アーンアウトとは?M&Aで売却代金を後から受け取る仕組みと、売手が気をつけたいポイント

アーンアウトとは?M&Aで売却代金を後から受け取る仕組みと、売手が気をつけたいポイント

M&Aの交渉を進めていると、売手と買手の間で、会社の価格についての考えが合わないことがあります。

売手は「これから会社はもっと成長する」と考えて高い価格を望み、買手は「本当に成長するかは分からない」と考えて慎重な価格を提示する、というのはよくあることです。

このような場合に、価格の差を埋める方法の一つとして使われるのが「アーンアウト」です。アーンアウトは、売却代金の一部を、売却後の会社の業績に応じて後から支払う仕組みです。

売手にとっては、受け取れる金額が増える可能性がある一方で、条件の決め方によっては、思ったように代金を受け取れないこともあります。

ここでは、アーンアウトの仕組みと、使われる理由、売手のメリット・デメリット、条件を決めるときの注意点、ほかの代金の受け取り方との違いについて解説します。

アーンアウトとは?

アーンアウトの条件を確認する経営者
 

アーンアウトとは、どのような仕組みなのですか?

 
 

M&Aの売却代金を、契約のときに支払う部分と、売却後の業績の目標を達成したときに追加で支払う部分に分ける仕組みです。

 
 

売ったあとの会社の成績で、受け取れる金額が変わるんですね!

 

たとえば、次のような形で決めることがあります。

支払いの時期金額の例条件
クロージングのとき3億円なし(必ず支払われる)
売却から1年後最大5,000万円1年目の営業利益が目標を上回った場合
売却から2年後最大5,000万円2年目の営業利益が目標を上回った場合

この例では、売手はクロージングのときに3億円を受け取り、目標を達成すれば、さらに最大で1億円を受け取ることができます。

アーンアウトで使われる目標の例

アーンアウトの目標には、主に次のような数字が使われます。

  • 売上高
  • 営業利益
  • 利払い前・税引き前・償却前の利益(EBITDA)
  • 新しい契約の件数や、特定の取引先との取引の継続

目標を達成するかどうかを判断する期間は、1年から3年ほどに設定されることが多くあります。

アーンアウトが使われる理由

M&Aの成立を喜ぶ関係者
 

なぜ、アーンアウトという仕組みが使われるのですか?

 
 

売手と買手の間で、会社の将来の見通しについての考えが合わないときに、価格の差を埋めるためです。将来の成長が実現したら、その分を後から支払うという形にすることで、双方が納得しやすくなります。

 
 

お互いの考えの違いを、うまく調整する方法なんですね!

 

アーンアウトが使われやすいのは、たとえば次のような場合です。

  • 会社が急成長していて、将来の業績の見通しに幅がある
  • 新しいサービスや事業が立ち上がったばかりで、実績がまだ少ない
  • 経営者の力に頼る部分が大きく、売却後も業績が続くかを買手が心配している
  • 特定の大きな取引先との取引が、売却後も続くかが分からない

売手にとってのメリット

 

売手にとって、アーンアウトにはどのようなメリットがありますか?

 
 

交渉がまとまりやすくなることと、会社が成長すれば、一括で受け取るよりも多くの金額を受け取れる可能性があることが主なメリットです。

 
 

会社の成長に自信があれば、魅力的な仕組みですね!

 

交渉がまとまりやすくなる

価格についての考えが大きく違うと、交渉がまとまらずにM&Aが破談になることもあります。アーンアウトを使うことで、価格の差を埋めて、成約につなげやすくなります。

会社の成長を価格に反映できる

将来の成長に自信がある場合、その成長を価格に反映させることができます。目標を達成すれば、当初の買手の提示額よりも多くの金額を受け取れる可能性があります。

売手にとってのデメリット・リスク

 

反対に、売手にとってのリスクはありますか?

 
 

目標を達成できなければ、後から受け取るはずだった代金を受け取れないことです。また、売却後の経営は買手が行うため、売手の力だけでは目標を達成できないこともあります。

 
 

受け取れるかどうかが、自分だけでは決められないんですね!

 

目標を達成できないと受け取れない

アーンアウトで後から支払われる代金は、目標を達成した場合にだけ受け取れるものです。景気の悪化や取引先の事情など、売手の努力では防げない理由で目標を達成できないこともあります。

経営の判断は買手が行う

売却後は、買手が会社の経営方針を決めます。買手の判断で、営業の方針や費用の使い方が変わり、その結果として目標を達成しにくくなることもあります。

争いになることがある

目標を達成したかどうかの判断や、利益の計算の方法をめぐって、売手と買手の間で意見が分かれ、争いになることがあります。

売却後も会社に関わり続ける必要がある

アーンアウトの期間中は、売手が役員や顧問として会社に残り、目標の達成に協力することを求められるのが一般的です。売却後すぐに会社を離れたい場合には、向いていないこともあります。

条件を決めるときの注意点

 

アーンアウトの条件を決めるときは、何に気をつければいいですか?

 
 

目標の数字の定義をはっきりさせること、計算の方法を具体的に決めること、売手が業績を確認できる仕組みを入れておくことが大切です。

 
 

あいまいなままにしないことが、争いを防ぐポイントなんですね!

 
決めておきたいこと内容
目標の数字売上高なのか営業利益なのか、どの数字を使うのかをはっきりさせる
計算の方法会計の方針を変えた場合の扱い、親会社への支払いなどの費用の扱い
目標の水準達成できる見込みのある、現実的な水準にする
支払いの方法全額か0かではなく、達成の度合いに応じて段階的に支払うか
支払いの上限後から支払われる金額の上限
業績の確認売手が決算や帳簿を確認できる権利
経営の約束期間中、事業を続けることや、極端な方針の変更をしないことの約束
争いの解決意見が分かれたときに、誰がどのように判断するか

全額か0かにしない

目標を少しでも下回ると、まったく受け取れないという決め方にすると、売手のリスクが大きくなります。達成の度合いに応じて、段階的に受け取れるようにしておくと、リスクを抑えることができます。

税金の扱いを確認する

アーンアウトで後から受け取る代金は、受け取る時期や、どのような所得として扱われるかによって、税金の計算が変わることがあります。契約を結ぶ前に、税理士に確認しておきましょう。

アーンアウトを使うときの流れ

 

アーンアウトを使う場合、実際にはどのように進むのですか?

 
 

交渉の中でアーンアウトの条件を決め、最終契約に書き込みます。売却後は、決められた期間ごとに業績を確認し、目標を達成していれば追加の代金が支払われます。

 
 

売却したあとも、しばらく手続きが続くんですね!

 
  1. 条件の交渉:目標の数字、期間、支払いの金額などを買手と話し合う
  2. 最終契約への記載:決めた条件を、株式譲渡契約書などに具体的に書き込む
  3. クロージング:決められた金額を受け取り、株式などを引き渡す
  4. 業績の確認:決められた期間が終わったら、決算の数字をもとに目標の達成を確認する
  5. 追加の支払い:目標を達成していれば、決められた金額を受け取る

業績を確認するときのポイント

業績の確認は、売却後の会社の決算をもとに行います。売手は、計算の根拠となる資料を見せてもらい、内容に納得できるかを確認することが大切です。疑問がある場合は、契約で決めた方法に沿って、買手と話し合いましょう。

ほかの代金の受け取り方との違い

アーンアウトのほかにも、売却代金の受け取り方にはいくつかの方法があります。

受け取り方内容売手にとってのポイント
一括払いクロージングのときに全額を受け取る最も確実だが、買手が慎重な価格を提示しやすい
分割払い決まった金額を、決まった時期に分けて受け取る金額は決まっているが、買手の支払い能力に注意が必要
エスクロー代金の一部を第三者に預け、一定期間後に受け取る表明保証の違反などがあった場合に備える仕組み
アーンアウト業績の目標を達成したときに追加で受け取る多く受け取れる可能性がある一方、受け取れないこともある

どの方法を選ぶかは、会社の状況や、売手が受け取る金額の確実さをどれだけ重視するかによって変わります。

アーンアウトでよくある質問

アーンアウトは、中小企業のM&Aでも使われますか?

中小企業のM&Aでは、一括払いで代金を受け取ることが多いですが、成長している会社や、経営者の力に頼る部分が大きい会社などでは、アーンアウトが使われることもあります。

アーンアウトを提案されたら、受け入れるべきですか?

必ず受け入れる必要はありません。一括で受け取れる金額と、アーンアウトを使った場合に受け取れる可能性のある金額を比べて、どちらが自分にとって納得できるかを考えることが大切です。条件の内容について、仲介会社や弁護士に相談しましょう。

目標を達成できなかった場合は、どうなりますか?

契約で決めた条件に従って、追加の代金が支払われない、または減額されることになります。そのため、目標を達成できなかった場合にも納得できるよう、クロージングのときに受け取る金額が十分かどうかを、契約の前によく考えておくことが大切です。

アーンアウトの期間中に会社を辞めることはできますか?

契約で、期間中は役員や顧問として会社に残ることが決められている場合は、途中で辞めると追加の代金を受け取れなくなることがあります。体調や家庭の事情などで辞めざるを得ない場合の扱いも、契約の段階で決めておくと安心です。

アーンアウトは、条件をはっきり決めて使おう

アーンアウトは、売却代金の一部を、売却後の業績に応じて後から支払う仕組みです。価格の差を埋めて交渉をまとめやすくする一方で、目標を達成できなければ代金を受け取れないリスクもあります。

目標の数字や計算の方法、業績を確認する権利などをはっきり決めておくことが、トラブルを防ぎ、納得のいく売却につなげるポイントです。

「M&A一括見積の窓口」では、会社の売却や事業承継を検討している経営者様向けに、M&A仲介会社の一括見積もりサービスを提供しています。

「売却代金の受け取り方について、専門家に相談したい」とお考えの方は、ぜひM&A一括見積の窓口にご相談ください。