&Aを考える理由があるんですね!

 

自動車整備工場でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。

  • 後継者不足:家族で営んできた工場で、子どもが継がないケースが増えている
  • 整備士の不足:若い整備士が少なく、採用が難しくなっている
  • 車の電子化:自動ブレーキなどの電子制御の装置が増え、整備のための機器や知識への投資が必要になっている
  • 車の台数の変化:地域によっては車の台数が減り、仕事の量が減っている
  • 買手の拡大意欲:販売店や大きな整備の会社が、拠点や整備士を増やすためにM&Aを活用している

買手にとっては、一から工場を建てて認証を受け、整備士を集めるよりも、すでに認証を持ち、お客様もいる工場を引き継ぐほうが、早く事業を広げることができます。

認証工場と指定工場

整備工場が守る車
 

整備工場の「認証」や「指定」とは、どのようなものですか?

 
 

車の分解整備などを仕事として行うには、国(地方運輸局)から認証を受ける必要があります。さらに、工場で車検の検査まで行えるようにするには、指定を受ける必要があります。

 
 

工場の種類によって、できる仕事が違うんですね!

 
工場の種類主な内容
認証工場国の認証を受けて、車の分解整備などを行える工場
指定工場認証に加えて指定を受け、工場で車検の検査まで行える工場(いわゆる民間車検場)

認証や指定を受けるには、工場の広さや設備、整備士の人数などの基準を満たす必要があります。また、2020年からは、自動ブレーキなどの電子制御の装置の整備も、認証の対象に加わっています。[注1]

指定工場の価値

指定工場は、工場の中で車検の検査まで行えるため、お客様が車を運輸支局に持ち込む必要がなく、車検の仕事を効率よく受けることができます。指定を受けるには、厳しい基準を満たし、自動車検査員などを置く必要があるため、指定を持っていること自体が、工場の大きな価値になります。

M&Aでの認証・指定の扱い

 

M&Aをすると、認証や指定はどうなるのですか?

 
 

株式譲渡の場合は、認証や指定を受けている会社そのものが変わらないため、原則としてそのまま続きます。事業譲渡の場合は、引き継ぐ側で改めて手続きが必要になることがあるため、事前の確認が欠かせません。

 
 

M&Aの方法によって、手続きが変わるんですね!

 
M&Aの方法認証・指定の扱い
株式譲渡会社が変わらないため、原則としてそのまま続く(役員などの変更の届出は必要)
事業譲渡引き継ぐ側で、改めて認証や指定の手続きが必要になることがある
個人経営の工場個人で受けている認証は、引き継ぐ側で改めて手続きが必要になるのが一般的

事業譲渡や個人経営の工場の引き継ぎでは、手続きの内容によっては、整備や車検の仕事ができない期間が生じるおそれがあります。手続きの詳しい内容や期間について、工場がある地域の運輸支局に、早めに相談しておきましょう。

整備士の確保に注意

 

株式譲渡なら、認証のことは心配しなくていいのですか?

 
 

認証は続きますが、決められた人数の整備士や整備主任者を置き続ける必要があります。経営者自身が整備主任者や自動車検査員を兼ねている場合は、売却後に後任を確保できるかが大きなポイントになります。

 
 

人がいなければ、工場を動かせないんですね!

 

認証工場では、決められた人数の整備士と、整備を管理する整備主任者を置く必要があります。指定工場では、さらに車検の検査を行う自動車検査員を置く必要があります。

小さな整備工場では、経営者自身が整備主任者や自動車検査員を兼ねていることがよくあります。売却後に経営者がすぐに退くと、基準を満たせなくなるおそれがあるため、次のような対応を検討しておきましょう。

  • 経営者が一定期間、整備主任者や自動車検査員として工場に残る
  • 買手側から、資格を持つ人材を配置してもらう
  • 社内の整備士に、資格を取ってもらう

また、売却をきっかけに整備士が辞めてしまうと、工場の運営が難しくなります。整備士が安心して働き続けられるよう、売却後の待遇について買手と話し合っておくことが大切です。

買手が評価するポイント

 

整備工場のM&Aでは、買手はどこを評価するのですか?

 
 

認証や指定の有無、整備士の人数と資格、車検や点検のお客様の数、工場の立地と広さ、設備の状態などが主なポイントです。

 
 

人と設備とお客様が、工場の価値を支えているんですね!

 
評価のポイント内容
認証・指定認証工場か指定工場か、電子制御の装置の整備に対応しているか
整備士人数、資格、年齢構成、定着率
お客様車検や点検の台数、リピートしてくれるお客様の数、法人のお客様
工場・土地立地、広さ、所有か賃貸か、建物の状態
設備検査の機器、リフト、診断の機器の種類と状態
収益車検・整備・板金・販売などの売上の内訳、利益の安定性

車検のお客様は大切な財産

車検は2年ごと(車によっては1年ごと)に必ず必要になるため、車検のお客様が多い工場は、安定した売上が見込めます。お客様の数や、次の車検の時期、どのくらいのお客様が毎回戻ってきてくれるかを整理しておくと、工場の価値を伝えやすくなります。

工場の土地と環境の確認

 

整備工場ならではの、注意したいポイントはありますか?

 
 

工場の土地や建物の扱いと、廃油などによる土壌の汚染がないかの確認が大切です。

 
 

長く使ってきた工場だからこそ、確認が必要なんですね!

 

土地と建物

工場の土地や建物を、経営者個人が持っていることもよくあります。この場合は、土地や建物を会社に売るのか、買手に売るのか、引き続き貸すのかを決めておく必要があります。工場の広さは認証の基準にも関わるため、土地の扱いは特に大切です。

土壌の汚染

整備工場では、エンジンオイルや燃料、洗浄剤などを長年扱ってきたため、土壌が汚れていないかが確認されることがあります。問題が見つかると、浄化の費用が価格に影響することがあるため、心当たりがある場合は、早めに専門家に相談しておきましょう。

自動車整備工場の主な買手

 

整備工場を買うのは、どのような会社なのですか?

 
 

車の販売店や、整備の拠点を増やしたい整備会社のほか、車の買い取りやリースを行う会社、ガソリンスタンドを営む会社など、さまざまな買手がいます。

 
 

車に関わるいろいろな会社が、買手になるんですね!

 
買手の種類主な目的
車の販売店販売した車の整備や車検を、自社で受けられるようにしたい
整備の会社拠点や整備士を増やし、受けられる仕事を広げたい
車の買い取り・リースの会社買い取った車やリースの車の整備を、自社で行いたい
ガソリンスタンドの会社給油に来るお客様に、整備や車検も提供したい

買手によって、売却後の工場の使い方や、整備士の働き方は変わります。価格だけでなく、お客様や整備士を大切にしてくれる相手かどうかを見極めましょう。

売却前に準備しておきたい書類

書類の種類主な内容
財務の書類直近3期分の決算書、売上の内訳、借入金の一覧
認証・指定の書類認証書、指定書、変更の届出の控え
人の書類整備士の一覧、資格の種類、雇用契約書
お客様の資料車検や点検の台数の推移、お客様の数
工場の書類土地・建物の登記簿、賃貸借契約書、図面
設備の書類機器の一覧、リース契約書、点検の記録

自動車整備工場のM&Aでよくある質問

 

整備工場のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「整備士が数人の小さな工場でも売れるのか」「板金や車の販売もしているが一緒に売れるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも、まさに気になっていたことです!

 

整備士が数人の小さな工場でも売れますか?

はい。規模が小さくても、認証を持ち、地域にお客様がいる工場は、拠点を増やしたい会社にとって魅力的な引き継ぎ先になることがあります。特に指定工場の場合は、指定を持っていること自体が評価されやすくなります。

板金や車の販売も一緒に引き継いでもらえますか?

はい。整備だけでなく、板金や塗装、車の販売、保険の代理店などの事業も、一緒に引き継いでもらうことができます。ただし、保険の代理店などは、別の登録や契約が必要なこともあるため、それぞれの手続きを確認しておきましょう。

自動車整備工場のM&Aは、認証と整備士の確保がカギ

自動車整備工場のM&Aでは、認証や指定を引き継げるかと、整備士や整備主任者を確保し続けられるかが大きなポイントです。株式譲渡の場合は認証や指定がそのまま続きますが、事業譲渡の場合は、仕事ができない期間が生じないよう、事前に手続きを確認しておく必要があります。

工場の土地や環境、お客様の引き継ぎも含めて、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。

「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「長年続けてきた整備工場を、次の世代に引き継ぎたい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。

[注1] 国土交通省:道路運送車両法