会社の「磨き上げ」とは?売却前にやっておきたい準備と、評価が上がるポイント

会社の「磨き上げ」とは?売却前にやっておきたい準備と、評価が上がるポイント

M&Aや事業承継の準備について調べていると、「磨き上げ」という言葉を目にすることがあります。

磨き上げとは、会社を売却したり引き継いだりする前に、会社の価値を高め、買手や後継者が安心して引き継げる状態に整えることです。

同じ売上や利益の会社でも、管理の仕組みや財務の状態によって、買手からの評価は大きく変わります。磨き上げに取り組んでおくことで、売却価格が上がったり、買手が見つかりやすくなったりすることもあります。

ここでは、会社の磨き上げの目的と、財務・業務・人・契約の4つの分野で取り組みたいこと、進める期間の目安、注意点について解説します。

会社の磨き上げとは?

業務の仕組みを整える様子
 

「磨き上げ」とは、具体的に何をすることなのですか?

 
 

会社の強みをさらに伸ばし、弱みやリスクを減らして、買手から見て魅力的で安心できる会社にすることです。中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、事業承継の準備として「経営の改善(磨き上げ)」の大切さが示されています。

 
 

売る前に、会社をより良い状態にしておくということなんですね!

 

磨き上げは、特別な取り組みではありません。会社の数字を正しく整理する、経営者に頼りきっている業務を仕組みにする、契約や規程を整えるなど、ふだんの経営の延長で取り組めることがほとんどです。[注1]

磨き上げの目的

磨き上げには、主に次の3つの目的があります。

  1. 会社の価値を高める:利益の改善や強みの強化によって、売却価格を上げる
  2. 買手の不安を減らす:リスクを減らし、買手が安心して引き継げる状態にする
  3. 交渉をスムーズにする:資料を整え、デューデリジェンス(買収監査)にかかる時間を短くする

買手は、会社を買ったあとに思わぬ問題が見つかることを最も心配します。磨き上げによってその不安を減らすことが、売却の成功につながります。

財務の磨き上げ

準備が整い前向きな経営者
 

財務の面では、どのようなことに取り組めばいいですか?

 
 

会社の経費と経営者個人の支出を分けること、使っていない資産を整理すること、決算書を正確に作ることが基本です。会社の本当の利益が分かる状態にすることが大切です。

 
 

数字を正しく見せることが、評価につながるんですね!

 

会社と経営者個人のお金を分ける

中小企業では、経営者個人の車や交際費などが、会社の経費として計上されていることがあります。こうした支出が混ざっていると、会社の本当の利益が分かりにくくなり、買手からの評価が下がる原因になります。

経営者個人の支出は会社の経費から外し、会社の実態が数字で分かるようにしておきましょう。

使っていない資産を整理する

使っていない土地や設備、回収できない売掛金、売れ残った在庫などは、帳簿の上では資産になっていても、買手からは価値がないと見られます。早めに処分や整理をしておくことで、会社の財務の状態が分かりやすくなります。

決算書を正確に作る

決算書の数字が正確でないと、買手は会社の評価を判断できません。税理士とも相談しながら、会計のルールに沿った正確な決算書を作成しておきましょう。

業務の磨き上げ

 

業務の面では、どのようなことに取り組めばいいですか?

 
 

経営者に頼っている業務を社員に任せること、業務の流れを書き出して仕組みにすること、取引先を広げることが大切です。

 
 

経営者がいなくても会社が回る状態にしておくことが、ポイントなんですね!

 

経営者に頼っている業務を引き継ぐ

営業や技術、取引先との交渉などを経営者一人が担っている会社は、経営者が引退したあとに事業が続くのか、買手が不安に感じます。

少しずつ社員に業務を任せ、経営者がいなくても会社が回る状態をつくっておきましょう。

業務の流れを書き出す

受注から納品までの流れや、日々の作業の手順を書き出してマニュアルにしておくと、引き継ぎがスムーズになります。特定の社員しか知らない業務がないかも、確認しておきましょう。

取引先を広げる

売上の大部分を1〜2社の取引先に頼っていると、その取引先との関係が変わったときのリスクが大きいと見られます。新しい取引先を少しずつ増やし、売上の偏りを小さくしておくと、評価が高まりやすくなります。

人と組織の磨き上げ

 

従業員や組織について、整えておくことはありますか?

 
 

労務管理を正しく行うこと、キーマンが働き続けたいと思える環境をつくること、就業規則などの社内ルールを整えることが大切です。

 
 

人に関わるリスクも、買手はしっかり見ているんですね!

 

労務管理を正しく行う

未払いの残業代や、社会保険の加入漏れは、M&Aで問題になりやすいポイントです。勤怠の記録を正しく残し、残業代を適切に支払っているかを確認しておきましょう。

キーマンの定着を図る

会社を支える中心的な社員が辞めてしまうと、会社の価値そのものが下がってしまいます。役割や待遇を見直すなどして、キーマンが働き続けたいと思える環境をつくっておくことが大切です。

社内ルールを整える

就業規則や賃金規程、退職金の決まりなどが、口約束や慣習のままになっていないかを確認しましょう。書面で整えておくことで、買手は従業員の待遇を正しく把握できます。

契約・法務の磨き上げ

 

契約や法務の面では、何を確認しておけばいいですか?

 
 

主要な取引先との契約書をそろえること、株主の構成を整理すること、許認可の状況を確認することが基本です。

 
 

書類がそろっているだけで、買手の安心感が違いそうですね!

 

契約書をそろえる

長年の付き合いで、取引先と契約書を交わしていないケースもあります。主要な取引先とは、取引の条件を書面にしておきましょう。また、経営者が変わると契約を解除できるという条項がないかも確認しておきます。

株主の構成を整理する

株主が親族や元役員などに分散していたり、名義だけの株主(名義株)がいたりすると、売却のときに全員の同意を得るのが難しくなります。株主名簿を確認し、必要であれば株式を集約しておきましょう。

許認可を確認する

事業に必要な許認可が、きちんと取得・更新されているかを確認します。許認可の期限が切れていると、買手が事業を引き継げなくなるおそれがあります。

会社の強みを伸ばす磨き上げ

 

リスクを減らすだけでなく、会社の強みを伸ばすこともできますか?

 
 

はい。磨き上げには、弱みを減らす取り組みと、強みを伸ばす取り組みの両方があります。会社の強みを言葉や数字で示せるようにしておくと、買手からの評価が高まります。

 
 

会社の良いところを、きちんと伝えられるようにしておきたいです!

 

強みを書き出してみる

技術やノウハウ、長く続く取引先、地域での評判、社員の資格や経験など、会社の強みを書き出してみましょう。経営者にとっては当たり前でも、買手から見ると大きな価値になることがあります。

強みを数字で示す

「リピート率が高い」「納期を守る」といった強みは、実際の数字で示すと説得力が増します。取引先の継続年数や、リピート注文の割合、クレームの少なさなどを整理しておきましょう。

磨き上げの取り組みまとめ

分野主な取り組み
財務会社と個人のお金の区別、不要な資産の整理、正確な決算書
業務経営者に頼る業務の引き継ぎ、業務の仕組み化、取引先の拡大
人・組織労務管理の適正化、キーマンの定着、社内ルールの整備
契約・法務契約書の整備、株主構成の整理、許認可の確認

磨き上げを進める期間と注意点

 

磨き上げには、どのくらいの期間がかかりますか?

 
 

取り組む内容によって違いますが、数か月〜数年かかることもあります。売却を考え始めたら、できることから早めに始めておくのがおすすめです。

 
 

思い立ったときから、少しずつ始めてみたいです!

 

早めに始める

取引先を増やしたり、業務を社員に引き継いだりするのは、すぐにできることではありません。売却の時期から逆算して、1〜3年ほど前から取り組み始めると、余裕を持って進めることができます。

すべてを完璧にしようとしない

磨き上げは、すべてを完璧にしてから売却するためのものではありません。できることから少しずつ進め、残っている課題は、買手に正直に伝えたうえで交渉することが大切です。

本業をおろそかにしない

磨き上げに力を入れるあまり、本業の業績が落ちてしまっては意味がありません。業績を保ちながら、無理のない範囲で取り組みましょう。

専門家の力を借りる

何から手をつければよいか分からない場合は、仲介会社や税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。買手の視点で、評価に影響しやすい課題を教えてもらうことができます。

磨き上げでよくある質問

 

磨き上げについて、ほかにも気になることがあります。

 
 

「赤字でも磨き上げで評価は上がるのか」「磨き上げにお金はかかるのか」といったご質問をよくいただきます。

 
 

どちらも知っておきたいです!

 

赤字の会社でも、磨き上げで評価は上がりますか?

はい。赤字の会社でも、経費の見直しや不採算の取引の整理などによって、赤字の幅を小さくしたり、改善の見込みを示したりすることができます。改善の傾向が数字で見えるようになれば、買手の評価は高まりやすくなります。

磨き上げに、お金はかかりますか?

経費の整理や業務の書き出しなど、費用をかけずにできることも多くあります。一方で、専門家に労務や税務の確認を依頼したり、システムを導入したりする場合は費用がかかります。売却価格への影響も考えながら、優先順位をつけて取り組みましょう。

磨き上げは、売却しない場合にも役に立ちますか?

はい。会社のお金の流れを整理したり、業務を仕組みにしたりすることは、売却するかどうかにかかわらず、会社の経営を強くします。親族や社員に会社を引き継ぐ場合にも、磨き上げは大いに役立ちます。

磨き上げで、会社の価値を高めて引き継ごう

会社の磨き上げとは、売却や事業承継の前に、会社の価値を高め、買手が安心して引き継げる状態に整えることです。財務・業務・人と組織・契約と法務の4つの分野で取り組むことで、売却価格が上がったり、買手が見つかりやすくなったりします。

磨き上げには時間がかかるため、売却を考え始めたら、できることから早めに取り組むことが大切です。

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[注1] 中小企業庁:事業承継ガイドライン