不動産会社のM&Aとは?宅建業の免許の扱いや、買手が評価するポイントを解説
地域に根ざした不動産会社の中には、経営者の高齢化や後継者不足に悩む会社が少なくありません。長年の取引で築いたオーナーやお客様との信頼関係があっても、後を継ぐ人がいないために、廃業を考える会社もあります。
こうした中で、管理物件やお客様、従業員を守りながら会社を引き継ぐ方法として、不動産会社のM&Aが増えています。
ただし、不動産会社のM&Aでは、宅地建物取引業(宅建業)の免許の扱いや、宅地建物取引士(宅建士)の確保、管理物件のオーナーとの契約など、ほかの業種にはない確認ポイントがあります。
ここでは、不動産会社でM&Aが増えている背景と、宅建業の免許の扱い、事業の種類ごとの評価のポイント、売却で注意したいことについて解説します。
不動産会社でM&Aが増えている背景

不動産会社では、なぜM&Aが増えているのですか?
経営者の高齢化と後継者不足が大きな理由です。また、買手にとっては、地域での実績や管理物件、宅建士などの人材をまとめて手に入れられることが魅力になっています。
地域で積み重ねてきたものが、会社の価値になるんですね!
不動産会社でM&Aが増えている主な背景には、次のようなものがあります。
- 後継者不足:家族経営の会社で、子どもが会社を継がないケースが増えている
- 人材の確保:宅建士や経験のある営業担当者を採用するのが難しい
- 仕事の仕組みの変化:オンラインでの集客や電子契約などへの対応が求められている
- 管理物件の価値:安定した管理料が入る管理物件は、買手にとって魅力が大きい
- 地域への進出:買手が新しい地域で事業を始めるための手段になる
宅建業の免許とM&Aの関係

M&Aをすると、宅建業の免許はどうなるのですか?
株式譲渡の場合は、免許を持っている会社そのものが変わらないため、免許は原則としてそのまま続きます。事業譲渡の場合は、免許を引き継ぐことはできず、引き継ぐ側が自分で免許を持っている必要があります。
M&Aの方法によって、免許の扱いが大きく違うんですね!
不動産の売買や仲介を仕事として行うには、宅建業の免許が必要です。事務所が1つの都道府県だけにある場合は都道府県知事、複数の都道府県にある場合は国土交通大臣から免許を受けます。[注1]
| M&Aの方法 | 免許の扱い |
|---|---|
| 株式譲渡 | 会社が変わらないため、原則としてそのまま続く(役員などの変更は届出が必要) |
| 事業譲渡 | 免許は引き継げないため、引き継ぐ側が免許を持っている、または新たに受ける必要がある |
| 個人経営の会社 | 個人の免許は引き継げないため、引き継ぐ側が免許を受ける必要がある |
免許の番号と信用
宅建業の免許には、更新の回数を表す番号がついています。更新の回数が多いほど、長く営業してきた証として、お客様からの信用につながることがあります。株式譲渡であれば、会社の免許がそのまま続くため、この番号も引き継がれます。
株式譲渡でも届出は必要
株式譲渡で免許が続く場合でも、役員や事務所の代表者、専任の宅建士が変わったときは、決められた期間内に変更の届出が必要です。届出を忘れないよう、クロージングのあとの手続きを一覧にしておきましょう。
宅建士の確保に注意
株式譲渡なら、免許のことは心配しなくていいのですか?
免許は続きますが、事務所ごとに決められた人数の専任の宅建士を置くなどの要件を満たし続ける必要があります。経営者が宅建士を兼ねている場合は、売却後に後任を確保できるかが大きなポイントになります。
人がいなければ、営業を続けられないんですね!
宅建業を営む事務所には、業務に従事する人5人に1人以上の割合で、専任の宅建士を置く必要があります。[注1]
小さな不動産会社では、経営者自身が専任の宅建士になっていることがよくあります。売却後に経営者がすぐに退くと、専任の宅建士がいなくなってしまうおそれがあるため、次のような対応を検討しておきましょう。
- 経営者が一定期間、専任の宅建士として会社に残る
- 買手側から、宅建士を配置してもらう
- 社内の宅建士の資格を持つ社員に、引き継いでもらう
事業の種類によって評価が変わる
同じ不動産会社でも、評価のされ方は違うのですか?
はい。売買や賃貸の仲介、賃貸物件の管理、土地を仕入れて建物を建てる開発など、事業の種類によって評価のポイントが異なります。
どの仕事で売上を上げているかで、見られ方が変わるんですね!
| 事業の種類 | 主な評価のポイント |
|---|---|
| 売買・賃貸の仲介 | 取引の件数、営業担当者の人数と経験、集客の方法 |
| 賃貸物件の管理 | 管理している戸数、管理料の収入、オーナーとの契約の期間 |
| 開発・分譲 | 持っている土地や建物、進行中の案件、借入金 |
管理物件は評価されやすい
賃貸物件の管理は、オーナーから毎月管理料を受け取る仕組みのため、売上が安定しやすく、買手から高く評価されやすい傾向があります。管理している戸数や管理料の推移、オーナーとの契約の内容を整理しておきましょう。
なお、一定の規模以上の賃貸住宅の管理を行う会社は、賃貸住宅管理業の登録が必要です。登録の状況も確認されるポイントです。
買手が評価するポイント
| 評価のポイント | 内容 |
|---|---|
| 免許・登録 | 宅建業の免許、更新の回数、賃貸住宅管理業の登録 |
| 人材 | 宅建士の人数、営業担当者の経験、定着率 |
| 管理物件 | 管理戸数、管理料の収入、オーナーとの関係 |
| 取引の実績 | 仲介の件数、地域での知名度 |
| 持っている不動産 | 土地や建物の価値、借入金とのバランス |
| 法令の順守 | 行政処分の履歴、重要事項説明などの手続きの適切さ |
不動産会社のM&Aで注意したいこと
持っている不動産の評価
会社が土地や建物を持っている場合は、その不動産を今の価値(時価)で評価し直して、会社の価値を考えることになります。帳簿の金額と時価が大きく違うこともあるため、不動産の評価の方法について、仲介会社とよく相談しましょう。
オーナーとの契約
管理物件のオーナーとの契約の中に、会社の株主や経営者が変わったときに契約を解除できるといった定めがないかを確認しておきましょう。事業譲渡の場合は、オーナー一人ひとりの同意を得て、契約を引き継ぐ必要があります。
預かっているお金の管理
不動産会社は、家賃や敷金など、オーナーやお客様のお金を預かっていることがあります。預かっているお金が、会社のお金と分けて正しく管理されているかは、買手が必ず確認するポイントです。
営業保証金・保証協会
宅建業を営むには、営業保証金を供託するか、保証協会に加入する必要があります。株式譲渡ではそのまま続きますが、事業譲渡で引き継ぐ側が新たに免許を受ける場合は、改めて手続きが必要になります。
不動産会社の主な買手
不動産会社を買うのは、どのような会社なのですか?
地域を広げたい同業の不動産会社のほか、住宅を建てる会社や、管理物件を増やしたい管理会社など、さまざまな買手がいます。
不動産に関わるいろいろな会社が、買手になるんですね!
| 買手の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 同業の不動産会社 | 新しい地域に進出し、取引や管理物件を増やしたい |
| 賃貸管理の会社 | 管理戸数を増やし、安定した収入を得たい |
| 住宅を建てる会社 | 土地の情報や、住宅を買うお客様を得たい |
| 異業種の会社 | 不動産の分野に新しく進出したい |
売却を成功させるためのポイント
数字で事業を説明できるようにする
仲介の件数や手数料の収入、管理戸数と管理料の推移など、事業の状態を数字で示せるようにしておきましょう。事業の種類ごとに売上と利益を分けて整理しておくと、買手が判断しやすくなります。
法令に沿った手続きを確認しておく
重要事項の説明や契約書の作成、帳簿の備え付けなど、宅建業法で決められた手続きが適切に行われているかは、デューデリジェンス(買収監査)で確認されます。過去の取引の書類を整理し、不備があれば改善しておきましょう。
不動産会社のM&Aでよくある質問
不動産会社のM&Aについて、ほかにも気になることがあります。
「社員が数人の会社でも売れるのか」「管理の部門だけを売ることはできるのか」といったご質問をよくいただきます。
どちらも、ぜひ知っておきたいです!
社員が数人の会社でも売れますか?
はい。規模が小さくても、地域での実績や管理物件、オーナーとの信頼関係などに価値を感じる買手はいます。特に、新しい地域に進出したい会社にとっては、地域に根ざした不動産会社は魅力的な引き継ぎ先になります。
管理の部門だけを売ることはできますか?
はい。賃貸管理の部門だけを、事業譲渡などの方法で売ることもできます。この場合は、管理物件のオーナー一人ひとりの同意を得て、管理の契約を引き継ぐことになります。
売却後、経営者はどうなりますか?
オーナーやお客様との関係を引き継ぐため、一定期間、役員や顧問として会社に残ることを求められることが多くあります。残る期間や役割は、契約の段階で買手と話し合っておきましょう。
会社が持っている不動産も一緒に売れますか?
はい。株式譲渡であれば、会社が持っている土地や建物も、会社と一緒に買手に引き継がれます。ただし、買手が不動産を必要としない場合は、売却の前に不動産を別に売ったり、経営者個人に移したりすることもあります。どちらが有利かは税金の負担なども関わるため、税理士や仲介会社に相談しましょう。
不動産会社のM&Aは、免許と人の確保がカギ
不動産会社のM&Aでは、宅建業の免許の扱いと、専任の宅建士を確保し続けられるかが大きなポイントです。株式譲渡の場合は免許がそのまま続きますが、事業譲渡の場合は、引き継ぐ側が免許を持っている必要があります。
管理物件のオーナーとの契約や、預かっているお金の管理なども含めて、早めに準備を進めることが、売却を成功させるポイントです。
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[注1] 国土交通省:宅地建物取引業法